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44話 氷迅の魔導士


 ブレンダ、ルルナ、セバスチャンは馬車で待機するように話して、ギルドに入る――ゼネロットがいた。


「おう、兄ちゃんじゃないか! って……マスター、何処行ってたんだよ!? 災害級の処理がまだ残っているのにみんな大変なんだぞ!」


 後処理サボるとそうだろうな……。


「別にいつものことだし、何処に行ってたっていいじゃない! それとみんなよりは数百倍頑張っているのだからワタシの勝手でしょ? 今日もゆっくり休ませてもらうわ」


「はぁ~わかったよ……」


 せめて連絡くらいはしてもいいと思うのだが……。

 少しギルドのみんなに酷な気がする……。


 周りが俺を見て――。


「あれが災害級を倒した氷迅の魔導士よ……」

「あの若さで……すごいな……」

「噂の氷迅の魔導士だ! 災害級と戦っているところ見たかったなー」


 氷迅の魔導士? 俺が?


「なんかいろいろと噂されているな……氷迅の魔導士って……」


「ああ、兄ちゃんは災害級を氷漬けにしたり、俺達が来る前に倒したからその名で呼ばれることになったぜ」

 

「だから氷迅か……」


 まあ、変な呼び名でもないからいいのだが……面倒事はもう不可避だな……。


「氷迅の魔導士、いいじゃない! 後でザインちゃんに連絡しないと!」


 すでに面倒事が発生しました……。


『アハハ! 氷迅の魔導士とかいいね! その内称号に追加されるよ!』


 追加されるのかよ……あとで確認するか。


「ところで兄ちゃんは今日はどうした?」


「昨日の素材の換金を取りに来たのだが」


「おお、そうか! 俺はまだ後処理があるからこれでな!」


 そう言ってゼネロットはギルドを出た。

 換金所に向かい、大金貨5枚、金貨3枚、大銀貨1枚とデスキングクラブのハサミと脚、オレンジ色に輝いている魔石を受け取った。

 予想以上に大金が入ってきたな……リバークラブも100匹以上倒したからそうなるか……。

 

 換金も終わったことだし馬車で市場までオレンジサーモンを買いに行く――。



 市場の近くは馬車は入れないからセバスチャンは馬車で待機する。

 市場にはオレンジサーモン、リバークラブなどが多く並んでいる。カルムとは並んでいる食材が違い、新鮮味がある。

 オレンジサーモンが並んでいる店を尋ねると――膨よかな男店主がリリノアさんを見て――。


「ギルドマスターではないですか。ここに来るとは珍しいですね、今日はお買い求めですか?」


「いや、ワタシではなく、この子が買いに来たわけ、ワタシは嫌ってほど食べたから買うわけないでしょ」


 ハッキリと言いますね……。


「そうですか……そこの若い方が買うのですか?」


「そうよ、フ・フ・フ、驚かないでよね! この子はあの災害級を倒した氷迅の魔導士よ! 光栄に思いなさい!」


 なぜいつもそこで威張るのだ!? 

 それにその呼び名はまだ広まっていないから……。


「な……なんですと!? あの氷迅の魔導士ですか!? これは失礼しました!」


 広まるのはやっ!? 

 まだ1日も経っていないのだぞ!? 


「もう噂されているのか……」


「何を言っているのですか! アナタは商都を救ってくれたのですよ! 僕の店にいらっしゃるとはとても光栄です!」


 嬉しい? 有名な人が来れば顧客度がアップするってことか……。

 俺を利用するならその分それなりの待遇をもらうとするか。


「店主聞きたいことがある」


「はい! なんでもお答えします!」


「オレンジサーモンを生で食べたことはないか?」


 これは非常に重要なことだ。この世界の魚には寄生虫がいる可能性がある。生で食べる場合確認は必要だ。

 もしいるのであれば1週間くらい冷凍保存してアイテムボックスに入れてこまめに管理して食べるしかない。


「生ですか……僕は生では食べたことはないですが……食べている人はいます。その場合は冷凍したのを解凍して食べますけど……」


 ってことは寄生虫はいるみたいだな。冷凍すれば寄生虫が死滅する解釈でいいか。これなら問題なく食べられそうだ。


「店主、新鮮なやつを全部くれ!」


「わ、わかりました! 新鮮な雄がありますのでそれでよろしいでしょうか?」


「雄だけ? 雌はないのか?」


「雌ですか……今の時期ですと産卵の為に卵のほうに養分がそっちにいってしまい、身が淡白な味になってしまいます……あまりお勧めしませんが……」


 …………それ1番大事なことじゃないか!? イクラを作るのに大事なこと!? この場合だと魚卵は使わないってことか……もったいない!


「店主……新鮮な雌も全部くれ!」


「よろしいのでしょうか!? ですが――」


「問題ない! その卵が重要なんだ!」


「わ、わかりました! 今すぐ用意します!」


「またお兄ちゃんが貴族の買い方をしている!」


「……すごい……豪快ですね……」


「レイって……意外に食べ物になると欲張りね……」


『アハハ! この買いっぷり、いつ見ても飽きないね!』


 誰が言おうとこの暴走は誰にも止められない。俺はイクラが大好きだからこのチャンスを逃さない!


「雄と雌50匹ずつで合わせて……金貨3枚、大銀貨1枚、銀貨5枚ですがよろしいでしょうか?」


「ああ、問題ない」


 店主にお金を渡したら大喜びだった。


「ありがとうございます! いや~雌の方は安くしても全然売れなくて困っていました。ところで卵が重要とか言いましたけど……まさかお食べになるのですか?」


 あまり良い顔はしないな、やっぱり魚卵は食べないのか。


「ああ、その通りだ。加工すれば美味しくできるぞ」


「それは本当ですか……僕には信じがたいのですが……」


 まだ疑っているようだな。まあ、魚卵は好き嫌いがハッキリ分れるから別に信じなくていいけど。


「はぁ、何言ってのよ! この子はね! 料理系のスキルを持っているのだから美味しくできるに決まっているじゃない!」


 リリノアさん……余計なことを言わないでください……面倒ですから……。


「し、失礼しました! 大変申し訳ないのですが……僕にその作り方を教えてくれませんか? それが本当なら商品にしたいのですが……」


 図々しいな……さすがに買い物をしている途中だから教えるわけにはいかない。


「いいわよ、別にレイなら余裕よ」


 何勝手なこと言ってるんだよ! 

 ブレンダとルルナがいるのだぞ! 


「それは助かります! よろしくお願いします!」


 いや、まだ何も言ってないが!? 


「ちょっと待て、俺は買い物中だぞ! それにブレンダとルルナを巻き込むわけにはいかない!」


「大丈夫だよお兄ちゃん! 平気だよ! 何を作るかわからないけど、わたしも食べたい!」


「わたしも平気です……何を作るか知りたいです……」


 えぇ……なぜそうなる……2人とも目を輝かせてこっちを見ないでくれ……しょうがない2人のためだと思って作るか……。


「わかったよ、けど条件がある」


「ありがとうございます! その条件とは?」


「塩と甘味がある果実酒を用意してくれ。それと作った半分は俺が貰う。」


「わかりました! では厨房へ案内します!」


 店主はスキップしながら奥にある厨房へ案内してくれた……。

 さっきまで疑っていたのに金になると思ったら切り替え早いな……。



 ――店主は塩、果実酒、大量の筋子を用意してくれた。オレンジサーモンの名の通り卵もオレンジ色に輝いて綺麗だ。


 筋子は10㎏以上はあるな……まあ半分貰えるなら多少の手間は問題ないか。

 本当は醬油、味醂、純米酒、出汁があれはそっちで作りたいけど。今回はどこにでもある塩と果実酒を使って()()()()を作る。

 これなら前世と同じ物が作れるから助かる。


 大量の筋子を大きなボウルに入れて、多めに火にかけた大体70℃以上のお湯を入れる。手でさわって熱くなかったら筋子の膜を剝がしながらほぐす。

 70℃以上のお湯にかければ寄生虫も死滅して問題なく食べられる。

 膜を取り除いて水気をきる。

 火にかけてアルコールを飛ばした果実酒と塩を適量に合わせて終わり。あとは半日以上漬けて置けば味も馴染むだろう。

 自分たち用として衛生面を考え、煮沸消毒した瓶に小分けをして、氷の入った木箱に入れ、アイテムボックスにしまった。

 無限収納だと時間が経過しないので、味を馴染ませる為アイテムボックスで1~2日は入れておく。


「まさかこんな作り方があるなんて驚きました……」


「半日くらいになったら美味しく食べられるぞ。相性の良いのはパンとチーズかな。あとは好みの食材と合わせて食べてくれ」


「ありがとうございます! まさか食べ物の組み合わせまで知っているとは感服しました! 早く食べたいです!」


 よく言うよ……さっきまで魚卵に抵抗あったのに……。


「わたしも早く食べたい!」


「わたしも……」


「じゃあ夕食で食べよう」


「うん、楽しみ!」


「見た目は珍味っぽいけど酒と合いそうね! ワタシにもちょうだい!」


 魚に飽きてるリリノアさんが喰いついてきた。まあ、大量にあるしいいか。

 店主の評価も気になるが昼食の時間になるから屋敷に戻る。

 評価は時間があれば明日出発する前に聞くのもありか。 


 称号を確認すると【氷迅の魔導士】と【災害を絶つ者】が追加されていた。 

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