443話 廃鉱
酔っている2人を見てヴェンゲルさんは呆れていた。
「お前ら、道中での酒禁止だ……。加工品含めてな……」
「量が多いのでしょうか? もっと改良しますね!」
ミツキさん、量の問題ではないと思います……。
もう酔ったのはしょうがない、到着するまで様子を見る。
長くつながった山脈を越えると地形が変わる――大きなクレーターが無数あり、大地にヒビが割れて崩れそうな箇所が多い。
地上で歩くの無理だろう……廃鉱の原因になりますね。
「相変わらずの酷さだ、ブルーワイバーンがいて本当に楽だ。見えてきた、あそこが鉱山だ」
ヴェンゲルの指示で地上――休憩所として使っていた広場に降りる。
「これはまた酷くなったな、入口が塞がってやがる」
目の前には入口らしき抗道が土砂で埋まっていた。
「魔法で退かしましょうか?」
「やめたほうがいい、下手に退かすと周りに影響があるかもしれん。まだ奥の方にあるから行くぞ」
ヴェンゲルさんはそう言うと、奥にある一本道を進む。
シエルに酔ったフランカとマリアーテさんのお守をお願いさせ残ってもらい、俺たちもついていく。
奥に進むと、周りは鋭利に尖った岩に覆われて道を外れると危険だ。
ここで魔物に遭遇したら災難だな……。
そう思いながら進むと入口が見えてきた――。
「ここは無傷で助かる、だが、中には魔物がうじゃうじゃいるな」
まあ、廃鉱になれば魔物も住み着きますね。反応は多いが、強い相手ではなさそうだ。
片づけてから採掘にはなるけど。
中に入ると――ランズベルの鉱山と同じく歩くと光る仕組みになっていた。
「「「わ~い、鉱山だ~」」」
小人たちはミツキさんが持ってきたヘルメットを被り、ピッケルを受け取りやる気満々です。
「ちょっと気が早いぜ、まだ採掘場には距離がある。その前に魔物が――噂をすれば来たか」
奥から来るのは剣と盾を持っているスケルトン6体だ。
「スケルトンかよ、こんな雑魚がよく住み着いたものだな」
「強い魔物がいると言いましたよね? どんな魔物ですか?」
「デススパイダーだ。周りに蜘蛛の糸をまき散らして作業の邪魔をして厄介だった」
うわぁ……それはまた厄介なことで……廃鉱になるわけだ。
じゃあ奥の方にデススパイダーがいるのは確定した。
まあ、炎魔法で糸を払えば問題はない。
「「「邪魔!」」」
小人たちは躊躇いもなく蹴りやピッケルで粉々に砕いて倒す。
さらに奥からスケルトンが十数体と向かってくる。
何体来ようが変わらない、俺は【武器創造】で鉄の剣を創造してみんなと一緒に戦いながら進む――。
――奥に進むのはいいのだが、スケルトン……さらにスケルトン……変わらずスケルトン…………スケルトンしか出てこないのだが? デススパイダーはどうした?
「おかしい……そろそろデススパイダーが出て来てもいい頃だが、いないのか?」
「こんなに多いとスケルトンが倒したということは?」
「それはない、デススパイダーのほうが有利だ。こんな雑魚にやられるわけない」
「では住処を変えたということは?」
「それもない、アイツらは縄張り意識が強く簡単に変えることはない」
「ではデススパイダーより強い魔物がいることは?」
「それは思ったが、【魔力感知】で強い魔物の反応がないぞ」
確かに反応はスケルトンくらいの弱い反応しかない。デススパイダー並みの強さの魔力は感じない。
ただ怪しいことに、奥の方にスケルトンと同じ量の魔力出しているがまったく別ものだ。
そこまで気にしていなかったが、距離が縮まるとわかる――嫌な予感がする。
【魔力制御】で抑えているような感じだ。
強い魔物だったとしてもまあ、みんなで倒せる範囲である。
心配しなくても大丈夫か。
「それよりレイ、剣さばきが良くなっているがどうした? まさか【剣聖】のスキルでも覚えたのか?」
そんなに振ってないのにわかったのか……。
さすがグランドマスターですね。
「はい、最近覚えました」
「冗談で言ったがホントかよ!? いったいどこまで成長するんだよ……」
あっ、冗談で言ったのか……勝手に覚えたとは言えないしな……ごまかすしかない。
「セイクリッドと稽古したら覚えましたよ……【剣聖】のスキル覚えていますので……自然に……」
「ああ、アイツとか、なら納得だ。俺には無理だけどな」
なんとかごまかせました。
セイクリッドの強さなら納得しますよね。
ルチルの【同族強化】でさらに強さがマシマシで魔剣たちと引きを取らないくらいにはなった。
無理やり結びつけたが、ごまかせたなら良しとします。
しかし、スケルトンがまだ出てくる。
奥に進むにはまださきになりそうだ。




