440話 マイペースな魔剣
俺たちが飛んでいる最中に――。
「お前たち、どこに行く!?」
アンバーも【飛行】を使って追ってきた。
慌てて行くの見て、気になったか。
「ごめ~ん、ちょっと忙しくて急いでいるの~」
「口調からして忙しく見えんぞ……。そのゆっくりな口調直せないのか……?」
「私の癖だから無理だよ~」
「マイペースだな……。まあいい、オレもついて行くぞ!」
「ご自由にどうぞ~」
アンバーも同行するようになった。
しかし、西の方角に進んでいるいったい何がある?
反応も何もな――。
その瞬間、微かに邪石の反応が出た……。
「主ちゃんも気づいた~?」
「ああ……まだ遠くにいるな……。エメロッテは気づいてたのか?」
「龍魔法でわかったの~」
そういえば毎朝「ドラゴンサーチ」で見張りが把握できないところを確認していると言ったな。
しかも100㎞は余裕で確認できると……。
龍魔法覚えている俺でもその距離は無理だ……。さすが魔力お化けだな……。
突然のことだからわかりませんよ……早く言ってください。
とにかく、見つけてくれたのはお手柄である。
さっと片づけて戻るとするか。
「なに2人で納得している!? オレにも説明しろ!」
アンバーはまだ気づいてないようだ。
「もう少しだからまってね~」
説明しないのか……。
しょうがない、俺が説明して反応がある場所に向かう――。
十数分が経ち、一面に広がる草原に着く、そこには大量のホーンラビットが跳ねて動き回っていた。
数でごまかしているが、ばれている――灰色で二回りほど大きいホーンラビットが背中に邪石をつけている。
「はぁ……バカにもほどがある……。この世に出してはいけない物を作る……。まるで禁具ではないか……」
アンバーは初めて見る邪石に深いため息をする。
言われてみれば禁具で間違いない。
なぜ、弱いホーンラビットに邪石をつける?
領地から多少遠いが、見つかってもおかしくはない場所だ。
実験でもしているのか? それとも気まぐれでつけたのか?
考えてもキリがない、あとにして倒すことに専念しよう。
地上に下りると――ホーンラビットの群れは俺たちに反応して睨みつけている。
問題の邪石をつけた奴は後ろを振り向いて逃げて行く。
「なっ、速すぎだ!? 普通ではあり得ないぞ!?」
エネミーマインド並みの速さだ。あっという間に豆粒くらいの距離になった。
簡単にはいかなそうだ。しかも、ほかのホーンラビットは俺たちに向かってくる。
どうやらボスを倒さないよう守っているみたいだ。
「あら~、もうこんな遠くまで~」
「のんきなこと言っている場合か!? ここで逃したら面倒だぞ!」
「そんなことないよ~。主ちゃん、ここの周辺をちょっとだけ変化させちゃうけどいい~?」
「そのちょっとが怖いが、やっていいぞ……」
「ありがとう~、じゃあ、はじめるよ~」
そう言うと、エメロッテの上半身に魔力が集まり、龍魔法を使う――。
「――――ドラゴンブレス」
口から魔力――龍の吐息を出し、周囲のホーンラビットを飲み込む。
吐き終わると、草原は地面をえぐられて荒れた大地になり、ホーンラビットは塵一つなく消え去る。
邪石付きの反応はなくあっさり終わった。
「軽くやったけど、無理だった~」
やはり手加減はできなかったか……。
スッキリした顔しているのは気のせいか?
「どこが軽くだ!? こんなの毎回連発すれば世界崩壊するぞ!?」
「う~ん、効率よくやったけど~ダメなの~?」
「効率ならお前が覚えている【龍圧】で逃げないようにしろ!」
「ああ~その手があったね~。アンバーちゃん頭いいね~」
「魔王をバカにするなよ! どうもコイツとの会話は調子狂う……。エフィナめ……オレの苦手な性格にするなよ……」
いつも一緒にいるが苦手なのか?
性格は魔剣自身が設定するから無理です。
【魔剣創造】は器を創りってあとはお任せだ。
エフィナはまったく関係ありません。
俺も、もう少し加減してほしいのが本音だが。
「なあ、【魔力変換】で【手加減】を覚えることはできないのか?」
「そう思って試したけど、覚えることができなかったよ~。多分だけど~スキルで覚えられないほど手加減は無理かもしれない~」
えぇ……【魔力変換】で覚えられないのかよ……。
「そうなのか……。無理とは言わないがいつか覚えてくれ……」
「わかった~、頑張って覚えるよ~。もうすぐでお茶の時間だから戻ろう~」
ブレませんね……まあ、変な性格ではないからいいけど。
エメロッテは空間魔法を使い、領地に戻る。




