43話 伯爵邸に泊まる
お茶を飲みながら話をしていたけど……サーリトさんとリリノアに質問攻めにあう……。
サーリトさんはスールさんのことばかりで――。
「危険なことはしていない?」
「身体は大丈夫?」
「変なことはしていない?」
「結婚はまだしないの?」
…………スールさんの保護者ですか……。
リリノアさんはザインさんのことばかり――。
「ザインちゃんと魔道具で連絡してるけど最近会わないから寂しい……」
「変な女はできていないよね?」
「ワタシがいないところで無理してない?」
「ワタシにできることはない?」
「心配事はない?」
…………ザインさんの彼女かよ!? もういっそのこと結婚してしまえ!
たまにだけどセーレさんのことも聞く。
「セーレはそろそろSランクに上がりそう?」
やっぱり親戚だからそこは気になるか――セーレさんはSランク有力候補だけど。
本人は試験を受けるタイミングを見計らっている感じだ。
そう伝えると――。
「まだなの? 相変わらず慎重ね」
いや、まだって言っても……Sランク試験は難しいのに……身も蓋もないことを言うな……。
話がつまらなくなったのか、ブレンダと精霊は庭に出てルルナと一緒に遊んでいる。
意外にルルナは人見知りな感じがしたけど、精霊と楽しく遊んでいるから精霊は大丈夫みたいだ。
時間が経ち、アイシスが来て夕食の準備ができたらしく食堂へ向かう――。
食堂のテーブルには豪華な料理が並んでいる――ビュッフェスタイルか。
アイシスが作ってくれたのは――。
オレンジサーモンのフライ、香草焼き、グラタン。ロックバードのチキンカツ、タンドリーチキン、鶏肉の野菜炒め。
リバークラブの蒸し焼き、カニクリームコロッケ、カニ玉、香辛料焼きなど色々――。
こんな短時間に作れるとか凄いですね……これだとホテルの料理人ですよ……。
「これほどとは……」
「この料理は初めてです……」
「……すごい」
「何この料理!? 美味しそう!」
4人ともいい反応ですね。
もちろん、食べると言うまでもなく全部美味しかった。
久々に魚と蟹を食べたが……少し涙が出てきた……ヤバいな……米が恋しい……。
サーリトさんはカニクリームコロッケが気に入ったみたいで少し多めに食べていた。
リリノアさんはチキンカツを絶賛してそれを集中的に食べていた……ちゃんとみんなの分残してください……。
全体的に見ると揚げ物系が好評だった。やっぱりこの世界だと揚げ料理はあまりないからかな?
「アイシスさん、とても美味しい料理をありがとう……私の屋敷で働いてもらいたいものだよ」
「申し訳ございません。私はレイ様の専属メイドなのでお断りします」
「ははは……残念だ」
「ですがお泊まりの最中は料理を作りますので要望があればなんでも作ります」
「それはありがとう、明日もお願いしてもいい?」
「はい、お任せください」
これはまたカニクリームコロッケが出てきそうだな。
「賢者の弟子! 明日もまた同じのお願い!」
これは揚げ物が続きそうだ……。
その後、大浴場に入りゆっくりとお湯に浸ろうと思ったが……サーリトさんが入ってくるのはわかる……何故かブレンダとルルナも入ってくる……。
そして……1番来てはいけないのが来てしまった……リリノアさん……何か巻いてください……。
「なぜ女性陣も入るのだ……」
「いいじゃん別に! みんなで入る方が楽しいのだから! もしかしてレイ、ワタシの美貌に見とれたかしら?」
恥もなく誘っているかのように腰を振っている……。
「冗談はザインさんだけにしてください……」
「もう……わかったわよ」
正直危ないところでした……はぁ……デスキングクラブ倒した後はゆっくり入りたい……。
ブレンダとルルナがこちらに来て何か言いたそうだ……。
「あ……あの……お願い……が……あり……ます……」
ルルナは顔を赤くして、必死で話そうとしている……どうしたんだ?
「何かな?」
「わ……わたし……の……髪を……洗…って……くれ……ませんか……」
髪を洗ってくれって……まさか、ブレンダを見ると――。
「お兄ちゃんが髪を洗ってくれるとキレイなるからね!」
やっぱり言ったのか……さすがに伯爵の令嬢は手が出せないな……。
「ルルナがお願いするなんて珍しい……レイ君、娘の願いをどうか聞いてやってほしい」
いいのかよ!? サーリトさんにお願いされてはやるしかないか……。
「わかりました……えっと……」
「ルルナ……と……呼んで……ください……レイさん……」
え~そっちもかよ……。
「わかった、ルルナこっちに座って」
「はい……」
――前回ブレンダと同じように洗い、最後にグリーンオイルを馴染ませて洗って終わり。
「これでいいよ」
「ありがとう……ございます……」
「お兄ちゃん、わたしも!」
「はいはい」
『やっぱりレイには母性がある……』
いつも通りエフィナが言っていることはスルーする。
――大浴場を出て、精霊が2人の髪を乾かすと髪がサラサラで大喜びしていた。
「髪がサラサラ……してて……嬉しい……」
ルルナは別にそんなに髪も傷んではいなかったが髪が太く少しごわつきがある感じだった。
本人は少し気にしていたみたいだ。
――寝室に入り、やっと寝られる……今日はいろいろとありすぎて疲れた……。
今日は精霊と寝るだけでこの感じ久々だな……そのままベットに入り就寝――。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
「ご主人様、起きてください」
ふと、目を覚ますとアイシスが身体を揺らして起こしてくれた。
『やっと起きたね! 精霊が起こしていたけど、無理だったからアイシスに来てもらった!』
さすがに昨日の疲れがあるのだろうか全然気がつかなかった。
「朝食の用意ができたので食堂に来てください」
「ああ、わかった」
――食堂に向かうとみんな集まっていた……早いな……挨拶をしてイスに座る。
朝食は蟹入りのパングラタン、オムレツ、野菜スープである。
朝から蟹が食べられるなんて贅沢ですよ――大変美味しくいただきました。
「まさかパンのこんな使い方があるなんて……素晴らしい料理だ」
絶賛していました……パングラタンなんて発想はないのか……。
そして屋敷のメイドたちもアイシスを――。
「「「さすがです! お姉様!」」」
まさかここでもお姉様呼ばわりですか……すごい偉業ですね……。
朝食を終え、昨日ギルドで換金した素材のお金を取りに行こうとするが――。
「わたしもいく!」
「わ……わたしも……連れってって……」
なんで? お金を取りに行くだけだぞ……それと……少々買い物はするが……。
「レイ君、ルルナを連れてってほしい、どうも君に懐いてしまってね」
髪を洗っただけでか!?
これは断れないな……。
「わかりました、途中で買い物もするかもしれないけどいい?」
ルルナは笑顔で頷いた。
「昼食前には帰ってくるのだよ。アイシスさんが料理を振る舞ってくれるからね」
昼食も作るのですね……。まあ、こちらとしては嬉しいけど。
「馬車を出しますのでお乗りください」
「ワタシも少しギルドの様子でも見てこようかしら」
リリノアさん、少しって……今日はサボるのですか……。
セバスチャンが馬車を出してくれて、ギルドへ向かう――。




