432話 今後の対策
魔剣と相談をしようと思い、屋敷に戻ろうとすると――。
「その必要はないわよ~。私に任せて~」
エメロッテは俺の手をつないで無理やり引っ張っていく、力が強い……。もう少し加減をしてくれ……逃げないから……。
任せてとは言っても何か策でもあるのか?
向かった先はマナの大樹前で、そこにはリフィリアがいた。
「私を呼んでどうしたの?」
念話で呼んだみたいだ。
呼んだってことは大樹に何かするのか?
「待たせてごめんね~。リフィリアに許可をもらいたくてね~」
「許可ってなんのこと?」
「ちょっとだけ大樹を強化させたくてね~。もちろん、メリットがあるよ~」
「変なことしないならいいよ」
「ありがとう~。さっそくやるね~」
そう言ってエメロッテは大樹に手を当て、龍魔法を使う――。
「――――ドラゴンオーラ」
周りにエメロッテと同じ魔力が表面にコーティングされた。そして大樹は成長をはじめ――枝と葉が増えてひと回り大きくなる。
さらに、大樹から魔力が空高く放出され――領地全体に降り注ぐ。
まさか成長促進させるとは……。
それを見たリフィリアは膝をついて涙を流す。
「ありがとう……大樹本来の姿に戻してくれて……」
「泣くほどではないよ~。私を創ったお返しだから~」
お返しって……、数十年は元に戻らないと言っていたのが、あっさり解決したとは……。
しかもエメロッテが消費した魔力は半分も残っている。
なにもかもおかしい、規格外にもほどが……。
「大樹を治すのは大変ありがたいが、策と関係はあるのか?」
「あるよ~、空をよ~く見て~」
空を見上げると――薄い大のを魔力が領地を覆っている。
無魔法――プロテクションのように。
「結界も戻っている……これで輩は入って来ないよ……」
「えっ? じゃあ、禁忌野郎が領地に転移して現れることはないってことか?」
「そうだよ、もし、結界の外――近くにいたら私たちに知らしてくれるよ」
「そんな機能も備わっているのか……。すごいな……」
「大樹は生きていて私たちを見ているからね。またお世話になるからよろしくね」
リフィリアは大樹に手を当て目を閉じてお願いする。
大樹の復活で対策ができるとは……。
エメロッテが知っているのは偶然なのか? いや違う、エフィナの知識で知っていたのかもしれない。
だが、疑問に思うことがある――。
「俺たちが「ゲート」を使って出入りすることはできるのか?」
「大丈夫、大樹がみんな認めているし問題ないよ」
「認めている? どうやって?」
「さっき魔力が降ったのはみんなを歓迎しているよ。その魔力に触れたら大樹とつながったと思って」
あの魔力ですでにつながったのか……。全然感覚はないが、今後に何かわかるのかもしれない。
「そっか、よろしく頼むよマナの大樹――」
俺も手に当て目を閉じてお願いする。
するとグゥ~っと腹の音が聞こえた、
「ごめんなさい~、魔力使ってお腹が空いたの~」
半分くらい使ったとはいえ、膨大に消費したしな、魔力回復したいわけだ。
「もうちょっとで昼飯だが、何か食べるか?」
「じゃあ~お煎餅が食べたい~」
俺と一緒にいるときも、ほかのお菓子があるのに目もくれずに食べていたな、かなり好きみたいだ。
集会場のテーブルに行き、エメロッテと煎餅を食べお茶しながら昼食を待つ。
昼食の時間になり、みんな集まり、料理を並べる。
ユニコーンたちの要望でニンジンを多めに使った炊き込みご飯、ボアの角煮、味噌汁だ。
伝説の存在でも馬と同じでニンジンが好きみたいだ、というか肉も食べるとか雑食なんですね……。
それはいいのだが、エメロッテのテーブルには炊いた窯ごと置かれて、角煮はてんこ盛り、大型の丼に入った味噌汁が並ぶ……。
その前に数十枚ほど煎餅を食べていたが回復は全然しなかった。
やっぱりこの量を食べないと割に合わないか……。
「う~ん、まだまだ足りないけど、夕食は2倍の量でお願いね~」
撤回しよう、あれだけ消費すれば、足りるわけではないよな……。
まあ、ユグドラシルが復活させその代償が、食事で回復できるなら安くて済みますね。
エメロッテには頭が上がらないし、アイシスに多めに作るように言うか。
「アタシも負けられない!」
ちょっとルチルさん、対抗意識しないでください……。
十分食べているのに無理やり口に運ばないでくれよ……。
食後を終え、「ゲート」を使って王城に移動した。
これからローズさんに謝りに行かないといけない、緊急で戻ったとはいえ、途中で放棄したからだ。
楽しみしていた生徒にも迷惑かけてしまったしな。その前に王様に報告しないと――。
すると、庭にいたファイスさんが駆け寄ってくる。
「ちょうどいいところに――実はレイ殿に連絡しようと思っていたが、来てくれるとは運がいい」
「何かあったのですか?」
「詳しいことは陛下が――」
そう言われていつも話をしている居間に案内される。
周りを見ても慌ただしくなかったし、問題事ではなさそうだ。
少し待つと、王様が部屋に入ってきた――。




