431話 治った後の様子
――5日が経過した。
エメロッテから許可をもらい自由になったが、無茶をしないかエメロッテが一緒についていくとのことです。
いや、もう大丈夫ですけど……心配性だな……。
外に出ると、ユニコーンたちはみんなと話をして領地に馴染んでいた。
俺を見かけると「ボスが起きたと」駆け寄って、良い住処と絶賛して提供したことに感謝していた。
前の住処は薄暗くて住みづらかったしな、ここはのびのびとできるだろう。
兄妹――ホーツとシルキーも俺に駆け寄ると感謝する。
ここに慣れたか聞くと「もちろん」っと笑顔で返してきた。
今まで大変だったがここに合っていて安心した。これからはゆっくりしてくれ。
それはそうと禁忌にかかった人を尋ねる。騎士は今までどおりに見張りし、小人は元気よく駆け回っていた。
病み上がりなのにもう少し落ち着いてもいいのだが……。
ガルクはというと…………アリシャと手をつないで照れながら散歩をしていた。
その後ろにミルチェとアミナはクスクス笑って尾行している。
あの2人できていますね。
ここまで進展するとは予想外です。
まあ、元気そうでなによりだ、このまま2人の世界を邪魔してはいけないし声はかけないでおく。
ミルチェとアミナ、気になるのはわかるが、ほどほどにしてけよ。
オーロラのほうはというと――イスに座ってリヴァを抱き、お茶を飲んでいた。
さっそく満面な笑みで甘えているな。
「具合はどうだ?」
「おかげさまでこのとおりよ、黒い物体から治してくれてみんなには感謝しきれないわ」
「それは良かった。また不審者が狙っているが心配しないでくれ、俺たちが守るからいつもと変わらない日々を過ごしてくれ」
「えぇ、あの得体の知れない恐怖は克服できないけど、頼りにしているわ」
「任せてくれ。ところでリヴァ、オーロラはまだ病み上がりだからベタベタとくっつくなよ」
「もう主と離れたくないからこのままにして」
「レイちゃん、私は大丈夫よ。リヴァちゃんに心配させてしまったし、あたくしのために手伝ってくれたのだから大目に見て」
まったく相変わらず甘々だな。オーロラが言うなら別にいいが。
ん? 視線を感じる――シルキーが後ろにいた。なぜか顔を膨らませてご機嫌斜めのようだ。
ああ、友達になったリヴァと遊びたいのかな?
残念ながら当分は無理だからほかの子と遊んでくれ。
それを見たマイヤはシルキーの肩を叩いて「ドンマイ」と言う。
慰めることではないのだが……。
あとは双子の姉妹だ――おっ、ちょうど近くにくつろいでいるが…………一緒にいるソウタはなぜ頭を抱えている……?
治ったときは鼻水垂らして喜んでいたのに何を落ち込んでいる?
2人の前ではもっと喜べ…………って、その横にいるワンピースを着た中性的な顔をしたダイナマイトボディの女性? は誰だ?
本当に女性なのか……? いや、よく見たらトリニッチさんに似ている……。
ああ、【女体化】で女性らしくなったですね……。それは後ほど聞くとしよう。
「お二人とも具合はどうです?」
「「平気よ」」
双子は、はもって返してきた。まあ、言うまでもないか。
「それより、あのアンデッドはいつ来るのかしら? 楽しみで仕方がないわ」
「また来たらたっぷりとお仕置きしないとね……」
双子揃って不気味な笑みを浮かべて待ち遠しいようです……。
やり返したい気持ちはわかりますが、無茶はしないように……。
「えぇ~ご主人~あんなアンデッドほっといてよ~」
「エクレール、やらないと気が済まないの、わかってちょうだい」
「そうなの~? じゃあ今度はウチも参加するように頑張るね~。今のうちに体力温存するね~」
「そうしてちょうだい」
そう言いながらエクレールはスカーレットさんの胸の中に入り眠りにつく。
相変わらずマイペースだな。まあ、いつもどおりに戻って良かった。
さて、同席しているこの二人に触れていいのかわからないが確認はしないと――。
「ところでソウタ、具合でも悪いのか?」
俺に返答しないでブツブツと何か言っていた。
重症だな……。
「今日のお兄さんはこんな感じよ、気にしないで」
「せっかく仲直りしたのに、こんな感じなのよ。私にも教えてほしい」
ああ、あの新司教騒動の解決したのか、すっかり忘れていた。
じゃあ何が問題だ?
「本当に困ったのよ~。レイちゃん~何か知らない~? せっかく乙女の姿に大変身したのに台無しなのよ~」
トリニッチさん……女性の姿になっても男の声なのですね……。
まだ完全ではないようで……まだまだ成長する可能性があるかもしれません……。
「俺に言われても……困ります……。ソウタ、何か辛いことでもあったのか?」
と言ってもブツブツと言っているだけだった。
「『う~ん、ソウタちゃん素直ではないみたいね~』」
突然エメロッテから念話がくる。ソウタの気持でもわかるのか?
「『何か読み取ったのか?』」
「『違うよ~、私にははっきり聞こえるの~』」
耳がいいってことか、距離があるのによく聞こえるな。
近くにいても何を言っているのかわからないのに。
「『なんて言っている?』」
「『トリニッチは男、トリニッチは男、トリニッチは男と繰り返し言っているよ~』」
…………心配して損した……。
いまさら何を言っている? もうトリニッチさんは愛し合っている関係で嫁? だろう……。
ほらもっと喜べよ、お前の大好きなダイナマイトボディの女性が隣にいるぞ。
お前のために理想的な女性になったのだから普通に喜べよ。
しょうがない、最終手段を使うか――。
「フフフフフフ……むっつりなお兄さん……絶望的な顔してどうしましたか……」
念話でメアを呼んだ。
「いつもの頼むよ」
「仰せのままに――」
メアはどす黒い滋養強壮剤をソウタに無理やり飲ますと――。
「身体が疼く……。誰か……誰か俺を止めてくれ……熱くて死にそうだ……」
中二病の完成です。
「フフフフフフ……オネエさん、求めているのであとはよろしくお願いします……」
「あらやだ、そうなの!? もう照れ屋なんだから! じゃあワタシたちは失礼するね~」
トリニッチさんはソウタを担いでこの場を去っていく。
これでソウタは素直になれるはずだ。
干からびる代償はあるが……。
それから周りの様子を見に行き、なんの問題はなく安心した。
確認もできたし、これから禁忌野郎からの対策を考えないといけない――。




