426話 創るしか方法がない……
この世に治せないものなら創ってしまえばいい……。
合理的だが……。
「創れるのか? あのとき、すべてを治せる魔剣を創造できなかったが……」
『レイが創造しようとしたのは死を治す魔剣だよ。この世に反するもの――禁忌と同じになる。だから創造はできなかった』
俺は禁忌に触れるところだったのか……。
あのときは必死で魔剣を創ろうとした、一歩間違うと道を外してしまったのかもしれない……。
「今回は大丈夫なのか……?」
『うん、今回は死ではなく、禁忌をも治す魔剣なら大丈夫だよ。だけどね、条件がある……』
「その条件とはなんだ?」
『ボクとマナの大樹の魔力を使う』
なるほど、マナの大樹を使えばエフィナの魔力が軽減されるってことか。
だが……二度とエフィナには負担させない――。
「エフィナ、それ以上はダメだ、俺の魔力を――」
『レイには無理だよ。これはボクにしかできない。それに……ボクはすごい怒っているよ……。禁忌を振りまく奴は絶対に許さない……』
その発言で俺の身体――魔力が勝手に漏れはじめる。
怒っているのか? エフィナが怒りを露にするのは初めてだ。
「俺には創造できない。魔剣なのか……?」
『そうだね、今回はボクに任せてね――リフィリア、悪いけどマナの大樹の魔力をもらうね』
「『わかった……。先生も無茶しないでね……』」
リフィリアに念話で許可をもらう。
今回ではなく、今回もだろう……。
またエフィナの力を頼るしかないのか……?
なんでいつもそうなんだ……俺の力不足か……?
自分が情けなくなってきた……。
『ありがとう、レイお願いがある――「マナドレイン」でマナの大樹の半分を吸い取って』
「待て待て!? 勝手に話を進めるな! エフィナなら可能なのはわかる……だが、このマナの大樹を使ってもお前の命はないぞ! 危険すぎる!」
アンバーは慌てて言い出す。そこまで危ないのか……。
『こんなときだからこそのボクだよ。今に始まったことではないことは魔王も知っているでしょう?』
「ダメだ! 幼女神たちはどうする!? 悲しむぞ! レイ、盟友として頼む、エフィナの言うことは聞かないでくれ!」
「俺もアンバーに同意見だ。ほかの方法があるはずだ……」
『いやないよ。レイとアンバーは相変わらず頑固だね。これはボクの使命だから、ティーナたちは悲しむけど、わかってくれるよ』
「だから勝手に決めるな! また悲しませることをするな……」
『まったく、子どものワガママなんだから、ボクの言うことを聞かないなら悪いけど、手段は選ばないよ』
「えっ? ――――マナドレイン……」
身体が勝手に動き……魔法を発動し――マナの大樹を魔力を吸い取る。
制御できない……。
「やめてくれ……エフィナ……。これ以上は……」
『やめないよ、大丈夫だからボクに任せて、みんなの不安は全部背負うよ。二人ともよく頑張ったね』
「やめんかエフィナ! オレが無理やり止めてやる! レイ少し痛いかもしれんが我慢してくれ――」
「――――シャドウチェーン……」
突然メアが現れて4本の影の鎖でアンバーの腕と脚を巻き付かせ拘束させる。
その後ろに魔剣たちがやってくる。
『呼んで正解だったね。メア、創造が終わるまで放さないようにね』
「仰せのままに……」
「放せ小娘!? お前たちも見ておらんで助けろ!」
アンバーは無理やり暴れても鎖は外れない。
もうメアは前より強くなっている……もう魔王でさえ抵抗できないほど強く……。
ほかのみんなは何もすることはなかった。エフィナに命令されているからだ……これが正しい判断と。
けど、下を向き悲しそうな顔をする。みんな辛いに決まっている……。
「エフィナ……自分で選んだ道は後悔していないか?」
『後悔なんて1ミリも思っていないよ。ボクはいつも正しいからね!』
自己犠牲にしてまで、なんでそんなに明るいのだ……。
強がっていないのかよ……辛いって言え……。
「わかった……任せた……」
「レイ、何を言っている!? エフィナの命がかかっているんだぞ!? 見捨てるつもりか!?」
「アンバー……俺はエフィナを信じる……。だから止めない……」
『アンバー、みっともないよ。レイのほうが大人だね。もう少し大人になってよ。長い付き合いのボクをまだ信じないの?』
「それとこれとは違うぞ!? ええい、勝手にしろ! オレはもう知らんからな! 好きにしろ!」
『やっと諦めたね。世話がかかる魔王だ』
「こっちのセリフだ……。なにがあっても、戻ってこいよ……」
アンバーは暴れるのをやめて涙を流す……。
俺だって嫌に決まっている……。
『うん、いつもみんなを見守っているから大丈夫だよ――そろそろ準備ができた』
片手には十分に吸い取った大樹の魔力は球体として濃縮し、輝きを放っている。
そして勝手に周囲に輝きが放たれ強制に創造を開始する――。
すでに頭の中では魔剣が浮かび上がっていた……。
端からそのつもりなのか……。
エフィナは禁忌にどこまで因縁があるかわからないが、みんなを頼ってくれよ……。
俺が【浄化】をもっと強化すれば……。
『魔剣に集中して、レイは悪くないよ。さぁ、ボクたちが創った最高の魔剣を――』
もう止められることはできない……ごめん、エフィナ――。
「――――力を貸してくれ……治癒龍の魔剣……」




