425話 エリクサー完成
リフィリアにユニコーンの角を渡すと――メメットと一緒にすぐに作業に取りかかる。
ほかの素材の下準備は終わっていて、あとはユニコーンの角を粉末にして混ぜ合わせれば完成だという。
俺と魔王は完成を見守る。
角を粉末にし、調合用の大きな壺に魔力草、ハチミツ、マンドラゴラの粉末、コカトリスのくちばしの粉末を入れてよく混ぜ合わせ、茶色の液体になる。
そこからじっくりと煮込み、最後にユニコーンの角の粉末を入れる――すると、茶色から無色透明になって発光――魔力が溶け込んでいる。
「上出来だ。完璧なエリクサーだぞ」
魔王にお墨付きをもらうと、メメットは膝をついてホッとする。
「急いで作ってごまかしていましたが、あっしにはエリクサーを作るなんて夢のまた夢だと思いましたっス……。失敗しなくてよかったっスよ……。すいませんが腰が抜けて立ち上がれないっス……。あとはよろしくお願いします……」
【調合師】のスキルがあるとはいえ、エリクサーは未知数だし失敗する可能性だってある。
よく頑張ったな。
急いで人数分、容器に入れて、急いで宿に向かう――。
手分けして汚染された人にエリクサーを飲ます。
頼む……消えてくれ……。
――数分が経過した。
苦しんでいた顔は穏やかなになったが…………まったく黒い靄が取れていない……。
噓だろう……エリクサーでも治らないのか……。
「レイ……話がある……とっても重要な話だ……誰もいないところでだ……」
魔王は暗い顔で俺に言う……。
もう察してしまった……やめてくれ……。
魔王と外に出て、誰もいない場所――マナの大樹近くに移動する。
「酷ではあるが、しっかり聞いてくれ……エリクサーでもどうすることができない……。地上の管理人として言う……禁忌を消すのは不可能だ……」
その発言で胸が苦しくなった……。
頭の中ではまだ治せる方法はないか考えて――。
「考えても無駄だ……。こればかりはどうしようもない……」
魔王……なんで諦めモードなんだ……。
地上の管理人だからか? この世の全部を知っているからか?
本当に何もないのか……?
可能性があるなら答えてくれ……。
いやまだある……。
「女神ならきっと……」
「無理だ、女神でさえ、禁忌を治す手段はない。対処できたならこの世に存在はしない……」
なんでだよ……悉く否定される……。
本当にダメなのか……。
「じゃあ、元凶を倒して――」
「オレも考えた――だが、禁忌は元凶を倒しても残る……。すまん……本当にすまん……」
なぜ魔王が謝る……? 俺たちのためにやってきたじゃないか……。
「このまま見捨てろと……?」
「いや、ほかの選択肢はある。禁忌は治せないが、寿命を延ばすことができる。エリクサーを定期的に飲ませば命を繋げられる。そのためにもユニコーンたちの力が必要だ。オレもしっかり説得するから安心してくれ」
この選択肢しかないのかよ……。もう元気な姿を見せられないのか……。
「そんな顔をしないでくれ盟友よ……。オレだって助けたい……助けたいけど……無理なんだ……。
魔王――地上の管理人でも助けられない……。許してくれ……」
魔王は拳を強く握りしめて悔し涙を流す。
魔王だって治せなくて悔しいに決まっている。
禁忌さえなければこのようなことにはならなかった。
理不尽で片づけられるならどんなに楽なのか……。
「魔王――いや、アンバー、ここまでしてくれてありがとう……。まだ受け止めらないが、最善を尽くすよ……」
「すまんな……辛いならゆっくり休め……。このことはオレが皆にしっかり言う。領主だからと全部責任を抱え込むな」
アンバーの言うとおり、このまま考えたすぎると魔力暴走してしまう。
俺……もう疲れたよ……このまま現実逃避して――。
『なに勝手に諦めているのさ。まだやることがあるでしょう』
エフィナの声が聞こえた……。やっと目が覚めたか……。
「エフィナ……その……」
『だいたい把握したよ。タイミングが良いのか悪いのかわからないけど、もう大丈夫だよ』
「大丈夫? エフィナ、治せる方法はあるのか? オレですら知らない方法があるのか?」
『あるにはあるよ。ただね、代償はかなり大きいけど、やるに越したことはない』
俺は察してしまった……。
「エフィナ……その方法しかないのか……?」
『うん、ボクの魔力を使って魔剣を創ってね』




