表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
429/917

423話 クズ野郎の思惑


「貴様……ボスである私に許可を取らず、部外者と交流している……? この恥知らずが!」


 クズ野郎は激怒しているが口角を上げて笑っている。

 まさか兄妹をハメようとしたのか……?

 無理難題を押しつけ、魔王に頼るとわかっていたか。

 それで群れ全員を呼んで見せしめにされる。

 

 あのクズ野郎……どこまで兄妹を嫌う……。


「ボス気取りをしている愚か者が口を挟む必要ない。何しに来た?」


 さすがの兄もクズ野郎を睨み返して怒っている。


「私を愚弄するつもりか!? いいだろう……ボス命令で言う――お前たちはここから追放だ!」


 はぁ? 何を言っているんだアイツ?

 クズ野郎の発言で周囲はざわついて驚きを隠せなかった。

 中には泣いている者もいる。それに子どもまで……兄妹と仲が良かった者だろう。

 妹は涙目になり兄の後ろに隠れる。


 魔王は重いため息をついて――。

 

「なにが追放だ? オレの大陸だぞ、お前が言う権利などない」


「私たちの問題だ! 魔王が口答えするな!」


 どの口が言う……?

 このクズ野郎の暴走を止められないのか?


「魔王さんに数え切れないほど恩があるだろう。ボス気取りして何もしない愚か者が威張る必要はない。失礼極まりない」


 兄は狂ったクズ野郎を冷静に正論を言う。


「黙れ! お前はもう部外者だ! ここから立ち去れ!」


 当然のように話を聞きはしない。

 

「お前……勝手に決めるな! こやつはな、皆のためにお前に代わってオレたちにお願いしたのだぞ!

無能のお前に代わってな! お前がボスを名乗る資格はねぇ!」


 魔王は魔力を出して怒り、クズ野郎は驚いて後ろに下がった。

 温厚の魔王でさえ、我慢の限界のようだ。


「この忌々しい魔王め……。黙れ黙れ黙れ! よくも私をバカにしてくれたな! お前たち、魔法の準備をしろ! こいつらを消せ!」


 ここで命令するのかよ。いくらクズ野郎とはいえ、ボス命令は聞くはずだ。

 俺も結晶魔法(クリスタルウォール)の準備はできている。

 だが、周りは魔法を構える姿もなく、クズ野郎に冷たい視線がいく。


「な、なぜ準備しない!? ボス命令だぞ!」


「もう、あなたにはうんざりだ。何もしてくれない……良い生活が送れない」

「いつもあんたは威張ってばっかりで、俺たちのことなんて聞きやしない。もう疲れたよ……」

「前のボスはみんなの意見を聞いて優しかったのに、お前は自分のことしか考えていない……嫌になる……」


 周りはクズ野郎に文句を言う。

 限界だったのか吐き出すように責める。よほど溜めこんでいたのか。


「お前らうるさいぞ! 私に文句があるならお前たちも追放してもいいのだぞ!」


 周りは呆れたのか次々とクズ野郎から離れていき、俺たちも元へ――。


 そして――クズ野郎の元には誰もいなくなった。

 これには予想外と思ったのか口を開けて呆然とする。


「なぜだ!? 私のなにが悪いというのだ!?」


 そう言ってもみんなは何も言わずに目を逸らす。

 もう信用できなくなったな。


「ふざけるな! わかった、今のは撤回してやる。遅くはない、私のほうに戻ってこい」


 バカだな……上から目線の奴に誰がついていく。

 もちろん、みんなはその場を動かなかった。


「愚か者、これがみんなの本当の気持ちだ。追放するのはお前のほうだ」


 兄が言うとみんな頷く、自分勝手で何もしない奴には追放されるのがお似合いだな。


「うるさいうるさいうるさい! なぜ私が追放されないといけないのだ!? 私はボスだぞ! ここの住処は私のものだぞ! もういい、お前たちには心底失望した。ここから出ていけ!」


 ここまで異常とは……。


「いい加減にしろ……誰がお前の住処だ……。お前に権利なんてない……もう許さねえ……」


 魔王はさっきより魔力を多く――前回に出してゆっくりとクズ野郎に近づく。

 もう痛い目に合わないとダメか。


「ち、近寄るな!? 私に触れるとどうなると思っている!? 勇者が君臨し、お前を倒してくれるぞ!」


 訳のわからない妄言を吐いて、脅しが効くと思ったか?

 怒りが収まるわけがない。


 魔王は拳を――。




「――――グブェ!?」



 えっ? ヴェンゲルさんが膨大魔力を拳に注いで素早くクズ野郎に寄り、ぶん殴った。

 勢いよく地面に叩きつけられ吹っ飛んでいき――大木に当たり止まった。

 クズ野郎は打ちどころが悪かったのか、角が折れて気絶する。


「おい、ヴェンゲル、邪魔をするでない。これはオレたちの問題だ」


「すいません、あまりにもイラついて手が出てしまいました。ですが魔王さんが手を下す必要はありません」


「はぁ……お前がやってやる気が失せた。もうよい」


「ご理解ください」


 魔王は魔力を抑えて正常になった。

 まさかワザとやったのか?

 あの魔力だと、クズ野郎は滅するほどの威力は十分にあった。

 もしものことを考えてヴェンゲルさんは魔王の印象を悪くさせないためにやったかもしれない。


 まあ、イラついているのは本当だ。


 周りはクズ野郎が殴られて気分が晴れていた。

 なんだかんだ解決したからいいか。

 これでモヤモヤがなく領地に戻れそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ