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419話 魔王と自称ボスの関係


 ユニコーンから離れて、みんなため息つく。

 無理もない、あのクズ野郎(ボス)が聞く耳を持たなかった。

 

「うぅ……全然聞いてくれなかった……」


 リヴァはポタポタと涙を流して下を向いたままだ。

 気を遣ってマイヤ、シエル、エクレールが頭をなでて慰める。

 焦る気持ちはわかるが、無茶しすぎだ。


「あのボスユニコーン、最悪だな……。魔王さんをかなり嫌っていたが、何か理由でもありますか?」


「私も思った。魔王さんが住処を提供してるのに恩を仇で返すなんて、最低なユニコーンね」


 ヴェンゲルさんとアリシャも気になるよな。

 

「アイツの先祖は勇者に助けられたみたいでな……。勇者にオレが悪だのこの世の破滅だのと因縁をつけられて嫌われている……」


 ちょっと待て、勇者と接触したのかよ!?

 いやいや、おかしい点が山ほどあるぞ……。


「はぁ!? 勇者が魔大陸に入ったという話はないぞ! まさかアイツの先祖は……」


「ズイール大陸で助けられたのだろう……」


「大陸を大移動したのかよ……」


 アイツの祖先はズイール大陸出身なのか……。

 ヴェンゲルさんの言うとおり大移動している。

 ズイール大陸は魔大陸と繋がっていないし、プレシアス大陸から移動しないといけない。

 海を渡っていくのは絶対にあり得ない。

 あそこの海域はかなり大陸から離れていて、常に荒波が起きて泳ぐなんて論外――船でさえ渡るのは無理なはずだ。


 そのおかげでズイール大陸の連中は魔大陸には渡れず襲撃はない。

 ただ――。


「おかしくないですか? 魔王さんを嫌っているなら魔大陸に移動する理由がないですよ」


「ああ、勇者に「もし死んだら代わりに仇をとってくれ」と言って来たらしい。まったく、はた迷惑な勇者だ。まあ、偶然にもアイツの先祖に鉢合わせになり襲ってきたが、返り討ちした」


 本当にはた迷惑な勇者だ……。


「伝説の存在を利用するとか最低な勇者だ……。察しますがそのあとは?」


「ああ、腐っても伝説の存在だ。保護して今になる。まさかここまで恨まれるとは思っていなかった……。ほかの奴らには多少の風評被害でとどまっているのが救いだ」


 魔大陸にいれば安心かと思ったが、いろいろと苦労されていますね。

 というか仇って、勇者を倒した英雄の方に向けられるが、わからなかったらしいな。

 まあ、そのあと姿を消した人だし、魔王に向けられるか。


「心より応援しています……」


「慰めは無用だ。それより――」


 みんな気づいていた。

 後ろからついてくる者が――俺たちは歩くのを止めて待つ。


 見えてきたのは、髪を束ねている長身の男と服を掴んで後ろに隠れているポニーテールの小さな女の子だ。

 攻撃する感じでついてきたわけではなく、敵意はなかった。

 

「なんだお前たちは? まだ文句があるのか?」


「いいえ違います。こちらを見てほしいです――」


 男の前に現れたのは両手でも持ちきれないほどの大きさをしたユニコーンの角だ。

 アイテムボックス持ちなのか……。

 あまりの大きさにみんな驚く。


「なんだこれは!? お前たちの角よりあり得ないくらい大きいぞ!?」


「元の姿で取れた角です。ですが、あなたの言うとおり僕たちでも規格外の大きさです」


「そのくらい大きいと先代のボスしか考えられん」


「さすが魔王さん、そのとおりです。先代のボス――僕の父ものです」


 先代の息子か、父の形見として持っていたのか。


「まさかと思うが、譲ってくれるのか?」


「はい、ですがお願いを聞いてくれる条件です」 


 マジかよ!?

 男の発言でみんなは大喜びし、リヴァは泣き止んで表情が明るくなった。

 だが、その願いがロクなことかもしれない。

 ぬか喜びになりそうだ。

  

「本当か!? このくらい大きいと皆の分のエリクサーは余裕で作れる! それでお願いとはなんだ?」


「周辺の魔物討伐と荒れた湖をきれいにしてほしいです」


 なるほど、周りの環境を整えてくれってことか。

 俺たちからしたら簡単に片づけられる範囲だ。


「魔物なら余裕だが、湖か……浄水の石を持ってきてないし、今度でもいいか?」


「魔王さん、俺とマイヤに任せてください。【浄化】できますので」


「レイとスライム娘にか? わかった、そっちは頼んだ」


 魔王には【浄化】のスキルは言ってないが、察して追求はしない。


「任せてください。リヴァは戦闘できないからこっちだ」


「うん……」


「じゃあ、早めに片づけて戻るとするか」


「ちょっと待ってください。もう日が沈んでいます。夜の戦闘は危険です。遅いので明日からでも――」


「何を言っている。夜が危険とはなんのことだ? この魔王が負けるとでも? たかが、弱っちいトロール相手に夜なぞ関係ない」


「そうだ、俺からしたらトロールなんてただデカいだけの雑魚だな。夜は心配しなくていいぞ。こっちには歩くライト――光の精霊がいるから問題ない」


「ウチは~暗闇をいっぱいに照らして~役に立つよ~」


「私も甘く見ないでね。これでもほかの冒険者より強いのだから」


「わかりました。心配無用でしたね。お気をつけて。では湖に案内しますので担当の方お願いします」


 こうして俺とマイヤ、リヴァは男についていき、それ以外はシエルに乗って周辺の魔物――トロール討伐に行った。

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