417話 ユニコーンの住処
レイ視点に戻ります。
ローズへイスに近くの森に移動し、みんなシエルに乗り、魔王の指示で北東に向かう――。
――30分後。
「魔王さん、あとどのくらいで着く? 一刻を争うぞ……」
無言だったヴェンゲルさんが口を開いた。
焦る気持はわかる。
「もう少しだ、もう少しで…………噓だろう……あんなに豊かな土地が……」
山を3つ越えると――周りはヒビの入った大地に、枯れている大木が広がり、下には無数のトロールがいた。
遠くだが、大木――密林が見える。
どうやらここ周辺は密林だったようだ。
ちょっと待てよ……この風景は――。
「マナイータの仕業か……」
魔王は恐る恐る言う。
やっぱりか……。
「厄災級が……? 噓だと言ってくれ……じゃあ、ユニコーンは……」
「安心しろ、まだ先の方にアイツらは住んでいる。だが、ここまで浸食していると少し厳しい環境ではある……」
タイミングが悪すぎだろう……。下手するといなくなっている可能性もある。
こんな肝心なときに厄災級が現れたとかおかしい……。
「保護しているなら、魔王軍とかで応援にいけないのですか…?」
「言ったはずだが、アイツらは気難しいのが多くてな、魔物が大量発生したときは俺も危ないとわかって言ったんだが、「お前の手助けなど必要はない、二度と来るな」とか言われてな……。断れてしまった。アイツらはなんだかんだ強いし、心配することはなかったが、まさかマナイーターがいたとはな……。まあ、不幸中の幸いで奥の方――住処は大丈夫だけどな」
魔王をそこまで嫌っているとは……。過去に何かあったのか?
仮にここを離れないでいたとしても交渉ができる状態なのか不安はある。
みんな不安もありながら荒れた平地を通り過ぎる。
「ここで降りてくれ、ここから歩いて行くぞ」
魔王の指示で密林の手前でシエルは降りる。
奥の方に魔物とは違う魔力を感じる。
ユニコーンだとわかった。ここから離れていないのはしていないのはよしとする。
密林の中に入り、進んで行く――。
中はかなり薄暗く、魔物が出てきそうな雰囲気はあるが、ユニコーンらしき魔力だけだ。
ユニコーンって、清らかな場所に生息しているイメージだったが、まったく違った。
まあ、そんな簡単に見つかる場所にはいないよな。
「もうすぐ住処に着くぞ。ここからは慎重にな、アイツらを刺激してはならない」
みんな魔王の言うことを頷く。
前は薄暗くてわかりづらいが、魔力は近い。
すると、奥の方から光が見えてくる。
俺たちに気づいて向かって――いや、違う。
「マズい、避けろ!」
魔王が慌てて言った瞬間、魔法――光の剛球が俺たちに目がけてくる。
慌てて躱してみんな無事だ。
ユニコーンって魔法使えるのかよ……。
歓迎されてはいない。だが、魔力の塊が次々にこちらに近づいてくる。
「何者だ! ただちに立ち去れ!」
男の声で出てきたのは――中性的な顔で額には白紫色の一本角、髪はベージュ色で肩まで伸びたストレート。
瞳は黄色の白いローブを着た人型の男だ。
それも次から次へ同じ顔の美男美女が数十人と現れ、俺たちを警戒し、魔法を構えている。
ちょっと待て、ユニコーンって【人化】できるのかよ……。
俺の予想を上回っている。
「おい、このオレが直々に様子に見に行っているんだぞ。魔王の顔でも忘れたか?」
「ふん、お前か、二度と来るなと言ったはずだ。それも人を連れ出して何をするつもりだ? 早く帰れ」
「そうはいかん、お前たちのボスに会わせろ。でないと話が進まないからな。ボスに重要な相談がある」
「ボスだと? 目の前にいるだろう」
「はぁ? 何言っているんだお前は? どこにもいないぞ?」
「まだわからないのか? この私がここのボスだ。お前こそ何言っているのだ?」
「おい、噓をつくな。お前がボスになれるわけないだろう。お前たちにボスが…………まさか死んだのか?」
「そうさ、前のボスは魔物の戦いで朽ち果て、そして私がボスなった」
「よりによってアイツがボスに代わったのかよ……。最悪だ……」
その男の発言で魔王は頭を抱えた。
アイツ、そんなにヤバいのか……。どうやら交渉は一筋縄ではいかないようだ。




