416話 不審者②
「ふざけるなぁぁぁ――――!?」
男は叫びだすと――黒い靄が身体から放出し、光魔法を遮る。
魔法が終わると、ルージュがボロボロに負わせたのに身体は元通りになっていた。
「化け物ね……。上位アンデッドかしら……」
「私たちでは無理そうね……」
スカーレットとルージュは勝てない相手とわかった。
だが、ここで引いてはいけないと応援が来るまで時間稼ぎをする。
再びスカーレットは魔法で光の剣をルージュに渡し、援護をしたが――。
「お前には興味ない! 失せろ!」
「きゃあぁ!?」
男はスカーレットの背後に瞬間移動し、黒い靄に襲われて倒れていく。
「スカーレット!?」
ルージュが持っている光の剣は消えてしまった。
いったん、体制を整えて腰に付けているミスリルソードを取り出し、切りつけようとするが、躱されて背後にいた。
「お前も興味がない! 失せろ!」
「そ、そんな……」
黒い靄に襲われるが、地面に剣を突き刺して抵抗をしている。
ここで自分が倒れたら時間稼ぎができないと。
「珍しい女だ。私の研究成果を抗うとはな……。そうか、もっとほしいのか、満たされるまでくれてやるよ――」
「――――絶剣!」
アリシャが前に出て切り込み、男の行動を阻止する。
だが、男の怒りが増していく。
「邪魔をするなぁぁぁ――――!」
「ぐあぁぁぁぁ――――!?」
狂ったように黒い靄を周囲にまき散らし、騎士たちに襲いかかる。
「アリシャ、危ない!」
「ガルク!?」
ガルクは盾を捨てて、アリシャに駆け寄り、庇いはじめた。
「間に合ってよかったぜ……」
そう言って笑顔で目を閉じて倒れた。
「何が間に合ったのよ……バカ……」
「もういい、一生くだらない友情ごっこをしていろ……。大事な研究材料が逃げてしまう……」
「ひぃ……」
リヴァは尻餅ついて、あまりの恐怖に立ち上がることができなくなった。
男は理性を取り戻したのか、ゆっくりと不気味な笑みで近寄って手を差し伸べ――。
「さぁ……私と楽しい実験を――」
「――――覇閃斬!」
「――へっ? う、腕があぁぁぁ――!?」
「よくも大事な友を……許せん……」
セイクリッドが剣で斬撃を飛ばし、男の両腕を切る。
その隙にナゴミはリヴァを持ち上げて、避難させる。
「――――クリスタルチェーン!」
ルチルは魔法で結晶の鎖で足と首を巻き付かせ、身動きを取れなくした。
「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなぁぁぁぁ――――!?」
首を縛われているのに、声を張って暴れている。
「テメェ……覚悟はできているか……」
「大切な親友に酷いことしたわね……」
ヴェンゲルとトリニッチは怒りながら魔力を出し、ルチルから虹色に輝く結晶の剣を借りて男の身体を突き刺す。
「よくも皆を――――抜刀・落雷光!」
「――――覇王・一閃!」
ライカは【武器創造・雷】で雷を付与した青銀の刀を作り高く飛び、刀を抜き、頭上向けて雷光を纏い突き刺し、セイクリッドは胴体を真っ二つにして、男の身体はバラバラになった。
これで終わったかと思ったが、男は笑みを浮かべて不気味そのものだった。
「ククク……私が追い込まれるとは、面白いです。せっかく素晴らしい素材が目の前のに本当に惜しい……。まあ、いいでしょう、楽しみはとっておくのもアリですね。強くなって私の最高傑作たちを連れてあなたたちとお遊びします。では――」
「待ちやがれ化け物!?」
男はバラバラになった身体とともに消えていった。
「なんだ……アイツは……この世のものとは思えん……それより……」
ヴェンゲルは黒い靄に覆われて、倒れている姿を見て固まった。
頭の整理がつかないようだった。
その後、他のみんなが応援に来て、急いで回復魔法、ポーションなど試してみるが、まったく黒い靄が消えない。
アイシスは無理だとわかり、レイに念話で報告をする――。




