413話 黒い靄の正体
領地に着くと、周りは慌ただしかった。
子どもたちは恐ろしかったのか大半は泣いて、大人たちは宥めていたが、不安でいっぱいだった。
集会場には異様な反応が……シェルビーと比べものにならないぞ……。
急いで集会場に向かい、そこに見えたのは――周りを覆うほどの黒い靄が発生し、目を閉じてうなりながら苦しんで寝ているのが数十人ほど……。
騎士と小人の大人、その中に――スカーレットさん、ルージュさん、ガルク、オーロラが被害に……。
「チクショ! なんで回復魔法とポーションが効かないのだ! おかしいだろう……」
「ご主人……ごめんなさい……ごめんなさい……」
「バカ……本当に何やってのよ……私を庇うなんて……このバカガルク……」
「うぅ……主……」
ヴェンゲルさんは地面を叩き悔しそうに、エクレールは、スカーレットさんに寄り添って謝り、
アリシャは大泣きして、ガルクを揺すり、リヴァは身体を震えながらもオーロラに寄り添う。
今助けてやる、もう安心だ。
「しっかりしろ! マイヤも頼む!」
「うん……」
俺とマイヤで【浄化】を使うと――。
黒い靄が危険を察知したのか、身体をコーティングして浄化の隙を与えない……。
噓だろう……【浄化】が効かないとかおかしいだろう……。
「浄化……できない……」
マイヤも無理だった……。おい……俺たちが治せないなら誰が治せるんだ……。
「主様……魔王なら治せる可能性があります……」
「そうか、魔王の血なら絶対に治せるはずだ……」
「では……呼びに行くので少々お待ちください……」
そう言ってメアは空間魔法を使って魔王を呼びに行った。
それまで何があったかみんなに聞いた――。
突如、不気味なオーラを纏った黒いフードを被った男が集会場に現れて、急に高笑いをして訳のわからない独り言を言いながら周囲の人を黒い靄を次々とまき散らしたという。オーロラはリヴァを庇い、黒い靄に汚染されたと……近くにいたスカーレットさん、ルージュさん、アリシャ、ガルク、騎士たちはすぐに駆けつけてたが、返り討ちにされて、アリシャはガルクに庇ってくれたおかげで無事だという。その後、ヴェンゲルさん、ナゴミ、セイクリッド、ルチル、ライカ、トリニッチさんで致命傷を負わせて逃げたという。
相手は1人かよ……。
「すまぬ主殿……あの不審者……強くなって群れを率いてまた来ると言っていた……。我がもっと強ければ……」
「儂もだ……早く気づいて入れば子どもたちがこんな目に……」
セイクリッドとライカは逃したことに責任を感じていた。
また来るか……いや、むしろ都合がいい、捜すのに手間が省ける。
それで息の根を止めてやる。
「心配するな、致命傷を与えたならすぐに来やしない。次来たら仕留めような」
「いかにも……次来たら我が必ず……」
「絶対に守る……」
しかし、集会場に急に現れたとか……警備は手薄ではなかった。
嫌な予感が的中しなければいいが……。
「急に小娘に助けろと呼ばれたが安心しろ! この魔王が助けてやる!」
メアは魔王を連れて戻ってきた。
腕を組んで自信満々だ。さすが魔王だ、この世に治せないものなんてないよな。
「さあ、どこに患者おる? すぐに治して…………」
魔王は黒い靄がわかると、急に立ち止まり、冷や汗をかく。
「おい……なんの冗談だ……禁忌魔法に犯されているだと……」
その発言で俺も冷や汗をかく。
黒い靄は禁忌魔法の正体なのか……。
じゃあ、シェルビーは禁忌にやられたこととなる……。
まさか帝王の中に禁忌野郎がいたとは……。
これで辻褄が合った。
厄介なことになったが、元凶を片付けるにはちょうどいい覚悟しろ……。
ただ――。
「魔王さん、治せますよね?」
「すまないが……オレの血を分けても助からない……禁忌を治せるほど万能ではない……」
噓だろう……魔王が無理なら禁忌はこの世でもう治せないというのか……。
「ほかの方法で治せないのかですか……?」
「あるにはあるが……治せる可能性はある……。あれを作るしかないな……」
「作るって……まさか――」
「ああ、察したとおりエリクサーだ」




