409話 休み明けから面倒です
――翌日。
朝食を食べ終えて、俺たちは学校に向かう。
「早く魔法を使いたいです」
「フフフ……時間はたっぷりあります……。焦らずいきましょう……」
メアとシェルビーは手をつないで仲良く登校する。
今日はシェルビーをお休みにしようと思ったが、本人は学校に行きたいと言って聞いてくれなかった。
まあ、魔力は正常で問題はないけどね。周りには優秀な教員もいるから何かあってもすぐに対処してくれる。
俺が心配しすぎたのかもしれない。
だが、王様の許可が下りず――1週間くらいは寮に戻れず城で様子を見るが。
学校に入り、シェルビーを後にして、職員室に入ると――シェルビーの担任にマナシを治したことを感謝された。
ローズさんしか報告していなかったが、耳に入ったか。ローズさんのことだしすぐ言ったかもしれない。
休日でも仕事熱心ですな。
さて、今日の確認を――。
「失礼する!」
王子が大声で職員室に入ってきた。
あっ、忘れていた……。
「賢者殿、シェルビーの魔力が流れている、いったいどういうことだ!」
俺の方に向かい、机を両手で叩いて訴える。
ですよね……。休み明け早々に面倒事が山積みになるとはな……。
「ああ、シェルビーの要望で誰もいない場所で治してほしいと言ってな、だからシェルビーを優先した」
「それなら私にひと声かけてくれないか!? 大事な妹のことはしっかり伝えてほしい!」
「と言われてもな……。シェルビーは誰にも教えないでと言ってな――」
「それでも納得がいかん!」
ダメだな……訳を話しても引き下がりはしない……。
しょうがない……本当のことを話すか――。
「あらあら……甘ちゃん王子……。それはあなたのワガママではありませんこと……?」
「私のワガママだと!? こんなにも妹を心配しているのだぞ!」
「それがワガママですこと……。自己中心的な考えで、シェルビーさんのことを何も考えていません……。シェルビーさんは治療前に不安がいっぱいでしたこと……。自分を落ち着かせる時間がほしいに決まっているではありませんか……? たとえ……兄だろうが身内だろうが、励ましをもらったとしても逆に不安になる一方です……。それで精神的に追い込ませて治療が失敗したらどうするつもりですか……? あなたは責任を取れますか……?」
「なっ……それは……」
メアのド正論で言い返せなかった。こんなときにメアがいると頼もしい。
「本当に甘ちゃん王子ですこと……。妹の意見を優先できないなんて、次期帝王失格ですこと……。もう少し頭を使って考えてくださる……?」
「すまなかった……。大人げない態度をとってしまい……。本当に申し訳ない……」
王子は頭を下げた。
ふぅ……一時はどうなるかと思ったが、理解してくれた。
メアがいなかったら本当のことを話すところだった。
「謝る前に感謝の言葉はないのです……? せっかく大切な妹を治したのですよ……?」
「本当にすまなかった……。賢者殿には感謝しきれない……。この恩は絶対に返す……。私は頭を冷やしたい……失礼する……」
王子は戦意喪失したかのように落ち込んで、職員室を出る。
「朝から騒がしい甘ちゃん王子でしたこと……。お礼を言わなかったら闇に葬ろうと思いました……」
朝からブラックジョークを言うメアもメアだが……。
まあ、メアに助けられたのは本音だ。
気を取り直して今日の確認する――。
――今日の授業が終わった。
休み明けだから量も少なくて比較的楽だった。
少し休んでから学校を離れようと思ったが、そうもいかない。
ソウタの付き添いがあるからだ。
もちろん、メアも同行する。
「むっつりなお兄さんの行く末を見るのは当然です……」
いやと言ってもついてくるから止めはしないが……。
「やることないからウチも行く……」
「私も気になります。ついて行ってもよろしいでしょうか?」
なぜかマイヤとシェルビーも一緒に行きたいらしいです。
俺は問題はないが、ソウタは嫌だろうけど。
学校を出ると、ソウタの姿はなかった。
早く終わった方から、学校の門前で待つ話だったが、まだ終わってないようだ。
ヴェンゲルさんはあまりのショックで監視していなくて早く終わるはずだぞ。
まったく、お願いを聞いてあげてるのに……。普通ならソウタが早く切り上げるほうだ。
しょうがないと思いつつ騎士学校に向かう――。
着いたのはいいのだが、校庭には生徒たちが集まって騒いでいた。
おい、放課後やるなとあれほど言ったのに、無理に断ってでも――。
「テメェのせいで俺の癒しが奪われた、どうしてくれる!?」
「俺の聖女を返せ――」
「なんで女神様の啓示でお前が選ばれるのだ!? 選ばれるはこの俺だぞ! 何かの違いだ!」
…………複数の王国騎士とソウタが戦っていた……。
はぁ……だいたい予想はつく、周りの生徒に話を聞くと――王国騎士がソウタを待ち伏せしていたらしく、殺意丸出しで襲いかかったとのことです。
もう尻追い組の一部から暴動が起きるとは……。
いや、教会に行く情報も入っているはずだ、どうしてもアマーニと会わせたくはないな。
だが、縁談を断る話は耳に挟んでいないようだ。
「ちょっと待ってくれ、俺は断りに――」
ソウタは説得しても、血が上って聞いてくれない。
「フフフフフフ……良いイベントが起きましたこと……」
「笑ってないで止めるぞ……。これで日が暮れたら、俺の休む時間がなくなる……」
「申し訳ございません……。では――シャドウバインド……」
メアは闇魔法を使い――騎士たちを闇の影で拘束をした。
暴れることさえできないほど、きつくし、【威圧】を出しておとなしくさせた。
落ち着いたら、アマーニとの縁談を断りに行くと言ったら、納得して謝る。
「えっ……? なんで俺には謝らないんだ……?」
「「「お前は早く断れ!」」」
騒動の元凶だから謝りたくはないだろうな。
さて、早く終わらせてゆっくりするぞ。




