40話 商都のギルド
デスキングクラブが倒れるのを見た集団は驚いていた。
その1人の中で鎧を来た30代前半くらいのドワーフの人がこっちに来た――。
「おい兄ちゃん、大丈夫か!? それにデスキングクラブが凍っている……」
まあ、その反応だよな……。
「俺が倒した……これを見てくれ……」
無限収納からギルドカードを見せた。
「アイテムボックス!? ……こ、これはミスリルのカード!? それなら納得だ! よく1人で倒したな……それにカルムからなぜここに?」
「護衛の依頼でここに来た……そろそろ護衛をしている馬車が来ると思う……それで人が集まっているのだがコイツが目的か……?」
「ああ、そうだ、災害級が近くにいるから緊急宣言を出して、みんな避難させてこれから倒すはずだったが、もう既に倒されてるとはな……護衛でこんな時に来るとはとんだ災難だな……それに助かったよ! これで商都も安心だ!」
やっぱりこいつが元凶だったのか……。
「悪いな……獲物を取ってしまって……」
「何言ってんだ、おかげであのバカ硬い災害級と戦わずに済んだからこっちは大助かりだ! それに兄ちゃんはいったい何者なんだ?」
「その話は後にしてほしいな……魔力を消費しすぎて体が重いんだ……」
「ああ、わりぃ! 誰か、この兄ちゃんにマナポーションを渡してくれ!」
グロワールの冒険者からマナポーションもらい飲んだ――これで楽になった。
「助かった……ありがとう。デスキングクラブはどうする? このままアイテムボックスに入れて持っていくけど」
「それは助かる! あんな大きいのは持っていけないからな!」
それじゃあ、しまうとするか――そのタイミングで馬車が来た。
アイシス、ブレンダ、セバスチャンが馬車を離れてこっちに来た。
「ご主人様、大丈夫ですか!?」
「お兄ちゃん、大丈夫!?」
「ぼっちゃま、大丈夫ですか!?」
「兄ちゃん、貴族様だったのか!?]
あっ……話がややこしくなるからここで説明した方がいいな。
それに精霊も出てきた……それはマズいって……。
「せ……精霊!? 兄ちゃん、いったい何者なんだ?」
「はぁ……説明するよ……実は――」
周りにいる人に事の経緯を話した――とりあえず納得してくれた。
「兄ちゃんいろいろと大変だったな……」
「まあ、そういうことにしてくれ」
「お兄ちゃん、またスゴイの狩ったね!」
ブレンダはデスキングクラブを見ても恐がらずテンションが上がっている……これ結構恐い方だから引くと思ったがそうでもないみたいだ。
「セバスチャン、悪いが先にギルドに報告しないといけないから伯爵様への挨拶はその後になるけどいい?」
「問題ありません、想定内の事なので大丈夫です」
想定内なのか……危険なことも考慮しているわけか。
「悪いな……すまないがグロワールのギルドに案内してくれないか? 名前はギルドカードで見せたとおり、レイだ。よろしく」
「ああ、もちろんだ! 自己紹介がまだだったな、俺は商都で活動しているAランクのゼネロットだよろしくな!」
お互い紹介も済んでデスキングクラブを無限収納に入れると、周りは非常に驚いていた。
「あんなデカブツが入るなんてスゲ~!?」
「アイテムボックス持ちとか凄いな!」
「若いのにすごいな……」
ん? 反応が良いけど商都でもアイテムボックスは珍しいのか?
「みんな驚いているが珍しいのか?」
「当たり前だろ! 俺はアイテムボックス持っているやつは商人で数名見たけど、冒険者でアイテムボックス持っているやつは兄ちゃんしか見たことないぜ!」
意外だな……それでも商人で持っている人は見たことあるのだな……。
アイシスが持っているとは……言わないでおこう。
それからゼネロット以外は先にギルドに報告に行き、ゼネロットに案内を任せ――昼過ぎにグロワールに着いた。
商都のことだけあって城門はカルムより大きく防衛面でもしっかりしている。
中に入ると、デスキングクラブの情報で不安を感じているのか活気があまりなかった。
「着いたぞ、ここが商都の冒険者ギルドだ」
デカいな……カルムのギルドの2倍はあるな……。
1人で行こうとするとアイシスと精霊も行きたいみたいだ……。
しょうがない……精霊はフードの中に隠してギルドに入った――中には大勢の人が集まってざわついていた。
「おっ、ちょうどいいな。マスターがいるから早めに済ませられる」
ホールの奥にいる赤ピンク髪のロングでいろいろとデカい女性エルフがこちらに気づいて小走りで来る――。
「レイじゃないか!? 大きくなったね! 3年ぶりかな! ザインちゃんから魔道具でこっちに寄るかもしれないとか言ってたけど、本当に来るとはね! 調子はどう? お腹空いた? セーレは元気? それから――」
「お久しぶりです、リリノアさん……相変わらずですね……」
「兄ちゃん、マスターと知り合いだったのか!?」
「何言っているの! カルムのギルドマスターの息子だよ!」
「なんだって!?」
「いや、リリノアさん……ザインさんは育て親なので息子ではないです……勘違いしないでください……」
「育て親がザインちゃんなら息子同然でしょ! 相変わらず固いわね!」
はぁ……久しぶりに会っても変わらないな……。
リリノアさんは小さい頃から知っていて、ザインさんとギルドマスター仲間でたまにカルムに遊びに来る。
そしてセーレさんの親戚である。
リリノアさんの近くに先に報告のため戻っていた冒険者が来て――。
「マスター……この子が災害級を倒したのですが……」
「えっ!? レイが倒したの!? この街に避難してきたかと思った! 早く見せて!」
「ここでですか? 解体場の方が……」
「ここで見せた方がレイがここのギルド全員に認められて打ち解けやすくなるからよ!」
「そうですか……わかりました……」
まあ、今後来るときは顔合わせも必要になるからメリットもあるな。
無限収納からデスキングクラブを出すと。周りから歓声をあびた――。
「でけぇ!?」
「これが災害級……迫力があるな……」
「やるな! 若いの!」
「スゴイじゃない!? さすが、ザインちゃんの息子! いい子、いい子」
リリノアに頭を撫でられた……久々に撫でられた気がした。
「それと……リバークラブも大量にあるのですが……」
「まだあるの!? それに厄介だったリバークラブをやってくれたの!?」
数十匹程、自分達用に残し、無限収納からリバークラブを出した。
「ありがとうレイ! これで商都は安泰だわ!」
「まあ、成り行きで狩っただけですから……」
「これは忙しくなるわ!」
リリノアさんはホール中央に行き大声で――。
「災害級を討伐したことにより、避難勧告を解除する! 至急、連絡するように! それと【解体】スキル持ちはデスキングクラブとリバークラブの解体をよろしく、報酬は弾むわよ! 誰か運ぶのに商業ギルドからアイテムボックス持ちを呼んでちょうだい。あとは受付が指示するからよろしく、それでは解散!」
周りはリリノアさんに従い、行動に移る。
「さてと、レイには報酬の話をしないと、ワタシの部屋に来て!」
「いいのですか!? 依頼を奪ったような気がしますが……」
「何言っているのよ! アナタが倒したなら受け取るのは当然よ! それとメイドの子も来てちょうだいね! ザインちゃんから聞いているから賢者のこといろいろと聞きたいわ!」
「わかりました」
やっぱり、アイシスのこと言ってたのか……まあ、ギルドマスターには言わないとややこしくなるからか……。
――階段を上り、3階にあるギルドマスター室に行き話をする。




