403話 容赦ありません
魔法学校とは真逆の方向にある騎士学校に着いた。
王国騎士専門学校と一緒の敷地内建てられている。
魔法学校とは違って校庭は広く、稽古練習には最適だ。
個々の邪魔が入らないように思う存分動き回れる。
学校が休みなのに生徒たちが数百人と集まっていた。
その奥には――専門の生徒が殺意剝き出しに真剣を使ってソウタと稽古? をしていた。
やっていますな、それに――。
「やっちまえ!」
「お前の未来がかかっているぞ!」
「もっと踏ん張れ!」
数名ほど私服姿の尻追い組の騎士がいた……。
休暇だとわかったが、そんなにソウタが気になるのかよ……。
休みくらいはゆっくりしろ。
「もっと腰を低くして構えろ! 隙だらけだぞ!」
ヴェンゲルは腕を組みながら仁王立ちして生徒に助言をする。
熱が入っていますね。
だか、そろそろ終わりそうだ。
ソウタは一瞬だけ魔力に剣を通して切りかかる――相手は剣で防ぐが吹き飛んでしまう。
起き上がる前に近づいて首に剣を押しつけて終わった。
「ち、チクショ――――!」
相手はあまりの悔しさに涙を流して去っていく。
人生がかかっているから悔しいのは当然だよな。
まだ期間は十分ある。
「「「チッ……」」」
ヴェンゲルさんと尻追い組は舌打ちをして不満げのようです。
いや、生徒相手で簡単にやられないないぞ……。
まったく……懲りませんな。
「次だ……準備しろよ……」
「グランドマスター……少し休ませてくれ……」
「はぁ? テメェに権利はない。さっさと用意しろ」
変わらず厳しいですな。順番待ちしていた生徒と休むことなく開始する。
「フフフ……もう少し……もう少し……」
メアは不気味な笑みを浮かべて楽しそうですね。
はい、何かやることはわかりました。
――1時間後。
「もうダメだ……休ませてくれ……」
ソウタは疲れ果てて地面に倒れる。
「まだ半日しか過ぎてねぇぞ……情けねぇ……それでもスタンピードの英雄か……。早く起きろ……」
そう言っても起き上がる気配はなかった。
連日の疲労もあり限界のようだ。
「フフフフフフ……むっつりなお兄さん……今から元気なお薬を飲ませますね……」
待っていたかのようにメアは無限収納から毒々しい発光した滋養強壮剤を取り出した。
逃がさないように闇魔法――シャドウバインドで腕と足を縛る。
それを見た女性陣は後ろに下がりはじめて警戒をする。
「それだけはやめろ!?」
「フフフ……好き嫌いはダメですこと……。遠慮はいりません……」
上から垂れ流し無理やり飲ませるが、半分以上は顔を流れてしまっています。
魔法を解除して【隠密】使って気配を消した。手際が良いことで……。
すると、ソウタの身体中に蒸気が発生をして、紫色の肌に変り白目になって起き上がった。
うわぁ……半分も飲んでいないのに効き目抜群ですね。
辺りを見渡し、女性の方を見つめ、よだれを垂らして――。
「ガァァァァ――――!?」
マズいな、自我がなくなり女性陣に襲いかかろうとしている。
しょうがない、止め――。
「おい……誰が女を襲っていいと言った……」
「――――ガハァ!?」
ヴェンゲルさんは近づいてソウタに腹パンをして吹き飛んでいく。
かなり強めの一発だったが、重症ではないからよしとします。
そのままソウタは気絶して被害は回避し、女性陣はホッとひと安心だ。
ただ、メアと尻追い組は満面な笑みで大喜びです。
「本当に情けねぇ……」
「今日は無理ですね。終わりにしますか?」
「何を言っている……。コイツが起き上がるの待って再開するぞ」
ヴェンゲルさんの機嫌はいまひとつようでダメみたいです。
数十分後にソウタは目を覚ました。
鼻息が荒いが自我を保っていて、再開はした。
たまにだが、女性陣を見てよだれを垂らして襲うか心配だったが、大丈夫でした。
徐々に紫になった肌も元に戻りになり、日も暮れて終わりになった。
「つまらないですこと……。全部飲ませればよかった……」
メアは思っているほどの面白さがなく、少々後悔している。
まあ、あれを全部飲んでしまったらロクなことがないから俺はそれでいいと思う。
「身体が疼く……まだ足りない……」
中二病をこじらせていてちょっと不安でもある……。
俺とメアは先に城に戻ると、庭でマイヤ、シェルビー、サーメルが待っていた。
「ありがとうございました! この恩は必ずお返しします!」
っと、シェルビーは頭を深く下げた。
声のハリも違い、表情も明るくなっていた。
「とにかく身体の方は大丈夫か?」
「はい、おかげさまで身体中が温かく、前よりも動けるようになりました」
身体に魔力が馴染んでいる証拠だな。見た感じ正常に魔力が循環していて問題はなさそうだ。
「良かったじゃないか、まだ魔力慣れはしてないから気をつけるように」
「そのことなのですが、陛下は治りたてだからと、今日明日は王城でお泊りすることになりました」
そうだよな、病み上がりの子を早々に帰宅させるのはダメだな。
何か起きても俺たちの近くにいれば安心もある。
「そうか、何かあった俺たちにすぐ言えよ」
「はい、夕食の準備ができていますので一緒に行きましょう」
魔力も安定して何も問題はないけどな。
まあ、治したからには最後まで面倒は見るけど。
俺たちは食堂に行く――。




