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400話 教会事情


 俺たちが礼拝が終わったことがわかると、シスターたちが目を開けて立ち上がる。

 その中に知っている人がいた。

 聖女――アマーニ・キュリセットだ。

 あのぽっちゃり体系だったのが、瘦せてグラマーになっていることだ。

 かなりの美人さんになりましたね。

 それに前より装飾をつけた服を着用している。上に昇格していることがわかった。


「賢者レイ様、聖堂――教会本部にお越しいただき、誠にありがとうございます。事前に礼拝するのでしたらお連絡してください。私たち一同、喜んで歓迎します」


 歓迎って……一度しか会っていないだろう……。

 しかも話してもいない仲だぞ。

 まあ、俺も賢者の称号ももらっているし、歓迎しないと失礼になるよな。

 

「お構いなく、俺は女神様に感謝を伝えに来ただけですので、これで――」


「そう言わず、お茶でもいかがでしょうか? 話したいことがあります。できれば賢者レイ様だけで……」


 ああ、ゴミ(ベースン)の件があるよな、後々面倒くさいなりそうだし、話を受けるか。


「わかりました。悪いがクエス、話が長くなりそうだ。ここで解散になるがいいか?」


「大丈夫です。では明日よろしくお願いします」


「ワタクシたちは外でお待ちしております……」


 クエスと別れて聖女と一緒に奥の扉の中に入り、長い廊下を歩く。

 やっぱり気になるか……外で待っているはずのメアとマイヤは【隠密】を使って後をついて来る。

 バレなければ来てもいいけど、面白いような話はしないぞ。


 少し歩いたら部屋――応接室に入ると、聖女は深く頭を下げた。


「ベースン・ユクーゼが賢者レイ様の身内に非行をかけたこと、深くお詫び申し上げます」


「頭を上げてください。聖女であるあなたは何も悪くはありません、頭を下げるのでしたら上の方がやることです」


「今、私は司教として聖務を果しています。当然の報いでございます」


 ちょっと待て、聖女からかなりのお偉いさんになったぞ!?

 司祭ではなく司教ですか……? かなりの訳アリだ。


「なぜ司教になったのですか……? 話がまったく読めません……」


「前司教はベースンの夜逃げのときに暗殺されてしまいました……。それもほかの上もです……。それで国王陛下により司教へと命じられたのです」

 

 なるほど、金を奪うために上を暗殺しないといけなかったか。

 知らないのは当然だ。王様も細かく言わなかったが、あのときは情報が全然行き届いていなかったかもしれない。

 だから急に司教となって忙しくて瘦せたに違いない。裏ではかなり苦労しているな。


「そうですか……ですが、あなたは悪くありません、すべてベースンのせいです、頭を上げてください。女神ミスティーナなら絶対にあなたを攻めませんよ」


「女神ミスティーナ様と同じに許してくれるのですか……? ああ……なんと慈悲のあるお方なんでしょうか……」


 アマーニは膝をついて涙を流して俺を拝む。

 面倒くさいからティーナさんを使ったが、余計に面倒くさくなってしまった……。

 教会の人に軽々ティーナを使ってはいけないことがわかりました。


「もう済んだことなので、これからはお互いに乗り越えましょう」


「はい……ありがとうございます……」


 あとは落ち着くまで待つかって……メアさん……無表情で【威圧】を出さないでください……。

 進展なんてありませんよ……。


 アマーニは落ち着きを取り戻し、ソファに座りお茶を飲みながら話をする。


「それで、あの愚か者が逃げたあとの教会はどうなっていましたか?」


「大変でした……。お金を持ち出され、上の者は誰もいなくて大混乱でした……。私はベースンの近くにいましたが、怪しいことは一切なかったので……むしろ私に対してはすごく優しい方でした……」


「女神の言葉を聞けるなら都合良いと利用されたのでしょうね」


「恐らくは……」


「でも、よく立ち直れましたね」


「これも女神ミスティーナ様が与えてくれた試練だと思い、自分なりに聖務をやってきました。もちろん国王陛下の助力もあり、今があります。前はこんなことなかったのですけどね」


 試練で片づけられるのはすごいですね……。

 あれ? 王様にお願いできるほどの仲だったっけ?


「そういえば、陛下とは仲が悪かったですよね? よく相談できましたね」


「それはベースンのせいです……。前司教に国王陛下は女神ミスティーナを愚弄しているなどと言い、仲を引き裂いておりました……。噓を見抜けず、お恥ずかしいかぎりです……」


 やっぱりゴミの思惑どおりだったか……。

 本当にどうしようもない奴だな。


「そうですか……。誤解もなくなり、良い関係になって良かったですね」


「はい、ですが困ったことがありまして……。見張りを配置されている騎士から次々に求婚されるのです……」


 アマーニはため息をしながら言う。

 …………新司教まで尻を追っているのかよ!?

 いい加減にしてくれ……俺はそのネタはもういいよ……。

 

 瘦せてグラマーな美人になった瞬間に追うとは……お前ら本当に最低だ……。


 じゃあ、今配置されている騎士もアマーニの尻を追っているのか……。

 内心は配属されてラッキーと思っているな……。


 あの、メアさん、不気味な笑みを浮かべて何か企まないでください……。

 だいたいの予想はついていますよ……。


「心中お察しします……」


「お気遣いありがとうございます。これも女神様の試練と思い乗り越えてみせます」


 なんでもかんでもティーナさんの試練で終わらせますね……。

 ある意味現実逃避です。


「話が長くなりましたね、俺はそろそろ帰ります……」


「もうそんな時間ですか、今日はありがとうございました。相談もできて心が浄化されました。いつでも歓迎しているのでまたお越しになってください。女神ミスティーナと共にありますように」


 アマーニとの話が終わり、教会一同で見送ってくれた。


「フフフフフフ……むっつりなお兄さんを連れていけばさぞ面白いことに……」


 メアの不気味な笑いは止まらなかった。

 はい、そうだと思いました。

 その前に連れて来られないし、無理だろうな。

 今回は妄想だけにとどめておいてください。

 

 すっかり薄暗くなった、もうすぐ夕食の時間になるし、急いで城に戻らないと。

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