399話 女神会議
女神たちはお茶を飲んでひと息していた。よほど会議が大変だっただろう。
「神様同士で何を話していたのですか? 重要なことでなければ聞きたいです」
「気になるの……? じゃあ、特別に話すからミルクレープちょうだい……」
特別って、お菓子で交換情報に出すとかいいのか……?
さほど大事な会議ではなさそうだな。まあ、気になるしいいか。
無限収納から追加でシャーロさんにミルクレープを渡した。
「これこれ……。じゃあ、話すね……。アタシらが会議に参加したのは……現状報告に行って……世界を創った神同士の情報を聞きに言っただけ……。今回も何も変わらなかった……」
「それだけですか?」
「うん……それだけ……」
大あくびしながらシャーロさんは言う。
なんとなくそんな気がしていた……。
あまり気になる情報は聞けませんでした……。
「シャーロ、あなたが寝ていたから、適当なこと言わないでよ。今日の報告ではパーミシャルの世界で勇者が魔王を討伐したと言っていたわよ。こんな喜ばしいことはないわ」
それが聞きたかったことです……。ほかの世界では魔王が悪者みたいだ。
こちらの世界より王道な展開になっていますね。
「ふ~ん、それだけ……? 魔王を倒しても問題だらけじゃん……。そのあとが大変……」
シャーロさんは素っ気なく返す。
魔王を倒しても後処理が大変だよな、それが終わらないかぎり喜べないとは思いますね。
「それだけって、平和の一歩に近づけたのよ! なんで喜ばないのよ!」
「ティーナはよく聞いていない……。だってパーミシャルの世界は――」
「それまでだ! 母が創った世界の話をするのはやめだ! シャーロ、母なら問題なく解決するから心配はいらないぞ!」
今の話ってソシアさんの母親が創った世界ですか……。
すごいこと聞いたな……。というか女神に親がいたのは初耳です。
まあ、そこは人と同じ仕組みだよな。
「ソシアさんのお母さんはすごい方ですね……」
「当然だ、母は一人だけで世界を管理している。私はとても尊敬はしている!」
1人だけとはすごいな、ソシアさんが自慢に言えるだけのことはある。
「尊敬ね……」
「あれを尊敬はない……」
ん? ティーナさんとシャーロさんには不評だ。
察しました……。ソシアさんの性格に似ていて厳格な女神だろうな……。
多分、当たっていると思います。
「レイ……ソシアにバーミシャルの話はダメ……長く――」
「レイ君のことは母も知っていてな、世界が安定したらぜひ会いたいと言ってな――」
会いたいのかよ!? というかこっちの天界に遊びに来ても平気なんですね……。
「はじまった……もう止められない……」
シャーロさんが言ったとおりソシアは母親のことを話し続ける――。
――1時間が経過した。
母親が好きなのはわかったが、とまりません……。
会議で疲れていたはずなのに……。
まあ、ソシアさんの意外な一面と面白い話が聞けたのはいいが。
というか母親の世界の話はしてはいけなかったのに娘が言っていいのですね……。
ソシアさんが言うには――母親は真面目で言うことを聞いてくれる子を勇者召喚に成功したこと、
ソシアさんを育てながら世界――ウェミナスを創ったこと、女神では誰にも負けないほど美人だとのことです。
話がズレているのは気のせいかな?
「これで私の母の偉大さがわかっただろう」
満足しているならいいか。気になることあった。
「勇者召喚はどこから呼んだのですか?」
「日本からだ」
やっぱり日本なんですね……。
「無理やり召喚するわけではないですよね……?」
「もちろんだ、しっかり本人に承諾を得てから正式に召喚させるのが決まりだ。どこかの不正規な召喚とは違う」
ですよね……。やっぱり無断で召喚しては理に反しますよね。
「いつも思うのですが、なんで日本人が転移や転生が多いのですか?」
「それは私にはわからない。ただ言えることはなぜか日本人が強いことだけだ。それ以上の答えは返せない」
「アタシも日本人が強いのはわからない……」
「日本人って謎が多いわね」
女神でもわからないのかよ……。
まあ、元同郷である日本人が活躍しているなら喜ばしいことだ。
「だが、あまりの強さに調子に乗り、道を外して世界崩壊へ招くこともある。慎重に選ばないといけない」
リスクはありますよね。まあ、俺たちの世界は勇者召喚されないし安全だ。
問題なのは迷い人とクエスみたいに転生した人だ。
今のところ問題はないが、もしいたら元日本人として責任を取らないといけない。
「少ししゃべり過ぎたようだ。ところでレイ君、そろそろ戻ったほうがいいとは思うぞ」
「どういうことですか?」
「レイ君たちの周りにシスターが集まっているぞ」
しまった……。天界だから時間に余裕があると思ったが、予想以上に早いな……。
「わかりました。ではこれで――」
マイヤに念話で伝えて合流して、3人に見送られながら慌ただしく戻っていく――。
視界が変わり、目を開けると、後ろには大勢のシスターが祈りを捧げていた。
ちょっと……帰れる状況ではないのですが……。




