397話 王都の教会
しかし、西端とかなりの距離だ。
1時間くらいは歩いたぞ、別に教会に行くなら俺の領地でもよかった気がする。
それにしても建物は水色の光沢で輝いていた。
半分以上ミスリルを使っている……王都だけあって派手だな……。
いや、あのゴミの関与もされたと受ける。
それはいいとして、見張りをしている騎士たちに敬礼をされて、中に入ると――両端にはガラス細工で作られた等身大のティーナさんらしき像が並べてあった……。
こんなに並べる必要があるか……礼拝しづらいぞ……。正面には今まで見た中で大きいティーナさんの像が祀ってある。
気のせいだろうか……ほかのところより胸を盛り過ぎている……。
なんでもかんでも胸を盛るな、ティーナさんに失礼だろう。
教会の連中はふざけているのか。
まあ、ティーナさんに会えれば問題はないが。
「賢者様!?」
俺が中に入るとシスターが甲高い声で驚く。
あっ、面倒くさいことになりそうだ……。
そのシスターは慌てて奥にある扉へ急いで駆けつけて中に入って行く。
絶対に上の者を呼ぶに違いない、早く終わらせて帰ろう。
本当ならエフィナが復活してから会いに行きたかったが、今回はしょうがない。
俺たちは像の前に近づき、祈りを捧げる――。
視界が変わり、いつもと同じ場所に着いた。
クエスも無事に来たようだ。
何があったのか辺りを見渡す。
「ここは……」
「女神が住んでいる庭園だ。失礼なことはしないように」
「わかりました。恥をかかないようにします」
さて、まだ姿を見ていないが――ん? 双子の天使が近づかないで伺っている。
知らない人がいるから近づけないのか?
「あっ……天使だ……」
マイヤは双子のほうに向かう。
珍しく興味をもっているな、気になることでもあるのか?
「「うぅ……怖い……」」
双子はマイヤが近づくと怯えて後ろに下がっていく。
怖いのか……ルチルは平気だったのにマイヤはダメなのか?
「ウチは怖くない……」
そう言うとマイヤはスライムに変えて高く飛び跳ねた。
「「わ~い、スライムだ! かわいい~」」
双子は笑顔になり喜びながら触る。
スライムなら平気なのか。話が長くなりそうだしマイヤは双子と遊んでいたほうがいいな。
それにしても来るのが遅いな、いつもならすぐ来ると思うが。
「救世主様、ティーナ様、ソシア様、シャーロ様は別世界の神様と会議をしています!」
「もうすぐ帰って来ると思うので待ってください!」
初耳です……ほかの神様と会議をするのか……。
内容が気になりますな、ちょっとだけ聞いてみよう。
「わかった、ありがとう」
双子とマイヤと離れて、いつもお茶をしている庭園の中心で待つ。
「先生って、あの天使に救世主様と言われていましたが、命の恩人なのですか?」
ああ、クエスには何か救ったのかと思われたか……。
双子にお菓子をあげただけなのに「救世主様」って言われたのは大げさだよな……。
今になると恥ずかしい。
「そんな大したことはしていないぞ。ただ――」
「よく聞きなさいクエス……。あの双子は飢餓で苦しんでいたところを主様が作った絶品と言われるほどのお菓子をあげて救ったのですよ……。それは泣いて喜んでいたこと……」
「すごいですね! 天使も「救世主様」と言われるわけだ!」
クエスは目を輝かせて俺を見る。
メア、話を盛るな……変に俺を上げても意味がない……。
「本当に大したことはしていないぞ……」
「よろしければ、その救った絶品のお菓子を食べたいです!」
話を聞いていない……。ただ菓子を食べたいだけだろう……。
まあ、まだ来ないし俺たちでお茶をするのもいいか。
「いいが、そんなに驚くほどではないぞ。好みもあるし」
俺は無限収納からチーズケーキを出した。
「久々にチーズケーキを見ました……。では――」
恐る恐る口に運んでいく。なんで緊張するほどではないが……。
食べたら無表情で固まっているが……。
「フフフ……主様が作ったお菓子は魂が抜けるほど美味しいでしょう……?」
いや、この反応は期待外れだろう……。というか魂が抜けるってここは天国だが……。
すると、クエスの目から涙が……。
「美味しい……俺は甘いもの苦手だけど……こんなに美味しいとは……天使が泣くのもわかる……」
美味しくて固まっていたのかよ……。
というか甘いの苦手なら無理して食べるな。
まあ、美味しいと言ったなら許すが。
「フフフ……当然のですこと……」
なんでメアが自慢げに言う……。
これからは俺を盛るような話は避けてほしい……。
「なに勝手に私がいないときにお茶しているのよ! って……この子誰よ!」
ティーナさんたちは会議が終わって戻って来たようだ。
ん? クエスを知らないってどういうことだ?




