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396話 現実を言う


 学校を出て、教会に向かっている途中、いろいろと気になることを話す――。


「ケンカが得意なら格闘士(ファイター)になって、ヤーワレさんのとこで冒険者の修業する道もあったが、なぜ魔法学校を選んだ?」


「ヤーワレさんは俺が幼いからという理由で無理ですね。それに……本江隼也とは違う道を歩きたいです……。殴るようなことはしないと誓いました。【体術】のスキルがありますが、もったいないですけどね」


 やっぱりヤーワレさんは過保護ですね……。

 ケンカをしていたから【体術】のスキルを覚えていたか。


「かなりもったいないな、別に人を殴るわけではないだろう。魔物なら問題ないぞ」


「そうですけど……ヤーワレさんに所属している冒険者の方は魔物を喜んで殴ったり痛めつけて喜んでいるのを見たことがありました……。あの、その……なんというか……一緒にいると本江隼也に戻りそうな気がします……」


 ああ……ヤーワレさん率いる輩集団の戦いを目の当たりにしたか……。

 確かに開拓の手伝いに来ていたときに魔物が入ってきたら全員喜びながら狩っていたな……。

 なんで全員あんな風になるかが不思議です。


「わからなくもない……」


「けど、みなさん良い人には変わりないです。【体術】は護身用として活用してますので」


 苦笑いして言う。

 恩人でもあるし、クエスは天使扱いされているし、強くは言えないよな。

 護身用なら有効に使っているか。

 ただ、お金を稼ぐには【体術】も使ったほうよさげだが、はっきり言うか。


「クエスはお金を稼ぎたいだよな? 卒業したらどこに行く?」


「はい、卒業したら冒険者として活動します。俺を育ててくれた孤児院のみなさんに恩返しをして寄付をしたいです」


「なら【体術】を使うしか道はないぞ」


「どういうことですか?」


 俺は時魔法のデメリットを教える――。


「――というわけだ。素材分の金がなくなる。わかったか?」


「でも、依頼でお金が入るので使わなくても大丈夫ではないのですか?」


「依頼ならな、もし、パーティを組むなら報酬なんて山分けだぞ。1日生活できるかわからない報酬だったらどうする? 最初は報酬より、素材の方が稼ぎがいいぞ。俺以外にも相談したら同じことを言われるぞ。ヤーワレさんたちは別だと思うが」


「そ、そうですか……。ですが……魔物でも殴るために使いたくはないです……」


「甘い、その考えはやめろ、殴るためではなく人を守るために使え、肝心なところで【体術】を使わず仲間を守れなかったどうする? 絶対に後悔するぞ」


 これくらい言わないと冒険者はやっていけないからな。それで命を落した人もいる。

 ヤーワレさんのところで過保護にされてわからないことが多い、この機に現実を見させないと。


 クエスは下を向いて足を止め考える。


「じゃあ、人のため使えばいいのですか……?」


「そうだ、傷つけた分、人のために使え。それで救われる人もいるから考え直せよ」


 まあ、冒険者になるまで先は長いし、大丈夫だろう。

 それまでにはゆっくり考えて――。


 クエスは自分の顔を両手を叩き、真っ赤に跡がつく。

 魔力も出したからかなり痛いぞ……。


「先生の言うとおり、俺の考えが甘かったようですね。みんなを守るために【体術】を使いたいと思います」


「わかればいいぞ。だが、顔を叩いて痛くないのか……?」


「このくらい注射より痛くはありません。大丈夫です」


 注射より痛いけどな……というか注射が嫌いみたいですな。

 頑固なところがあると思ったが意外に素直に受け入れてる。


「そうか、今は魔法を覚えるのに専念しろよ」


「いえ、決めたからには格闘士の訓練もしようと思います。どこかできる場所があればいいのですが」


 決めたからには実行するのか。言い出したのは俺だし面倒はみるか。


「だったらギルドの稽古場があるぞ。使いたければ俺が許可するように言うぞ」


「いいのですか!? ありがとうございます!」


「もし、あれだったら長期休みのときは俺の領地に来て訓練してもいいぞ。凄腕の格闘士もいるし参考にもあると思うぞ」


「本当ですか!? けど休みは孤児院に帰る約束をしています……」


「ヤーワレさんなら俺が説得するぞ」


「違います。一緒に育った子です。気持ちはありがたいのですが、一緒に連れて行くのは無理ですよね……?」


「幼なじみか、別にいいぞ。その子が行きたいと言えばの話だが」


「本当にいいのですか!? 何から何まで本当にありがとうございます! そのときはよろしくお願いします!」


「いいって、ヤーワレさんにお世話になっているし、大丈夫だ」


「楽しみにしています! 先生の領地は凄腕の格闘士もいるなんてすごいですね」


「ああ、その格闘士だが、ソウタの嫁だぞ」


「すごいですね、ソウタさんの嫁って。グランドマスターが言っていた2人のどちらかですか?」


「違うぞ、ほかにいる嫁だぞ」


「えっ!? ほかにも嫁がいたのですか!? じゃあグランドマスターの言うとおりソウタさんは女癖が悪いですね……」


 その瞬間、メアは不気味な笑みを浮かべる。

 あっ、言ってはいけないことを言ってしまった……。


「そうですこと……。むっつりなお兄さんは胸の大きな女性を猛獣のように襲いかかるクセがあります……。それは数えきれないほどに……」


 また始まった……。


「まさかこの世界に来て好き放題欲望を丸出しにしているとは、最低ですね……」


「ですので、あんな大人にはなってはいけませんよ……」


「もちろんです。俺は最低なことをしないと誓っています。ソウタさんは反面教師として参考にさせていただきます」


 こうしてソウタのすごく悪い印象で見る人が増えた。

 布教かのように増やすのではない……。欲望丸出しなのは本当ではあるが。


 そう言いながらも教会に着いた――。 

  

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