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394話 誘導と説得


「知っているなら使い方わかるよな?」


「はい、ですがヘイストと関係がありますか?」


「時間を支配しなければ時魔法なんて簡単に覚えられないぞ。よく見てろ――」


 俺は目を閉じてストップウォッチを押して、適当に止める。


「――5,86秒だ」


 目を開けると俺が予想したとおりの時間だった。


「す、すごい!? ピッタリ合っている!」


「これを10回連続予想できれば「ヘイスト」を覚えるのに一歩近づけるかもな」


「10回も!?」


「まだ初歩的だぞ、100回連続で予想できれば使えるかもしれないけどな」


「100回もですか……。魔法って覚えるの大変ですね……」


「まだ入学したばかりだろう……。学校生活は長いから頑張ってやれよ」


「そうですね。昔のクセがつい――いえ、なんでもありません」


 昔っていつだよ……。

 前世では長く生きしていたかもしれない。


「今日は貸すから励めよ、放課後は職員室に来て返してくれ」


「わかりました」


 ストップウォッチを渡し、俺が言ったとおりに練習を始めた。

 まさかフランカが暇つぶしに作ったストップウォッチが役に立つとはな。

 時間を予測しなければ時魔法なんて夢のまた夢だ、「クロノアロー」でしか使えない。

 本当に誰も教えることもできなく、ほかの魔法よりクセがある。

 

 ストップウォッチを貸したのは強制的に職員室に来させるためだ。

 個室だから誰にも聞こえず転生者なのか聞ける。


 みんな集中して練習している間にシェルビーと話せる。


「――フフフ……これが闇魔法の真理ですこと……。覚えておくように……」


 闇魔法に真理とかあるのか……。

 

「変なことは教えていないだろうな……」


「ご安心ください……。本人に聞けばよろしいかと……」


「メア様の闇魔法について、魔法を使えない私でもわかりました。とても勉強になります」


 授業の始めたときは硬い顔をしていたが、少し明るくなっている。

 本当のようですね。


「ワタクシ言っていることを理解しているなら、すぐに闇魔法を使えますこと……将来が楽しみです……」


「私は魔法を使えるなんて……無理ですよ……」


 一瞬でドライになった、やっぱりマナシと理解して諦めているな。


「そういうことは言わない、まだまだ学校生活は長いぞ、急に魔力が出る可能性だってある」


「賢者様は私の魔力を感知できますよね? 見てのとおり、挨拶をしてきたときと同じです……」

 

 ポジティブに言っても否定的に返してくるし、慰めようとしたが逆効果だな……。

 ちょっと早いが、希望を持つようなことを言うか。


「そうかな? 俺をからしたら魔力が詰まっているように見えるぞ。誰も気づかないくらいの詰まりが。まだ小さいし、自然に魔力が出るぞ」


「えっ……? 噓ですよね……」


「本当だ、俺が絶対に保証する。だから否定的なことを言わないでくれ」


「は、はい……」


 シェルビーは大粒の涙を流した。

 マナシだと思って苦労して我慢していたようだ。

 子どもに得体の知れないのをつけるな、ただでさえアルビノで苦労しているのに追い打ちをかけるな、いい加減にしろ……。


「まあ、洪水のように流してしまって……きれいなお顔が台無しですこと……」


 そう言ってメアはハンカチを取り出して涙を拭いてあげる。

 メアって、見下している人は多いが、苦労している子には優しいよな。

 まあ、道徳意識があるのは確かだが。


 生徒たちは気になったのかこっちを振り向く。

 さすがに授業中に泣かせるつもりはなかったが……。


「ほら、こっちを見ないで集中しろよ」


「「「は~い」」」


 とりあえずメアが見てくれるし、落ち着くまでそっとしておく。

 俺はそれまでわからない子にコツを教える。


 ――十数分後。


 シェルビーは落ち着きを取り戻し、スッキリした顔になった。

 

「賢者様、ありがとうございます。私、一生使えないと思いました……」


「お礼はまだ早いぞ、魔力が出てからにしてくれ」


「いえ、教えてくれるだけでも感謝してます」


「それなら、魔力が出たならどうする? 習いたい魔法もあるだろう」


「はい、闇魔法です。メア様に聞いて興味を持ちました。早く魔力がでないか楽しみです」


「フフフ……嬉しいですこと……」


 よほどあの説明で気に入ったようだ。

 じゃあ、メアにシェルビーの担当をお願いしようか。


「そうか、じゃあ、それまでにいろいろと知識を覚えるように」


「はい、お父様の娘に恥じぬよう頑張ります」


 お父様って辺境伯のことでいいよな。王様の言ったとおり実親のように慕っているみたいだ。


「では引き続きワタクシが……では闇魔法の真理の続きを教えてしましょう……」


「よろしくお願いします、メア様」


 だから闇魔法の真理とはなんだよ……。

 まあ、最初警戒していたシェルビーもこんな早く打ち解けるなら結果オーライだ。


 黒い靄を治すのに予定を早く立てそうだ。   

 

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