39話 異常発生
段々と反応が濃くなってきた。
川にはオレンジサーモンの姿が見られる。
遠目だが蟹らしき姿が見えた……セバスチャンの予想通り、リバークラブの大群がいた。
もっと近くに行かないとダメだな……。
――数十mまで近づいた……デカいな……茶色く、重みのある図体で大体2~3mはあるか……大きな爪を持っていて非常に厄介だな。
少しだけ様子を見るか――観察している1匹のリバークラブが動き始めた。
川に向かって思いっきり横走りをしてる――あんなデカい図体して速すぎだろ!?
川の中に入り、大きな爪を素早く出し――オレンジサーモンを捕らえ食べている。
足が速い、爪を出すのも速い……Cランクの魔物とされるのも当然か。
あの大群で近距離戦は無謀だな。
『リバークラブは雷魔法が弱点だから川に落とせば、あの大群は余裕だね!』
「その方法もいいのだが、そうもいかない」
『なんで?』
「川の中にオレンジサーモンがいるから下手に雷を落とすと死んでしまう」
『別にしょうがないことだけど、どうして?』
「今後のことを考えると繫殖の面で困る。次の年に不漁だったら困るだろう?」
『なるほどね! じゃあどうやって倒すの?』
「そこで今回は精霊に手伝ってほしいってわけだ」
『手伝う?』
精霊は首を傾げた。
「やり方だと――」
精霊にやり方を教えると納得してくれたようだ。
『よく考えるね~レイらしいやり方だけど!』
「それじゃあ、よろしく。まず先に川の中に入っている奴からね」
精霊は頷いて川に近づき、リバークラブ1匹を風を使って浮かす――そして逆さにしたまま俺の近くまで寄せて、高い位置から落とす――。
――ゴンっと鈍い音がし、地面に落ちてリバークラブは泡を吹いていた。
うん、いい感じに仕留めそうだな。
氷魔法を使う――。
「――アイスショック!」
――リバークラブを全身氷漬けにした。
そして、無限収納に入れる――よし、入ったってことは仕留められたな。
これならいけそうだ。
精霊に手を振って合図をし、再びリバークラブを落とす――。
そして「アイスショック」で凍らせて無限収納に入れる。
このやり方は地味だが的確に仕留めてオレンジサーモンに危害を加えずに済む。
それにリバークラブを換金するのにあまり傷をつけず済むからである。
少しだけ自分たち用も残さないと……。
そのままひたすら繰り返す――。
――だいぶ減ってきた、もう100匹以上は仕留めた。
すると……【魔力感知】で大きな反応したのがこちらに近づいてくる
これは比べものにならない……。
精霊に一旦引くようにお願いをし、そいつが来るまで待った――。
――川の流れに沿ってそいつは来た――蟹だが…………デカすぎだろ!?
全長20m以上はあるぞ! 周りとは違って少し青いな……。
リバークラブは慌てて巨大な蟹から逃げ回る――そしてその巨大な蟹がリバークラブを巨大なハサミで掴み――ボリボリ食べていた……。
共食いかよ……。
『こいつはデスキングクラブ……少々厄介な魔物だね』
「えっ……デスキング……同じ種類じゃないのか?」
『別の種類だよ。多分ボクの予想だと、リバークラブはデスキングクラブに縄張りを追い出され逃げてたと思うよ。それでここの周りに移動したってこと』
「あり得なくはないな……だとすると街道に人がいなかったってことはこいつを警戒していたのか?」
『そうだと思うよ。デスキングクラブは水がなくても余裕で生きられるから避難していたかもね。あと、あのハサミは街ごと壊せる威力を持っているよ』
街を壊せるって……少々どころの厄介な魔物ではなく災害級の魔物だろう……。
さて、どうするか……グロワールのギルドに行って報告するのもいいが、ブレンダの距離も近いから放っておくのはマズい……。
「なあエフィナ、コイツは倒せると思うか?」
『レイなら倒せるよ。でも油断はしてはいけないよ。それともアイシスでも呼ぶ?』
「いや、万が一の場合もあるからアイシスには待機してもらう」
『わかった、でも危ない時は言うからね』
「決まりだな、それじゃあコイツを倒して蟹パーティーだ!」
精霊は危ないから馬車に戻るように言ってその場を去った。
これなら思いっきり暴れられる。
デスキングクラブはリバークラブを食べるのに夢中になっている。
今の隙に――。
「――――アイスハンマー!」
氷魔法で氷の鎚を創り、デスキングクラブの背後に周り、思いっきり飛び――甲羅目掛けて叩こうとするが――。
『レイ! それはダメ――』
背後にいるのに気づいたのかデスキングクラブは振り向いた、速い!
その片方のハサミでブロックされた――。
硬い……これはマズい――。
そしてもう片方のハサミを使って掴もうする――すかさず空間魔法を使う――。
「――――ゲート!」
デスキングクラブから数十m離れたところに移動する……。
今のところ、これが限界だ……エフィナは慣れればどこにでも行けるとか言っているけど、まだ無理がある……。
それに魔力消費も激しい……。
空間魔法は中級の扱いが難しい……無限収納は楽なのに「ゲート」は本当に難しい……。
『危なったね……デスキングクラブは見た目と違って速いから気をつけて、そしておめでとう! この前は数mだったけど。遠くまで行けたね!』
『それはどうも……』
魔力も消費したから無限収納からマナポーションを出して飲む――。
アイスハンマーはハサミで防がれ、それに素早いときたか……。
デスキングクラブは川から離れこちらに向かって来る――。
川を離れたら雷魔法を使うしかない――。
「――ライトニング!」
「――ギギギギギ」
頭上に雷を落としたがどうだ…………動きは止まったがあまり効いていない……。
「効いていないのか……」
『そんなことはないよ! 多分我慢強いだけだと思うよ!』
だったらもう一発お見舞いしてみるか――――。
「――ライトニング!」
「――ギギギ」
もう一発雷を落し――少し動きが鈍くなった、今しかない――魔剣を取り出し右手に持ち――。
「――――アイスソード!」
――氷魔法で氷の剣を創り、左手に持つ。
デスキングクラブに近づき右脚を狙う――。
「――――絶氷!」
「――ギギ」
――脚は切断され、氷漬けになる。
脚が切れるならそこを集中的に狙うしかない。
「――ギギギギィ!」
デスキングクラブは脚を切られたせいか、動きが速くなり――ハサミを振り下ろしてくる――。
もうそのハサミは恐れることもない、2刀を振り上げ――。
「――――豪氷刃!」
「――――ギギィ!」
――ハサミを弾き返し――ヒビが入った。
怯んでいるその隙に残り7本ある脚を「絶氷」で切り落とす――。
「――――絶氷!」
「――――ギギギギィ……」
デスキングクラブの脚は全部切り落とし、身動きが取れないようにした――泡を吹きながらハサミで地面を叩いてる。
再び雷魔法を使う――。
「――ライトニング!」
「ギギギィ……」
ハサミを叩くのを止めて弱まっていることを確認した。
「悪いな……これでおしまいだ――」
最後にとどめの氷魔法――。
「――――アブソリュート・ゼロ!」
――全身氷漬けにし、デスキングクラブを仕留めた。
魔力をかなり使って体が重い……。
そして魔剣が消えた……激しい魔力消費で具現化できなくなったか……。
『やったね、レイ! これでこの場所は安全になったね!』
「ああ……そうだな……」
周りにいるリバークラブはデスキングクラブが倒れたのがわかり、場所を移動している。
とりあえず大丈夫そうだな……あとはギルドに報告に行かないと。
『疲れているようだからアイシスに連絡したよ! そこに座ってなよ!』
「悪いけど……そうさせてもらうよ……少し休んだらデスキングクラブをしまわないと……」
さすがに魔力がないから無限収納にしまうことができない。
――すると鎧、ロープを着た数十人が来た……グロワールの冒険者か?




