393話 クセのある魔法
大学生に教えて、昼前の授業が終わった――。
大学生は疲れるな……。人数も多い……。
俺が休む暇もなくすぐ質問してきて困った……。
「疲れた……」
マイヤはスライムになり、溶けてぐったりしていた。
「フフフ……次が楽しみですこと……」
メアは疲れないからいいよな……。
というかマイヤも魔剣になったのだから疲れないのでは?
それはいいとして、マイヤがいなかったらかなり大変だった。
俺もソウタみたいに干からびる可能性があった。
そう考えるとソウタは1人だし大変だな。
まあ、発光した滋養強壮剤があるし心配はないと思うが。
「食堂に行くか」
「ご飯……行く……」
マイヤは【人化】して俺の手を繋いで急かされる。
まったく、食いしん坊だな。
食堂につくと、生徒から視線が――。
「「「スライムちゃん先生、一緒に食べよう!」」」
「えっ……? ちょっと――」
さっき教えていた女子大学生たちがマイヤを逃がさないように腕を組み、強制的に彼女らが座っている席に移動させられる。
「恩人様と……」
「まあ、たまにはいいじゃないか、仲良く食べろよ」
困惑してるが、マイヤのためである。しっかり教えているが塩対応で生徒を避け気味だ。
人馴れしていないし、この機会にちょうどいい。
まだ期間はたっぷりあるし、慣れさせないと。
「フフフ……人気者は大変ですこと……羨ましい限りです……」
メアは自分の時間は誰も近づくなと、威圧を出しているので、噓を言わないでください……。
俺たちは職員専用の席で食事をしながら次に教える――シェルビーがいるクラスを確認する。
その中で唯一、時魔法を使う男の子――クエスリークという子はアスタリカの孤児院出身だ。
身元はわからないが、ズイール大陸で赤ん坊の頃から捨てられたことはわかっている。
孤児院のために魔法を覚えてお金を稼ぎたいと言う目標があるらしい。
時魔法――「クロノアロー」を覚えているとのことだ。
職員たちは時魔法を使えないから教えられないと困っていた。
学校にとって大変な子が来たと思っている。
アスタリカの孤児院って、ヤーワレさんが面倒見ている子だな。
基本を覚えているのはすごいが、「クロノアロー」か……魔物に攻撃したら時間が進み老いて骨だけになるから、取る素材が少なくて実用性がない……。
しかも、強い魔物は老いもしないし、他の属性よりは弱い。
時魔法の攻撃はクセが強すぎて扱いが難しい。
冒険者の俺はあまり使わない、基本は「ヘイスト」と【混合魔法】くらいしか最近は使っていない。
「スロウ」は弱い魔物なら身体を遅くできるが、強い魔物は全然効かないし、あまり使っていない。
今なら大半の魔物に効くが、すぐ倒してしまうから需要がな……。
それにほかと比べて魔力の消費が多いから難しい。
まあ、「クロノアロー」を使えるならそれなりにあると思うが。
お金を稼ぎたいか……時魔法だけでは厳しいな、まだ最初のほうだし、ほかの魔法の適性もあるかもしれない、覚えたほうがいいと進めるか。
まずは「ヘイスト」「スロウ」の基本を覚えせてからだ。
食事を終えて、マイヤを呼ぼうとするが、今日の日替わりのロックバードの香草焼きを山盛りにして食べていた。
そして一緒にいる子は食べている姿にデレデレでした……。
「まだ……食べている……」
時間ギリギリまで食べてそうだな……。
食べ終わったら練習場に来るように言い、あとにする。
休憩も終わり、昼過ぎの授業を始める――。
「ではワタクシはあの子の面倒を見ます……。そこのあなた、闇魔法についてお教えしましょう……」
メアは魔法が使えないシェルビーを見てくれる。
俺も話があるが、みんなにある程度教えてからだ。
1年生には輝く玉――魔力で創った球体を適正がある属性を出すように指示をして、練習を始める。
ある程度コツを教えて、時魔法の適性がある茶髪の男の子――クエスリークの様子を見る
球体の中に時計を創造して針が動いていた。
ここまでできるとは意外だった。「クロノアロー」も覚えているのも本当かもしれない。
「つまらなそうだな、基本をやっても物足りないか?」
「いえ、そんなことはありません。けど……早く魔法を覚えたいのは本音です……」
「そうか、担任から聞いているが、「クロノアロー」を使えるみたいだな、あそこの的に当てくれないか」
「いいのですか!? けど、基礎しかやっていけないと聞きましたが……」
「できるのであれば俺は関係ないぞ。まあ、やってみてくれ」
「はい! では――クロノアロー!」
時の矢は的に命中をし――材質が木であるため、時間が経過して腐っていく。
まさか【無詠唱】も使えるのかよ……。
大人顔負けの威力で申し分ない、とんでもない子だな……。
「どうですか?」
「大したものだ。じゃあ、「ヘイスト」を教えるから練習してみるか?」
「お願いします、先生! ヤーワレさんの言うとおり優しい方だ」
やっぱりヤーワレさんの孤児院の子か。
「俺を知っているのか?」
「はい、ヤーワレさんがいつも、お話をしています。天使たちに優しくて責任がある方と言っていました。あと美味しい野菜を食べさせてくれてありがとうございます! 孤児院のみんなも喜んでいました」
ヤーワレさんらしいな……。
そういえば開拓のお礼に野菜を渡してのを食べたみたいか。
「そうかそうか、また野菜を持ってくるから期待してくれよ」
「本当に助かります。まさか先生の領地でトマトやキュウリがあるなんて驚きました。二度と食べられないと思いました」
ちょっと待て、普通に野菜の名前を言ったぞ……。
それに二度とか……。
「ほかのところで食べたことあるのか?」
「ち、小さい頃にですよ!」
「お前もまだ小さいだろう……。懐かしむ年齢ではないぞ」
「そ、そうでしたあはははは……」
苦笑いしてごまかしているな、まだ確信はないが。
ソウタみたいに鎌をかけるか――。
「話が長すぎたな、じゃあ、「ヘイスト」を覚えるためにある道具を使う」
「何を使うのですか?」
「ああ、これだ――」
俺は無限収納のから――。
「す……ストップウォッチ!?」
わかりやすい反応で助かる。
これで確信した――まさか俺以外に転生者がいるとはな。




