392話 育て親の確認
王様に聞くことによると――ブラントン・クレメスはズイール大陸のメデアコット近く――北側にあるシンガードの辺境伯で、王様の情報提供者でもあり、王子を王都に留学させようと帝王に提案した人でもある。
辺境伯はかなりの苦労人であり、帝王に荒れ地を強制に――今のシンガードを開拓を命じられ孤立していたとのこと、王子の母親でもある姉が処刑されたことにより、帝王に復讐を誓ったらしい。
ズイールの冒険者が反乱をしたときチャンスだと思い、冒険者と手を組み、シンガードを占拠され人質を装いながら協力しているみたいだ。
なるほど、内通者がいれば反乱も順調なのはわかった。
それと復讐のために王子を利用している面もある。
まあ、王子も承諾はしていると思うし、俺が突っかかる必要はないか。
その話なら黒い靄をつけた奴ではないな。
「――こんなところかな。得られる情報はあった?」
「ありがとうございます。ただ、おかしな点があります、シェルビーに黒い靄をつけた奴です。辺境伯と長くいたなら、その周りに犯人がいると思いまして」
「そういうことね。それなら大丈夫、彼の周りをいろいろと調べさせてもらったよ。僕の判断だけど、犯人はいないと思う」
「根拠があったのですか?」
「うん、怪しい動きもない人を雇っていたみたいだった。まあ、帝王に恨みがある者しか雇っていないのもあるからそこは大丈夫だよ」
やっぱり最初は警戒はしますよね。
じゃあ、辺境伯に託される前にかけられたしか考えられないか。
「納得しました。犯人は帝都にいるのか……」
「僕もそう思うよ。もしも周りにいたとしても僕は許さないよ……幸運な子を不幸にするなんて……」
王様は笑顔で言っているが、魔力が漏れている。
内心かなりのお怒りのようだ。
こんなに怒っているのは初めてかもしれない。
「それとね、クレメス辺境伯がシェルビーさんを預けるときに会ってね。別れ際まで「ごめん」って泣いていたよ。実の娘のように育てたなら寂しいよね。シェルビーさんも辺境伯を実の父のように思って別れるのは辛かっただろうね。だからね、僕は内戦が早く終わって、帝王には罪を償ってほしいよ。まずはメデアコットを占拠してほしいけど、まだまだ時間がかかる――応援には行けなく見守るだけだけど」
襲撃してもう3ヶ月以上は経っているな。
まあ、あそこが占拠されると大変なことがわかっている。必死で止めているのかもしれない。
「レイ君は心配しなくていいよ。話が長くなったね、そろそろ夕食の時間だし、食堂に行こう」
情報も聞けた。あとはシェルビーに聞いて治す準備をするか。
王様と食堂に向かい中に入ると――。
「あ……あああああ……」
ソウタが干からびて座って待っていた……。
「初日でバテてどうする。情けない」
ヴェンゲルさんは呆れていた。
騎士学校といえど、干からびるまでやらされるのは、ちょっとどうかと思う……。
「フフフフフフ……情けないですこと……。そんな情けないむっつりなお兄さんには特製の滋養強壮剤を渡しておきます……。グランドマスター、授業中に倒れたら無理やり飲ませてください……」
メアが渡したのは今までとは違う、毒々しく発光した滋養強壮剤だ。
いったいどう作ればこの色になる……。
絶対飲みたくない……。
「こんなバカに送るとは優しい嬢ちゃんだな。おい、テメェ、嬢ちゃんに感謝しろよ」
「あ……あああ……」
ダメだ、ソウタは理性を失っている。
「メアが作ったのか……?」
「いえ……リフィリアとメメットが作り上げた最高の一級品だそうです……。まだ数本は預かっております……」
最高の一級品って発光するのだな……。
あれを飲んで最悪なことが起きないことを祈る。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
職員室に入り授業の確認をする。
昼前は大学生2年生と3年生授業で昼過ぎは1年B組と1年C組を教える予定だ。
2年生はウォール系で3年生はナックル系の魔法だ。最初から大学生は大変だが昼過ぎは1年生だ。
まだ魔法を習って間もないしかなり楽だ。
名簿を見ると、B組にはシェルビーの名前があり、適性はなしと書いてあった。
この授業は辛いと思うが様子を見ないといけない。ほかにも――ん? 適正で時魔法って子がいるぞ。
俺たち以外で使える人は見たことないし、初めてかもしれない。
まだ適正段階だからなんとも言えないが担任に確認してみるか。




