390話 取り除く方法
休憩が終わり授業が始まった――。
ブレンダがいるクラス――2年E組の50名に教える。
昼前の授業と同じように教えた。
みんな真面目で教えたとおりにやってくれる。
「氷よ、敵を射貫て――――アイスアロー!」
ブレンダを見たが前よりは速く、鋭くなっていた。
これはルルナより早く覚えそうだな。
「お兄さん、どう?」
「このまま練習すれば完璧に覚えられるぞ」
「やった……覚えられたら次は「アイスショック」教えてね」
ほっとひと安心していた。ブレンダにとってかなり大変な道だっただろう。
少しくらい喜んでもいいような気がする。
「ところでお兄さん、悩んでいるみたいだけど大丈夫?」
「いや、そんなことはないが」
「それだよ、お兄さんは平気で言っているけど、顔に出ているよ」
そんなに顔に出るほうではないが……。
ブレンダが勘が鋭くなっているかもしれない……。
シェルビーに黒い靄を取り除くことを考えていた。
俺には【浄化】のスキルがあるし、もしかしたら効果があるかもしれないと。
だが、実際に使ったことがないから効果があるわからない。
もし、効かなかった場合、魔王を呼んで血――万能薬を分けてお願いしようか、いろいろと考えていた。
「悪いな、ちょっとな……」
「悩んでいたら1人で抱え込まないで、私が相談できるかわからないけど、言ったほうが楽だよ」
心配されるほど顔に出ていたのか……。
まあ、考えすぎていたのもあるか。
シェルビーを治すのに変わりはない、今は教えるだけに集中しなければ――。
「相談するほどではないから大丈夫だ」
「そうなの? じゃあ、悩みが解決したら放課後に魔法を教えてね。本当は今日から教えてほしかったけど、そっちを優先してね」
まさかそこまで気を遣ってくれるとは……。
ブレンダは思っているほど子どもではなくなったな。
「わかった、できるだけ早く解決するから、ルルナにも伝えてくれ」
「うん、お兄さんも無理しないでね約束だよ」
ブレンダは笑顔で返してくれた。
さて、気を取り直して呼んでいる生徒に教えないと――。
「皆さん……ワタクシに注目してください……。気分が良いので特別な魔法をお見せしましょう……」
唐突にメアが言い出すと生徒たちは集まってくる。
気分って……頼むから変な魔法は発動しないでくれ……。
「フフフ……集まりましたね……。では目をそらさず見てください――」
メアは闇と空間の【混合魔法】を使う。
ちょっと待て、嫌な予感しかしないのだが……。
「――――サモンゲート……」
地面に手を当て、魔法陣が浮かび、周囲は黒い煙が舞う。
やっぱり……。最近俺とメアが覚えた【混合魔法】だ。
任意の者を強制に呼び出す魔法だ。だたし、呼ぶ相手が知らない場所にいるなら発動はしない条件となっている。
この前――火山騒動で肝心な人がいなくて苦戦した教訓で覚えた。
「ゲート」よりかなり魔力が消費するが、有利な人をすぐに呼び出せるメリットがある。
これ……遊びで覚えたのではないのだぞ……。
いったい誰を呼んだ……?
煙が消えると――いたのはぺたんと座ったマイヤだった。
生徒たちは驚いたとともに喜んだ。
「ここ……どこ……?」
だろうな……。マイヤは無表情で辺りを見渡し、俺に気づくとスライムの姿になり俺に飛びついてきた。
「恩人様……ここは学校なの……?」
「そうだが、わかるのか?」
「うん……なんとなく……恩人様の記憶でちょっと……」
ああ、魔剣になったから記憶も共有できるしわかるか。
「そうか、それでメア、急にマイヤを呼んだのはどうしてだ?」
「助っ人として呼びました……。ワタクシ……光魔法は覚えていないので、主様が忙しいところ光魔法を教えてほしい生徒が来ては困ります……。ですので光魔法を使えるマイヤを呼びました……」
「一理あるが、呼ばなくても大丈夫だぞ……」
「ですが、主様に大変役に立ちます……。ご理解ください……」
役立つ? ってまさか、【浄化】のスキルを持っているから呼んだのか?
俺は気づくと、メアは満面な笑みだった。
やってくれるな、もし、黒い靄が強力だったとしてもマイヤと一緒に使えばなんとかなると思ったみたいだな。
「まだ満足できないようでしたら、あの絶壁を――」
「いいよ、十分だ。呼んでくれて助かる」
魔王を呼んだらかなりのカオスだぞ……。
冗談で言ったと思うが。
「フフフ……お役に立てて光栄です……」
無理やりだが、シェルビーを助けるためだ、マイヤには我慢してもらうか。
「マイヤ、事情により、一緒にいてくれないか?」
「わからないけど……そうする……。でも……おいしいものはちょうだいね……」
食べものあげればなんでもいいらしいですね……。
「お兄さん……女の子からスライムになったのって……どういうこと……?」
ブレンダはあまりの出来事に追いつかないみたいだ。
まあ、そうだよな……しょうがない。説明するか――。
みんなにメアが使った魔法、マイヤは【人化】できるユニークなスライムと説明をして、納得してくれた。
こうしてマイヤが加わり、授業を再開する――。




