388話 王子の妹
「はじめまして、賢者様……。私はシェルビー・クレメスと申します……。従者2人を助けてくれたこと、心から感謝いたします……」
頭を下げてお礼を言う少女は髪が白く、色白肌でとても王子とは似てなかった。
片親が違うならわかるが、家名も違う。何か事情があるのか?
別の問題として魔力が全くない……。
胸の奥に黒い靄がかかって魔力が循環できていない……。
嫌な予感しかしない……。
このままだと魔法どころか、スキルも使えず身体に影響がある。
「ああ……よろしく……ところでこの子……魔力が……」
「さすが賢者殿、シェルビーは生まれたときから魔力がない――マナシという大病を背負っている。いろいろと思うことがあるが、シェルビーも学びたいと言って、最近入学した。陛下のご厚意に感謝している」
マナシ? 稀に魔力がない子が生まれることがあると聞いている。
言わば普通の人間だ。
だが、この子は魔力循環できていないだけだぞ。
「ホルダーさん、この子はマナシに見えますか?」
「はい、魔力を感じれず、空のままです。残念ながらマナシの大病を負っていますね」
わかるかのように首を振って言う。黒い靄が見えないのか?
噓を言っているようにはみえない。
「『メアはどう思う?』」
「『紛いものが邪魔して見えます……。闇でない得体の知れないもので気に食わないですこと……』」
メアはわかるようだ。
俺たちには見えてほかのは見えないということは、なんらか小細工をしているみたいだ。
情報が足りない、確認してからこのことは話したほうがいいな。
「悪いこと言ってすまない」
「いいえ、慣れているのでお構いなく……」
そうは言っても悲しそうな顔をしている。
なんとなくだが、王子と一緒に来たのは察した。
だが、おかしな点がある、仮にシェルビーはどうして王族でありながら小細工されている?
何か不都合なことがあるのか?
「シェルビーはまだ食べてなかったな、友人と食べに行きなさい」
「はい、では賢者様、私はこれで……授業、楽しみにしてます……」
お辞儀をしてこの場から去る。
王子は気を遣ってくれたな。
これ以上あの子がいても辛いだけだ。
聞きたいことは山ほどある――。
「王子、時間はあるか?」
「問題ないが、シェルビーのことか?」
「そうだ、職員室に来てくれないか?」
「わかった、賢者殿にシェルビーのことを知ってもらわないといけないしな」
さすがに周りに人がいると話せないことがあるから職員室にした。
俺は急いで食べて、王子と一緒に職員室に入り、俺が借りている個室に案内をする。
「気に食わない……あの紛いものはつまらない……。闇でもないあれは恥でしかない……」
メアは移動しているときブツブツと独り言を言っている。
わからなくもない、あの黒い靄で闇魔法で細工されてないことはわかる。
珍しくメアがいらだつのは、相当嫌らしい。
なんとなくあれはこの世にあってはいけないものだとはわかる。
俺たちで解決できるかわからないが、まずは王子に事情聞かないと。
さて、何から聞こうか――。




