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38話 その話は聞いていない……


 ――3日目。


「お兄ちゃん、起きて!」


 ブレンダは腹をさすり、精霊は顔を叩いて起こしてくれる。

 もうそんな時間なのか……。


「……おはよう、もう朝食の時間か……」


「おはよう! まだだよ!」


 まだなのか……そういえば今日は早く行くって言ってたな。

 それにブレンダの髪ボサボサだ……。

 無限収納からヘアーブラシを出した。


「髪ボサボサじゃないか、ブレンダここに座って」


「うん、わかった!」 


 ブレンダをベットの横に座らせてヘアーブラシで髪をとかす。

 毛量があるからゆっくりとかさないといけない。


「痛かったら言ってくれ」


「全然だいじょうぶだよ!」


 髪が絡まないようにゆっくりとかし、サラサラな髪になった。


「これでよし、もういいよ」


 ブレンダは部屋に置いてある鏡の方に向かい、自分を見た。


「うわ~い! ありがとう、お兄ちゃん! 髪がキレイになった!」


 喜んでいて良かった、やっぱり女の子は髪が大事だな。


『うん……やっぱりレイに母性を感じる……』


 エフィナの言っていることはスルーした。


 アイシスが部屋に来て、食事の用意ができたみたいで食堂の方に向かう。


 みんなそろって今日の朝食はアイシスが作ってくれたパン、チキンピカタ、香辛料を加えた野菜のチキンスープだ。

 どれも美味しくていつも通り好評でした。


 朝食を食べ終えて、村を出る。


 次は50㎞先にある商都、グロワールに向かう。

 近くに大きな湖があり、そこで獲れるオレンジサーモンが有名なはず。

 オレンジサーモン…………鮭……イクラ……絶対買うしかない。

 カルムには魚なんて手に入らないからここで大量購入だ。

 

『また良からぬことを考えてたね』


 エフィナには全てお見通しだった。

  

「やった! 次はグロワールだ!」


 ブレンダは大はしゃぎだ。そこはそんなに楽しいのか。


「楽しそうだな」


「うん! ルルナちゃんに会えるから!」


 ルルナちゃん? 貴族の友だちかな?


「あのぼっちゃま、ルルナ様はサーリト・ルアーヌ伯爵様の令嬢様でございます」


 ……えっ? 伯爵の令嬢? 伯爵の令嬢をちゃん付けでいいのか……。


「まさか……伯爵様のとこに行くのか?」


 セバスチャンはメガネをあげて光らせた。


「さようでございます。挨拶しないと失礼ですので……それにルルナ様はお嬢様と同じ年齢で魔法学校へ一緒に通います」


 それなら仕方ない。まあ、予定だとそのつもりだったか。 

 

「それじゃあ、俺たちは適当にどこかで待機していればいいのか?」


「いえ、ぼっちゃまとアイシス様も一緒に行くのですよ」


「なんで!? 護衛も行く必要ないだろう?」


「伯爵様はぼっちゃまとアイシス様が来る日をとても楽しみにしてます」


 嫌な予感がしてきた……。


「ちなみに誰が俺たちのことを言ったのか?」


「もちろん、旦那様でございます」


 やっぱりな……伯爵様とご対面するとかもう面倒なことしか起きないだろう……。


「拒否権は?」


「ございません。もう来る前提で話を進めております」


 最初からそのつもりだったか……なぜ事前にそれを話さないのだ……。

 話したところで逃げるからギリギリまで言わなかったのか。

 

「けど伯爵様に会ったとしても何も接点とかないのだが……」


「そのことですが、伯爵様は旦那様、ザイン様、スール様と苦楽を共にした中でございます。簡単に言えば戦友でございます。それはぼっちゃまとアイシス様が気になるのも当然のことです」


 ちょっと待て!? ザインさんとスールさんも戦友とかいったい過去に何があったんだ!?


「伯爵様と戦友って……もう訳がわからない……」


「気持ちはわかります。ですがこれだけは言えます。伯爵様は旦那様、ザイン様、スール様と親しいのでぼっちゃまは身分関係なく接しても大丈夫でございます」


 だからブレンダは令嬢にちゃん付けできるのか……。


「頭が痛くなってきた……」


「大丈夫だよ、お兄ちゃん! ルルナちゃんのお父さんはやさしい人だから!」


「ハハハ……そうか……」


 これだとグロワールのギルドでロックバードの素材の換金は無理だな……あとそこのギルドマスターは知っている人だから挨拶しに行こうと思ったけど、時間に余裕がない……。

 今回はしょうがないか……。


「言い忘れていましたがグロワールには2日程滞在する予定ですのでお願いします」


 おっ、時間があるな、それならギルドに行ける。


 ――休憩を挟みながら馬車に揺られ4時間以上経過した。


 あと10㎞で着くみたいだ。


 すると【魔力感知】に反応があった――結構いるな……。

 川沿い辺りだ。

 街道には来ていないから大丈夫だが、とりあえずセバスチャンに言うか。


「セバスチャン、川沿に大量の魔物の反応がある」


「川沿いですか? それに大量……」


 深刻な顔をしている。ちょっとヤバいのか。


「ヤバそうなら行って来るけど」


「いえ、こちらには問題ありませんが恐らく商都には問題があります……」


「何か妨害でもする魔物か?」


「私の予測ですが……Cランクの魔物、リバークラブだと思います……そうだとすれば大変です」


 蟹だと!? まさかここは蟹天国か。


「大変? 大量発生しているからか?」


「まだこの目で見ないとわかりませんが……生態系が崩れますね……」


「生態系って……まさかオレンジサーモンか?」


「その通りです。このままだと不漁が続く可能性があります」


「えっ……お魚食べられないの……?」


 ブレンダが悲しんでる……楽しみにしていたのか。


「お嬢様、まだハッキリとはわかりませんが大丈夫ですよ。もしそうだとしてもギルドが対応しますのでご安心を」


「でも……」


 それならいいのだが、明らかに不自然だ。街道には俺たち以外の馬車や人が見当たらない。

 グロワールが近いっていうのに人が街道にいるはずだ……。

 それに今さっき反応したが、奥の方にエグいのがいるみたいだな……。

 アイシスも気づいたか。

 街道には問題ないみたいだが万が一のこともある、仕留めに行くか。

 

「セバスチャン、リバークラブは美味しいのか?」


 リバークラブはあまり知らないから毒を持っているか一応確認する。

 しかし、今世で蟹のことを調べていないのは盲点だった……。


「もちろんでございます。オレンジサーモンを食べているので美味しいですよ」


 よし、それなら仕留め方も決まった。あまり傷をつけないようにする。 


「わかった、それじゃあ確認の為、俺が行くよ」


「わかりました。ぼっちゃま気をつけてください」


「お兄ちゃん、気をつけてね!」


「うん、アイシスはみんなをよろしく頼むよ」


「わかりました」


「それと、精霊は今回はついて来ていいよ」


 それを言うと精霊が大喜びして顔をスリスリする……それは終わってからにしてほしい……。


 精霊と一緒に馬車を降り、反応がある川沿いに向かう――。

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[気になる点] えぇ...依頼なのに内容偽ってたとかヤバいじゃん...
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