377話 気まぐれなギルドマスター
「あの……リリノアさんがいる場所知っていますよ……」
「あの気まぐれエルフを知っているのですか!?」
「確信はないですが、確認はしますね」
昼頃に消えたって言っていたし、一日中走っていれば普通に着いているはずだ。
俺は魔道具でザインさんに連絡をする――。
『――すまん、忙しく手が離せない……』
「ザインさん、俺です――レイです」
『おお、レイか、久しぶりだな……。悪いが、話せる状況ではない……』
「もしかして、リリノアさんがそこにいますか?」
『よくわかったな……。だからあとにしてくれ……』
はい、予想通りでした。
やっぱりザインさんのとこにいたか。
本当にいるとは……カルムに着くの早すぎだろう……。
「そのリリノアさんに用があります……。少しだけでもいいので代わってくれませんか?」
『リリノアに? わかった……』
『何よ、ワタシに用があるなんていい度胸ね。ザインちゃんとの邪魔をしないで』
「リリノアさん……のんきなこと言っている暇はありません……」
俺は魔力を出して怒っているローズさんに代わった。
「リリノアさん……どういうことです……? なぜ講師であるあなたがサボっているのです……?」
『その声は……げっ、理事長……。ご機嫌いかが……?』
「いかがではありません! なんで王都から離れているのです! 早く戻って来てください!」
『えぇ~、ワタシあと1ヶ月も講師するなんて、嫌よ~。ザインちゃんに会いたくて我慢できなくて放棄しちゃった』
リリノアさんらしいな……。というか1ヶ月もあるのか……。
どれだけギルドにいたくないのだよ……。
「契約書にも署名したので、絶対です! 終わったら恋人に会う暇ならいくらでもあるでしょう!」
『おい、まだ俺は恋人ではないぞ!?』
ザインさんそこはツッコミところではないです……。
あれだけイチャイチャしてまだ付き合っていないのは意外ですが……。
『ザインちゃんは黙って、理事長……ワタシたちの恋路を邪魔しないで! ワタシとザインはもうすぐ結婚するの! 邪魔をするなら講師なんてやめるわ!』
逆ギレしてどうする……。自分勝手で決められるものではないぞ……。
本当に困ったエルフだ。
「契約は絶対です! あなたが講師の中でも1番人気ですよ! 楽しみ待っている生徒もいるのですよ!」
『そんなのどうでもいいわ。楽しみにしている人には残念ね』
他人事のように言うな……。
「じゃあ、なんで講師をしたのですか!?」
『そんなの決まっているじゃない、ギルドにいるより楽だからよ、小遣い稼ぎもできていいしね。生徒が好きで講師をやる人はいるけど、ワタシはそんな情なんてないわ。ザインちゃんと一緒に仕事するほうが1番いいもの』
ここまでくると一歩も引かないな……。
ローズさん、ショックで固まらないでください……。
『ワタシがいなくても十分やっていけるわよ。そうだ、代わりにレイを雇ってちょうだい。レイは校内で「スタンピードの英雄」と言われているし、喜ぶわよ。レイこれはワタシからの命令――代わりに講師をやってね。それじゃあね――』
「ちょっと勝手に何を――」
俺が言おうとすると通信が切れる……。
勝手すぎるだろう!? 契約しているならしっかり最後までやれよ!?
本当に気まぐれエルフだな……。
さて、ローズさんはどうする……。
1人いなくなったとしても運営状況に支障がないと思うが、忙しくなると思う。
「レイさんお願いがあります……。あの気まぐれエルフの代わりに講師をしてください! お願いします!」
えぇ……なんでそうなる……。




