363話 火山調査⑥
さすがに魔力がなく、膝をついてしまう。
マナポーションで回復――。
「ダンナ、まだ終わってないぞ!」
フランカの声で振り向くと――液体状になったマグマが俺を呑みこもうとする。
魔力反応もなかった、邪石を壊してもまだ動くとは最後の悪足搔きか……。
油断してしまった……。
魔力がない状態で喰らってしまえば大火傷どころでは済まされない……。
マズい、間に合わない――。
「マイヤちゃん!」
そのとき、マイヤが大きな巨体を揺らして俺の方に飛んできた。
そして俺を包み込みマイヤの液状――中に入り、俺を守ってくれる。
マイヤは身体は蒸発し、耐えている。
普通なら早く蒸発してしまってなくなるが、マグマの熱に負けないで受け止めている。
魔力を使って受け止めているのか……スライムが魔力を使うのはあり得ないことだ。
本当にマイヤは特殊だ。
だが、徐々に身体が小さくなっていき、抑えきれない。
「マイヤ、大丈夫だからやめてくれ……」
それでも俺の言うことを聞かずに耐えて、マグマを消した。
俺はマイヤのおかげで無傷で済んだが……。
「マイヤちゃん、しっかりして!」
ルチルが駆け寄り、手のひらサイズになったマイヤにポーションをかけた。
しかし、痙攣をして良い状態ではなかった……。
『ルチル……残念だけどマイヤはもう……助けられないよ……』
「そんな……マイヤちゃん……」
ルチルはマイヤをすくい上げえて抱きしめた。
なぜ俺を守ったのだ……? そんな浸しい仲ではないぞ……。
こんなことで死なせてたまるか、助かる方法がまだある――。
――――ゴゴゴゴゴゴゴ――――。
再び地響きが鳴り、火山の中にある邪石の反応が強くなった。
また何か来るのか!? このタイミングでやめてくれ、これ以上の戦闘は無理だ、フランカに頼んで応援を――。
すると、大きな衝撃音が聞こえ、邪石の反応がなくなった。
えっ? どういうことだ?
また地響きが起きると――火口から大量のマグマが流れて噴火が始まった。
このタイミングで噴火はおかしい……まさかサラマンダーを倒したらもう一つの邪石が作動する起爆装置だったのか……。
ただ噴火するのはいいが、マグマの量がおかしい……勢いよく流れて数分も経たずに俺たちの方に来る――距離がある領地でも流れ込んでくる量だ……。
ここで食い止めなければ被害が拡大する。
「ダンナ、戻るぞ――」
「待て、ここで止めないと領地が危ない……それに周辺にも悪影響が……頼めるか……?」
「わかった、なんとかしてみるぜ。アタイの力だけでは止められない、ルチ助お前も手伝え!」
「…………」
フランカの返事に答えなく、マイヤを抱いたままだった。
「チッ、しょうがない、アタイができることはする、ダンナはシエルに乗って領地で待機してくれ」
「いや、俺もやる……。すぐに魔力を回復させる……」
「無茶だ! 底をついているのに無理をするな!」
「大丈夫だ……それまでに耐えてくれ……」
「わかったよ……けど、絶対に無理するなよ。ソウタまだ魔力があるか?」
「ああ、さっきマナポーションを飲んで半分以上はある」
「よし、シエル、壁系の魔法を使える人を呼んでくれないか?」
「任せるのじゃ!」
シエルはすぐさま領地に飛んでいった。
「頼むぜ、あとは念話で言わないと――」
『それならボクが言ったよ、リフィリアとメアが急いで飛んでくるってさ』
「アネキ助かるぜ」
みんなが来れば止められる。
フランカとソウタは前に出て、「アースコントロール」で周囲に深い穴を開け、その中に「メイルシュトローム」で水を入れる。
「ソウタ、早くしてくれ! もうすぐ来るぞ!」
「ああ、これで終わりだ」
「よくやった――――アースウォール!」
穴の中に水が満タンになり、ソウタは急いで後ろに下がり、フランカは周囲に岩の壁を創った。
これならみんなが来るまでに時間が稼げる。
俺もマナポーションを飲んで止めなければ――。




