362話 火山調査⑤
「――――ギャァァァァ!?」
雄叫びをあげながらサラマンダーは身体からマグマを霧みたいに放出し、周囲は温度が上がっていき、氷の領域が解除された。コイツ、なんでもアリだな……。
「エフィナ、サラマンダーの弱点は氷と水でいいのだよな?」
『そうだね。邪石のせいで耐性が――いや、まったく効かないと思う……』
「おいおい……なんの冗談だ……。アイシスを呼んでも無駄なのか……?」
『悔しいけど、そうだね……』
「アタイたちでもなんとかできないのか……」
「氷と水が効かなくなっただけだろう? だったら、妨害するまでだ――」
俺は氷の魔剣から闇の魔剣に代えて再びサラマンダーに向かう――。
「――――ギャァァァァ! ――――ギャァァァァ!」
再び雄叫びあげると邪石が輝き始め――サラマンダーの身体が液状――全身マグマと変化する。
『レイ、これまでとは違う、気をつけて!』
何があろうと闇の魔剣では無意味――【魔力解放】でゴリ押しだ――。
「――――闇刃・一閃!」
腹を方を真っ二つにして威力もあり、勢いよく吹っ飛んでいく――。
魔石は破壊したが、邪石は無傷のままむき出しになった。
だが、サラマンダーの身体は再生し始める。
妨害できないのかよ……。まだむき出しの状態ならチャンスだ。
闇魔法を使う――。
「――――ダークブレイク!」
左手で邪石を破壊する感覚で握り締め――邪石は黒い靄に包まれて爆発する。
煙が消えると、傷一つもなく、身体が再生して元通りになる。
【破壊者】のスキルも発動しているのだぞ……ダメなのか……。
『レイ……サラマンダーの魔力が増え続けている……それに……』
エフィナの言うとおりだ、魔力と同様に身体もひと回り大きくなっている。
サラマンダーの周囲の地面は溶けてマグマに変わっていき、まるで歩くマグマ状態になった。
ただでさえ厄介なのに、これ以上大きくなるのはごめんだ。
無限収納からマナポーションを3本出して、一気に飲む。
【魔力解放】でかなり消費して1本だけではもの足りない。3本飲んでも少ししか回復しない。
チートスキルだが、代償として減り続けるデメリットがある。
魔力が尽きる前に終わらせたいところだ……。
「ダンナ、すまない……援護することしかできなくて……」
「大丈夫だ、これから大暴れするから援護はしなくていいぞ。俺がぶっ倒れたら運ぶ準備をしてくれ」
「いいのか…………わかった、アタイの分も大暴れしてくれよ」
俺は頷いて闇の魔剣を解除して、雷の魔剣を持ち、左手には風の魔剣を出した。
フランカに援護させないのは魔力温存させるためだ、【魔力解放】で魔剣を2本使うのは初めてだ。
途中で倒れる可能性はある。サラマンダーを倒せなくて動けなくなったら今はフランカしか頼れないからだ。
まあ、倒れる前に終わらせるけどな――。
「――――ギャァァァァ!」
サラマンダーは大きく口を開けてマグマを放出する。
さっきのより威力があるが、俺には関係ない――。
「――――ダークホール!」
俺は目の前に空間から黒い亀裂を出し、放射されたマグマを飲み込ませる。
いくら強力な攻撃でも違う場所に転移できるなら無意味だ。
放射が終わり、俺は再びサラマンダーに向かう――。
サラマンダーは口を開けたまま今度はマグマ玉を吐いて俺に襲いかかる。
残念だがもう攻撃は通用しない――風の魔剣でマグマ玉を切り、真っ二つにする。
水と氷でダメなら風圧で切ればいい話だ。
弱点ばかり考えてしまって判断できなかった。
液状になった奴なら風は有利だ。
連続で吐いてくるマグマ玉を切ったり、回避して近づいた。
サラマンダーの周囲の地面はマグマで近づけない状態だが風の魔剣で全身風を纏っている状態で地面についても風圧で防いで普通に歩くことができる。
「――――ギャァァァァ!」
サラマンダーは液状になった足で地面を叩きだして、マグマが飛び散る。
そんなのはもう効かない――。
「――――疾風迅雷!」
風と雷を剣に纏い、全身を切り刻んでいく――。
闇の魔ほど威力はないが、動き鈍らせるはできる。
「ギャァ!?」
ん? あまり深手は負えていないが、切った箇所の再生が遅いぞ。
それに予想以上に動きが鈍くなっていた。
『もしかして――レイ、雷魔法を使って!』
「わかった――――サンダーボルト!」
エフィナの言うとおりに雷魔法――上空から稲妻を落した。
サラマンダーはまったく動かないままで、身体は電気が放出できずにビリビリと流れていた。
感電しているのか?
『雷は効くみたいだ! 今がチャンスだよ!』
まさか雷が効くとはな。
いや、液状になったから電気を通しやすくなった感じか。
そんなことはどうでもいい、有利なら邪石を破壊できる。
すべての魔力を2つの魔剣に使う――。
「――――雷風乱華!」
「――――ギャァァァァ!?」
液状の身体を風圧でえぐり、雷で感電させ、再生を遅し、切り進んでいく。
もう少しだ――邪石を見つけ、そのまま切っていく。
硬いな……だが、破壊できる範囲だ。
渾身の一撃を喰らわしてやる――。
「――――雷迅絶破!」
稲妻の速さの如く、ひと振りし――邪石は豆腐のように簡単切れて破壊できた。
そのまま突き進み、液状の身体から抜け出す。
サラマンダーは再生をせずに地面にぽたぽたとマグマが垂れて崩れ落ちる。
少ししか魔力がない……結果として倒せたのはいいが、まだ残っている。
火山の中にある残りの邪石だ。
さすがにすぐにはいけない――少し休憩してからにしよう。




