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358話 火山調査①



 ――3日が経過した。



 どこを捜してもマイヤはいなかった。

 ここまで見つからないのはかなり遠くに行ったかもしれない。

 みんな諦めかけていたが、ルチルは夜中まで捜していた。


「マイヤちゃん……どこに行ったの……」


 こればかりはしょうがない、スライムの行動は予測できないしな。


 だが、朗報もあった。噴火していた山はある程度収まり、調査できる範囲になった。

 マイヤ捜索はいったん中断して、そっち優先する。


 メンバーはソウタに、熱耐性のあるフランカ、プロミネンス、シエル、それに――。


「アタシも行く! マイヤちゃんはあそこの山に絶対にいる!」


 っとルチルも行くことになった。いや、どうだろう……。

 噴火が活発な周辺にスライムが行くのはあまりにも無謀だ。

 蒸発して跡形もなく消えるだけだ。

 知性があるマイヤなら近づかないと思って周辺は捜さなかった。

 まあ、危険もあったから避けていたが。


 それを言っても俺たちと行くみたいだ。

 ルチルが気が済むならついて来てもいいが。


 シエルに乗り山に向かう――。


 

 ――十数分。



 山の近くまできた――噴煙と灰で視界が見えづらくなっている。

 地上は火山灰が人を余裕で埋まるくらい、深く積もっていて灰一色の世界だ。


「マイヤちゃん! いたら返事して!」


 ルチルは大声で叫ぶ。

 さすがにここにはいないだろう、それに――。


『スライムって返事するっけ?』


「するわけないな」


『そうだよねー。返事より、こっちにおいでが正しいよ。まあ、シエルに乗っているから無理だけど」


 っと、エフィナとフランカは的確にツッコミを入れる。

 

「エフィナとフランカの言っていることはわからない! マイヤちゃんは絶対に返事するもん!」


『なっ……理解に苦しむ……』


「ムキになるなよ、ルチ助……みっともないぞ」


 いつもどおり反抗する。

 まあ、返事をしてくれたらこちらも助かるが。


 ん? 灰が積もっているのに大きく削れて通り道になっている箇所がある。

 大型の魔物が移動したのか? それにしても足跡もまったくなく、キレイな道筋だ。

 少々気になり、シエルに低空飛行してその跡を追うように言う。


 大型の影が見えて…………おいおい……どれだけ食ったらこんなに大きくなる……。

 ベヒジャミ並みの大きさとなったマイヤがむしゃむしゃとロックバードらしき魔物を食べていた。


「ま、マイヤちゃん!」


 ルチルは飛び降りてマイヤのほうに向かい、そのまま抱きつく。


「もう心配したのだから! 次から行くときはちゃんと言ってね!」


『感動の再開で悪いけど、スライムは言葉を――』


「エフィナなんて知らない!」


『なっ……理解に苦しむ……』 


「アネキ……ドンマイ……」


 エフィナもエフィナで懲りないな……。

 それは置いといて、まさかここにいたとは予想外だ。

 マグマが流れてもおかしくないところでよく無事だ。


 というか大きくなり過ぎだ……。なんとなく察した、火山の影響で息絶えた魔物を食べにここまで来た可能性はある。

 じゃないとここまで大きくならない。


「見つかったのはいいが、どうする?」


「大丈夫だ。ルチル、「ゲート」を使ってマイヤと一緒に領地に戻ってくれ」


「うん! さあ、マイヤちゃん、一緒に帰ろう!」


 ルチルの目的はマイヤ捜索だ。見つかったらすぐに戻るとは思った。

 あと、メメットから体液を採取して浄水液を作ってもらわないといけないしな。

 それを言うとマイヤはルチルから離れていく。


「なんで!? 帰ったらおいしいご飯が待っているから早くおうちに帰ろう!」


 そう言って、ルチルは近づこうとするがまた離れていく。

 「おいしいご飯」でも釣られないとはどうした?


『もしかしてここの魔物の死体を食べたいじゃない?』


 エフィナが言うとマイヤは飛び跳ねる。

 ええ……味を占めたか……。

 まあ、こんなに大きくなるともの足りないよな。

 というかエフィナ、マイヤにも念話送っていたのか。

 

「そうなの!? マイヤちゃん、まだ食べたいの? じゃあ、食べ終わったら帰ろう!」


 マイヤは飛び跳ねるのをやめると、手に変形をして山の方を指す。


『山の方においしいのがあると思ってそっちに行きたいのかな?』


 再びエフィナの発言でマイヤは飛び跳ねる。

 ここでももの足りないないのか……予想以上の大食になったな……。

  

「マイヤにとって山は厳しいぞ……。蒸発して原型がなくなる……」


「そうだよマイヤちゃん、あっちに行っちゃうと死んじゃうよ。ここで我慢して!」


 俺とルチルは反対だ。あまりにも無謀だ。

 だが、マイヤは身体を小刻みに震わせて嫌なそぶりをする。

 言っても無駄なら強制送還するしかない。


「っと思うけど、アタイから見ると大丈夫だと思うぜ。マイヤも加護が付与されているかしらないが、少なくとも火耐性はあるぞ。ここの周辺で生きているなんて不思議なくらいだ」


 フランカの発言で飛び跳ねた。

 

 確かにここ周辺は熱波にやられて普通の魔物は住めない環境になっている。

 それに……この環境で大きくなるのもあり得ないか。

 ……強制送還してもまたこっちに行きそうな気もするな……。

 しょうがない、マイヤが満足するまで好きにさせる。


「わかった、ただし、条件がある――マイヤは絶対に俺たちから離れるな。それと火山近くですぐ蒸発するなら強制的に戻ってもらうことにするがいいか?」


 そう言うとマイヤは高く飛び跳ねた。

 まさか理解しているな……知能も上がっているようだ。


「ということだ。悪いがルチル、危なかったら戻るように」


「わかった! マイヤちゃん、約束は守ってね!」


「それはいいのじゃが、大きすぎてマイヤを乗せることはできんぞ。【身体強化・変】でも限度があるのぉ……」


 さすがのシエルでも無理がありますよね……。

 風魔法を使って積もった灰をかき分けて進むしかないか。


 すると、マイヤが前出て積もっている灰に前進をする。

 灰は体内に入り込み、一瞬で消えていった。

 まさか取り入れながら進んでいたのか……。

 それもすぐ消化して平然としている。

 今のマイヤから体液を採取すれば強力な浄水液が完成できるはずだ。

 

 なんだかんだ浄水問題は解決しそうだ。

 

 マイヤを先頭にして俺たちは山の方に進む――。

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