357話 スライムの行方
領地に戻ると、周りは少しざわついていた。
温泉が濁り始めて温度が高めになったことだ。
メメットが水質を調べた結果、幸いなことに身体に影響はなく普通に入れることだ。
領地にも影響があると思ったが、まだマシのようだ。
昼食の時間にルチルが食べに戻ってきたが――。
「マイヤちゃんがどこにもいない! なんで!?」
マイヤが見つからないようだ。気まぐれなスライムだが、ご飯を食べに絶対戻ってくるが珍しいな。
しかもルチルが見つけないのも珍しい。
「火山灰の影響でどこか隠れていると思うぞ。食べたらまた捜してみたら?」
「そうする! シノちゃん、手伝って!」
「ワン!」
ルチルは急いでご飯を食べてシノの背中に乗って捜しに行った。
俺としても予想外なことだ。
マイヤがいないと浄水液の開発が進まない。
たまたま今日は遠出したと考えられるし、心配する必要はない。
もし火山灰の影響があるなら降り積もっていない場所に移動した可能性はある。
領地は「エアリアル・リフレクト」で守られているから、安全だと思い、そのうち戻ってくるだろう。
しかし……肝心な活火山調査ができないのは困った……。
勢いよく噴火してマグマが流れているのがハッキリと見える。
まあ、領地に流れてくるほどの勢いはないのは安心だが。
リフィリアにここを出る前に山が噴火したことがあるか聞いたが一度もないと言う。
今回は稀と言うことか。
夕方になり、灰まみれでルチルとシノが戻ってきた。
「いない……」
「今日はしょうがない、明日見つかるさ。俺も何もなければ手伝うよ」
「うん、お願い」
明日は噴火していなければ山の調査をするが、荒れていればマイヤを捜そうとは思った。
どちらかが進まないと解決にはならないしな。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
朝食を食べ、山の確認をしたが、噴火してまだ調査できない状態だ。
今日はマイヤを捜しに行く。
ルチルは朝早くから行ってしまったようだ。
みんなも手伝ってくれることで手分けして捜しに行く。
俺は灰が降ってこない場所に行って、捜す――。
――数時間が経過した。
見つからない……スライムの影すらない。
それにしても、灰が降ってくる範囲が拡大して、俺が捜している場所でも降ってきた。
これは厳しい状況だな……本当にマイヤが灰を嫌っているのなら遠くに離れて領地に戻ってこない可能性はある。
これ以上拡大しないことを祈るしかない。
報告の時間となり、領地に戻り、見つかったかみんなと話した。
結果、誰も見つけることはできなかった。
「困ったスライムちゃんですこと……。見つけたらお仕置きです……」
メアさん、身体中、灰まみれで不満たらたらなのはわかるが、やめてください……。
捜してくれるのはありがたいが。
「いない……どこ行ったの……マイヤちゃん……」
下を向き、落ち込みながらルチルが戻ってきた。
「まだそんな遠くには行っていないだろう。休憩して捜そう」
「うん……」
ソウタの言うとおりだ。捜して1日しか経っていない、もう少し捜索範囲を広げれば見つかるはずだ。
できれば山の調査する前に見つかってほしいが。
休憩をして昼過ぎに再び捜索を開始した――。




