356話 水質調査
湖の前に移動すると――これは酷い……。
湖はボコボコと灰色に濁っており、周囲は蒸し暑く、硫黄のにおいが充満する。
ここはあの山からの湧水と繋がっていることがわかった。
厄介だな……噴火が収まるまで水は濁りきったままか……。
温泉になりましたで済ませられない温度だぞ。
「うぅ……汚い……元に戻っても数週間は飲めない……」
ティアが言うなら有害なものが溶け込んでいるみたいだな。
「ちょっと調べるっスよ」
メメットは分厚い手袋をし、瓶に濁った水を入れる。
「手袋してるのにこんなに熱いっスよ」
そう言いながら荷物から液体の入ったスポイトを取り出して注いで混ぜ合わした。
汚れが沈殿した状態になり、少し濁った水に変わる。
あそこまできれいにするとはすごいな。これで浄水の石を入れれば飲めそうだ。
そのメメットはため息をついているが、ダメなのか?
「領主様……あっしの力でも厳しいっスね……」
「ダメなのか? あとは浄水の石でなんとかなりそうだが」
「そう思いますけど、見てください」
メメットは浄水の石を入れたが、何も反応もしなく濁ったままだ。
「きれいならないのか……」
「まだに濁っている部分はあっしが開発した浄水液と浄水の石でもきれいにできない無理なものが含まれているっス。自然に待つしかないっスけど……ここまで酷いと……戻っても数ヶ月は飲めないと思います……」
そんなに酷いのか……かなりの大事だぞ……。
おかしいのにほどがある……あの山から出てくる水を毎日飲んでいるのに今となって有害物質が溶け込んでいるなんてあり得ないぞ……。
「なんとかならないものか……。それにしても注いだ液体はどうやって作った?」
「ああ、これっスか? 飼っているスライムから採取した液体っスよ。それを培養して浄水液を作ったっス」
「そんなことができるのか……」
「普通のスライムはできません、あのスライムが特殊っスよ。あれだけ大食なのに体内は常にキレイなのはおかしいっスからね」
マイヤって、そんなに特殊なのか……。普通ではないとは思ったが、すごいスライムだな……。
「それでもマイヤの液体ではダメなのか……」
「そうっスね。けど、前に採取した液なので、あのスライムが成長していれば話は別っスよ。また採取して調べる価値はあるっス」
「じゃあ、頼んだ」
「任せるッス!」
水質浄化はメメットに任せるとしよう。マイヤはルチルが捜しているみたいだし、すぐに作業に取りかかれるはずだ。
問題なのは……あの活火山だな。急に噴火のするのはおかしい、予兆すらなかった。
調べるしかなさそうだ。今は活発ではなさそうだから今しかない。
「いったん戻って、準備が出来次第あの山を調査する」
「行くのか? だったら俺も行く。最近、何も活躍していないしな」
数ヶ月ほど干からびていたから行きたくなるよな。
「わかった、じゃあ戻ろ――」
――――ドドドドドドドドド――――
その瞬間、地響きと爆発音が聞えた――山を見ると、噴火してマグマが流れていた。
そして、湖が間欠泉のように熱湯が噴出し始め、周りは土砂降りになる。
「熱いっス! 早くここから離れるっスよ!」
メメットは耐えきれなくここを離れた。
おいおい、このタイミングで噴火はやめてくれよ……。落ち着くまで調査ができない……。
「レイ、いくら耐性があるからってマグマが流れているのは無理だぞ……」
「わかっている、今日は無理だ。明日様子を見て考える」
本当に困ったものだ……収まるまでなんとも言えない。
メメットと合流して「ゲート」を使い、領地に戻る――。




