355話 灰の影響
水路に着いたがこれは酷い。ドロドロとセメントが流れているように見える。
貯水槽の中は――浄水の石が働いているが濁っていた。さすがに処理が間に合わないようだ。
浄水の石は少しくらいの汚れしか効果はあるが無理ですな。
追加で入れても変わりはしない水質だ。
トイレ用としては使えるが、手洗い、洗濯、飲料としては無理だとわかった。
ここまでくると異常だ、湖を調査しないといけない。そうなると水の精霊に同行させてもらおう。
その前に緊急用に作った貯水槽を見に行く――。
…………派手に創ったな……。
貯水槽守るためにクリスタルのドームを8個創ってあり、その中に貯水槽もクリスタルで創られていた……。
ルチルの結晶魔法か……。
まあ、頑丈にできていれば良いことだ。
水魔法が使える人がクリスタルで創られた階段を上って貯水槽に水を流していた。
数も問題ないし長期間でも大丈夫だな。
おかしいな、ティアも参加していると思ったがいない。ソウタと一緒にいるかもしれない。
「終わった~! あっ、ご主人、マイヤちゃん見なかった?」
作業が終わったルチルがのびのびとして俺に話しかける。
「見ていないぞ」
「わかった、捜す!」
「魔法を使って魔力が大量消費しただろう、少し休んでからのほうが――」
「平気だよ! 昼飯には戻ってくる!」
そう言って俺から離れていった。
ルチルに言っても無駄か、元気だし問題はないか。
マイヤのことだ、自由気ままに周辺を散歩しているから捜さなくても大丈夫だと思うけど。
さて、俺はトリニッチさんの屋敷に向かう――。
最近、トリニッチさんの屋敷が完成してソウタとその嫁たちはそこに暮しているからだ。
屋敷の中に入り、執事に客間に案内されてソファに座り待つ。
「レイ、俺とティアに用があるのか?」
ソウタとティアが来た。
ここ最近、ソウタの体調は戻って普通に会話ができるようになった。
トリニッチさんが屋敷の準備で忙しかったし、その間に回復したとは思う。
だが、ティアの方は下を向いて落ち込んでいた。
「ああ、生活水として使っている湖の調査したくてな、ティアに同行してほしい」
「なるほど、だけどティアはこのとおり落ち込んでいる。周りの水が汚くて不調だ」
やっぱり水の精霊だと影響はあるか。
この様子だと一緒にいけないか。
「ぼ、ボク……気になるから行きたい……」
「大丈夫なのか? レイ、俺も同行するよ」
「わかった、無理はしないように」
「うん……」
ティアが水質の状態がわかれば、今後の生活に左右されるし、予備の貯水槽をいつまで使うか把握できるしな。
あとほかに詳しい人がいればいいのだが……。
1人1人聞いてみるしかないか。そうなるとスカーレットさんとルージュさんなら人脈も広いし詳しい人はいるはずだ。
執事にその2人を呼ぶと――。
「残念ながらボウヤそんな人はいないわよ」
「私もよ」
ダメでした……ほかに聞いてみるしかないか。
屋敷から出ると――。
「なんで火山灰が積もっているんすか!? こんなに積もっているのは初めてっスよ!」
メメットは驚きながらも火山灰を瓶に詰めていた。
やっぱり研究材料にはなるよな……。待てよ――。
「メメット、浄水の石よりキレイにする薬は調合できるか?」
「できないことはないっスけど、今必要すか?」
できるのか。メメットに事の経緯を伝えると――。
「なるほど、事情はわかったっスよ。あっしも湖の水質見ないと何を作っていいかわからないっスからね。一緒に行きます」
おっ、これなら早く問題解決に進みそうだ。
「じゃあ、今日はリフィリアに作業は休みと言ってくる」
「その心配はないっスよ、ほら――」
メメットが上空に指を差したところにリフィリアはいた。
それも怒って魔力を出していますが……。
「私たちの大事な故郷が……こんなゴミに汚されるなんて……許せない……」
キレイ好きなリフィリアにとって火山灰はゴミ同然ですな……。
あっ、魔法を発動している。
「――――エアリアル・リフレクト!」
領内すべて風で覆い、降ってくる火山灰を防ぐ。
ここまでするとはさすがですね……。
「さあ、大掃除の時間だ……」
そう言って周りを灰を風で集めて塊にして発動範囲外に飛ばす。
相変わらず器用なことをしますね。
掃除で忙しいし言わなくても大丈夫そうだ。
リフィリアが全部掃除してくれるなら、畑仕事も再開できて助かる。
なんだかんだいろいろと解決している。
問題の湖の調査だけだ、俺たちは空間魔法を使って湖に移動する――。




