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35話 大量購入


 ――2時間後。

 

 今日泊まる村ソナットに着いた。

カルムから大体80㎞くらい離れている。

 しかしミランドさんの馬は長い距離を走行しても全然疲れていない……やっぱり魔力があるからか?

 セバスチャンは門番に証明書を見せ、村に入る。

 確かこの村は酪農が盛んなはず……ってことは乳製品が安いわけだ……買いに行くしかない。


『ん? また良からぬことを考えてたね』


 エフィナは気づいていたようだ。 


 宿屋前で馬車を止め、外に出る。

 ここだと精霊が見える人もいると思うからフードの中に隠して外に出る。

 

 セバスチャンは宿泊の手続きを済ませる。


「ぼっちゃまとアイシス様はお嬢様と同じ部屋でお願いします」


「わかった」

「わかりました」


「わ~い! お兄ちゃんと一緒の部屋!」


 それは予想していたから問題はない。


「それと宿泊している間は厨房をお借りしていいそうです。後、食材屋はあちらにあると言ってました。食材費を渡しておきます。もし足りなかった場合は後で足りない分を支払います」


「ありがとうございます。これだけあれば十分です」


 アイシスは部屋の鍵と銀貨1枚を受け取った。 

 色々と手配してくれるとはさすが執事長だ。


 とりあえず部屋を確認すると10畳以上でベットが3つにトイレ、風呂にシャワー付きでそれに魔道具(時計)がある……ここ結構お高いのでは?

 まあ、貴族の人達が出入りするし、宿屋もいいのかもしれない。


 ブレンダはベットに飛び込み――。


「ふかふかで気持ちいい!」


 喜んでいた。食材の買いに行きたいけど。ブレンダを1人にできないな。

 隣部屋のセバスチャンに頼むか。


「これから食材を買いに行くけど、セバスチャンのとこに行くかい?」


「わたしもいく!」


 その必要はなかった……それじゃあ食材屋に行くか――。


「ようこそ、旅のお方! どうぞ見てください!」

 

 腰の低い40代くらいの男性が接客をしている。店主みたいだ。

 店に入った瞬間に目に入った物がある――。


「店主これは?」


「お目が高いですね! こちらは発酵した生チーズでございます」


「試食はしてもいいか?」


「どうぞ!」


 食べると――!? やっぱりクリームチーズだ! 自分で作れるがこの村は新鮮なミルクで作るから甘味があり美味しい。


「店主……これを全部くれ! いや、在庫分くれ!」


「よろしいのですか!? ですが日保ちが少々……」


「心配は無用だ! 氷魔法が使えるから日保ちの心配はない!」


「失礼しました! 少々お待ちを!」


 慌てて店主と従業員は在庫の確認をする。

 この機会にこのクリームチーズ逃したら――。


「ご主人様! ヨーグルトがあります!?」


「なんだと!? 店主これも在庫分くれ!」


「は、はい! ただいま!」


「お兄ちゃん、貴族のような買い方してる!」


『アハハハ! レイ買いすぎだって!』


 もうここは乳製品の宝の山だ! ついでにミルク、チーズ、バター、生クリームも買うか。


「見積りは金貨2枚、大銀貨1枚、銀貨6枚、大銅貨6枚ですがよろしいでしょうか…………?」

 

 ――確認するとクリームチーズ100㎏大銀貨1枚、ヨーグルト150㎏銀貨7枚枚と大銅貨5枚、ミルク300ℓ銀貨3枚、チーズ200㎏大銀貨1枚、バター100㎏大銀貨1枚、生クリーム200ℓ大銀貨1枚と銀貨6枚。


 余裕で買える金額だ。ボア祭の後に色々と魔物を狩ってきたから今では大金貨3万分のお金がある。 

 

「問題ない、ありがたく買わせてもらうよ」


 店主にお金を渡し、店員も大喜びであった。


「「「ありがとうございます!」」」


「ですがこんなにも……荷物にならないのですか?」


「アイテムボックスを持っているから大丈夫だ」


 購入した品を無限収納に入れた。


「なんと!? 貴方様はいったい……」


「お兄ちゃんは賢――」


 話がややこしくなるからブレンダの口をふさいだ。

 小声で――。


「ブレンダ、賢者のことは言ってはいけないよ……」


「うん、わかった」


 うん、素直でよろしい。


「ただの料理好きな冒険者ってことにしてくれ」


「そうですか……本当に良かったです……そろそろ氷魔法を使う人を雇わないと在庫分がダメになりそうでしたので助かりました……」


「この村では氷魔法を使える人はいないのか?」


「はい、それに氷魔法は難しいので無理です……」


 まあ、確かに氷魔法は適性関係なく難しいのはわかるな。

 乳製品も安く買えたし一肌脱ぐか。


「店主これも何かの縁だ。タダで氷をあげるよ」


「いいのですか!? そこまでされては……」


「問題ない、在庫の方へ案内してくれ」


「は、はい! こちらです!」


 案内された蔵は断熱性が高い大理石でできており、外に比べると涼しい天然の冷蔵庫の感じだが、季節は夏だから腐りそうなのはわかる。

 とりあえず夏を越せば日保ちも良くなるだろう。

 

 周りに氷の塊を創って終わった。


「これなら大丈夫だな」


「あ、ありがとうございます! 貴方様は救世主様でございます! まるで女神様のよう……」


「そんなんじゃないから、店主、乳製品以外にこの村の特産品はないのか?」


 ほかにもあったら買える物は買っておこう。


「もちろんございます! 市場では手に入らないホワイトカウの肉があります!」


 牛肉だと!? これは買うしかない!


「店主……売っている人を紹介してくれ! 買える分だけでいい!」


「わかりました! ではこちらへどうぞ!」


『アハハ! レイの暴走が止まらない!』


 紹介してくれた人が村長であった。

 店主が訳を話すと喜んでOKサインを出してくれた。


「どのくらい欲しいですか?」


「買える分だ。何㎏ぐらいまで大丈夫なんだ?」


「部位全部合わせてですと……500㎏までなら大丈夫です」


「全部買った! いくらだ?」


「はい! 少々お待ちを!」


 村長は慌てて周りの人を集めて牛肉を運ばせている。


「全部で金貨3枚ですけど……本当に大丈夫でしょうか?」


「わかった、これでいい?」


 村長に金貨3枚渡すと手が震えていた。


「ああああああ……ありがとうございます! この重さはまさしく金貨でございます!」


「念のために魔力を通せば偽物かハッキリわかるよ」


 お金は魔力を通せば光るから絶対に偽装はできない仕組みになっている。


「滅相もありません! 本当にありがとうございます!」


「大金が入ってもハメを外さないように」


「は、はい! すいません貴方のお名前は……」


「名乗るほどでもないからこれで」


 名乗ったら面倒くさいから牛肉を無限収納に入れ宿に戻る――。

 ……ブレンダを俺の買い物に長く付き合わせてしまった……。


「ごめんよブレンダ、長く買い物をしてて飽きるだろう?」


「そんなことないよ、見てて楽しかった!」


『アハハ! ボクも見てて楽しかった!』


 2人とも楽しんでくれてたみたいだ……。


 アイシスに念話でどこにいるか聞いてみると既に買い物が終わり戻っているみたいだ。

 アイシスにも悪いことしたな……。

 

 宿に戻ると厨房にはアイシスとルミンがいて、夕食の準備をしている。

 一緒に作るって言ったけどあれが作りたいけどな…………。


「アイシス、例の物を作りたいのだが席を外していいか?」


「例の物ですか? ……まさか!?」


 やっぱりアイシスにはわかったようだ。


「ああ、そのまさかだ。悪いがそっちを手伝うことができないがいいか?」


「問題ありません! 私も例の物を食べたいので、そちらに専念をお願いします!」


「例の物ってなに?」

 

 ブレンダは気になるよな。 


「チーズが好きな人には嬉しいものだよ」


「そうなの? わたしチーズ大好き!」


 ということで俺は菓子を作ることにした。

 何かあるかと思って調理器具を持ってきたのは正解だった。


 ボウルに先ほど購入したクリームチーズをペースト状になるまで混ぜ、次に砂糖、卵、ふるいにかけた小麦粉、生クリーム、酸味が強い果汁の順に入れて混ぜる。

 混ぜ終わったら型に流し込んでいく。本当は型の底にクッキーとバターを入れて砕いて、クッキー生地を作りたかったがもったいないからやめておいた。

 厨房の窯に入れ、焼いて――チーズケーキが完成した。

 街にチーズケーキなんて売っていないからここでクリームチーズを買って作るなんて正直驚いた。

 さて、残りの生地も焼いていくか。


 

 ――いつものクセでつい10ホールも作ってしまった……。

 そしてアイシスには申し訳ないことに砂糖が終わってしまった……。

 後で言わないと……。

 

『ボクが言っといたよ! 少し残念そうな声だったけど』


 あっ……やっぱりそうですね……。


『護衛の依頼が終わったら砂糖探す旅に行くか……』


『それを言ったら機嫌が良くなったよ!』


 言うの早いな!? エフィナはなぜか伝達係になっているが……近場にアイシスがいるけどそこまでしなくても……。


 余熱も冷めたことだし、食後のデザートに1ホールはみんなで分けて食べるとするか。

 残りは無限収納に入れて後で食べる。


 アイシスも夕食が出来上がったみたいだ。


 宿の食堂のイスに座りアイシスとルミンが食事を運んできた――。

 今日アイシスが作ったのはパン、ナナトソースのチーズハンバーグ、村で採れた野菜サラダ、野菜と生クリームのポタージュを作ってくれた。


「お姉ちゃん! 全部おいしい!」


「美味しい!? さすがお姉様! いつも勉強になります!」


「美味しいです。まさかこの村でこんな豪華な食事を食べられるとは……それに銀貨1枚だけだと予算が少ないと思いましたがお釣りも来るなんて……。流石です、アイシス様」


「ウマい……ご馳走をありがとうございます」


「さすがです。お姉様! 移動の最中にこんなご馳走をいただけるなんて幸せです!」


 いつも通りの好評でした。


 俺も食べたが滅茶苦茶美味しかった。

 この村の食材を活かして料理を作るとはやりますな。


 そして食後のチーズケーキを差し出すと――。


「「「美味しい」」」


 みんな良い反応でした。

 あの……アイシスさん……無表情ですが魔力が異常に溢れていますよ……チーズ系のデザートが好きなのかな?

 後で砂糖が手に入ったらレアチーズケーキでも作るか。 

 

「お兄ちゃん、このケーキ今まで食べた中で1番おいしい!」


 ブレンダも虜になってしまった。


 デザートも食べ終えみんな部屋に戻る――そしてある問題が発生した。


「お兄ちゃんと一緒にお風呂入る!」


 やっぱりきたか……このイベントを回避せねば……。


「ブレンダ……今日は俺は疲れたんだ……1人でゆっくり入りたいからアイシスと一緒に入って……」


「わかった……」


 残念そうだがこれはしょうがないことだ。


「うん、よろしい。アイシス頼んだよ」


「……わかりました……」


 なんでアイシスも残念そうなんだ!? 

 そこで一緒に入ったらおかしいだろ!? 

 自重をしなさい!


 2人は残念そうにお風呂に入りにいく――。

 これでいい。精霊にも一緒に入ればと言うと首を振る……いつも通りダメだった……。


 するとブレンダは大声で――。


「やっぱりお姉ちゃんの胸大きい! さわっていい?」


 あまり大声で言わないでください……隣部屋にも聞こえますよ……。  


 ――その後、何も起こることなく、就寝でき護衛の依頼初日が終わった。      

レイが買った金額日本円にして116万5000円

               

 クリームチーズ 10万円    1㎏ 1000円

 ヨーグルト   7万5000円   1㎏ 500円 

 ミルク     3万円     1ℓ 100円

 チーズ     10万円    1㎏ 500円

 バター     10万円    1㎏ 1000円

 生クリーム   16万円    1ℓ  800円

 牛肉各部位   60万円  

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