353話 過去の事件
俺が留守にしていていた間はウルマが周りをまとめていたらしい。
さすが元村長だ、これからまとめ役がいなければウルマに任せよう。
変わったことないか聞くと――ライカがいなくて小人たちは寂しがっていたことだ。
やっぱり守り神がいないと寂しいか、今は戻ってきたから笑顔で甘えたりしている。
小人にとって十数日でも長く感じていただろう。
ほかに聞いてみると、最近トリニッチさんはソウタへの暴走が激しくて止められないことだ。
今に始まったことではないから無理です……。
いや、メメットに興奮抑制剤を作ればなんとかなりそうか。
あとで聞いてみよう。
それはいいのだが……いつの間にかスカーレットさんとエクレールが来ています……。
休みをもらったということで長期滞在するということです……。
ソウタ、身体持つのかな……?
――――◇―◇―◇――――
領地に戻って1週間が過ぎた――。
手伝いに来ていたミミルカさんはそろそろギルドが心配になり、帰っていった。
俺がいない間ありがとうございました。
そして俺は王様に魔道具で先王と大妃に会ったこと、チヨメが王城に来るかもしれない事の経緯を言った。
『ハハハ、お父さんとお母さんも相変わらずだね。わかった、チヨメさんが来たらレイ君に教えるよ』
これでチトセの件は解決しそうだ。
あとは連絡を待つだけだ。
魔王も魔道具で連絡がくるのだが、ほとんど愚痴です……。
ソウタと娯楽施設の相談ができないこと、サイガさんに島をライカに勝手にあげたことを言うと怒られたと言います。
俺には言っても何も変わらないが……。
『まったく、困った奴らだ。それと、クリントの件について調べてたぞ――』
禁忌で強制的に島に移動された。クリントのことをもう調べたのか、早いな。
話によると、学術都市――ゲルユングの商業ギルドでクリントは発注途中でいなくなっていたことがわかり、行方不明者リストに載っていたとのこと、その同じ時期に路地裏から学生がミイラの姿で朽ち果てていた不可解な事件があったことがわかった。
その学生は――フットス・マクリーニというダークエルフで貴族の子だ。
かなりの優等生であったが、授業中つまらなそうで受けていたとのこと。
その事件前に少しだけおかしな言動があり――。
「もうすぐで退屈な学生生活が終わる」
と言っていた。
禁忌野郎に渡していた本は学校の図書室の借りていた本であったとわかった。
その本の題名は「この世の魔法の限界」という作者の知らないエッセイ本という。
わけのわからない内容で評判は悪く、それほど重要なことは書いていなかった本とのこと。
死体とともにその本も置いてあったと記録されている。
『――というわけだ。禁忌野郎に渡した本を確認したが、禁忌そのものに触れるような内容はなかった。無駄足のようだったな。その学生には気の毒だが、自業自得だ。オレからは以上だ、もう心配することはないぞ、この件は終わりだ』
そう言って魔王との連絡が終わった。
なんだ、危ない本かと思ったが、ただのエッセイ本か……。じゃあ、その学生は重要なことが書いてあると禁忌野郎に渡して、何も書いてなく怒りを買ってしまい、ミイラにされたことでいいのかな?
確かに魔王の言うとおり禁忌に触れようとしていれば自業自得だ。
しかし……この件は本当に終わらせていいのか?
まだ禁忌野郎は生きている可能性があるぞ。
『そんな心配しなくていいよ。前にも言ったけど、禁忌魔法は代償が大きいからこの世にはいないと思うよ。魔王がちゃんと判断してるから大丈夫』
エフィナが言うなら大丈夫か。クリントも無事だったことだし、結果的には解決したのでいいかな?
少々後味の悪いところもあるが、この件は終わった。
そして――。
「できたっス!」
メメットとリフィリアが一緒に開発してトリニッチさん用の興奮抑制剤が完成した。
日頃のお世話になったということで、美容ドリンクとしてプレゼントした。
「ありがとう~。さっそく飲んじゃうわよ~」
躊躇いもなく、一気飲みをすると――穏やかな表情になった。
効き目はあるようだ。
「どうですか?」
「身も心も清らかになって、ワタシがキレイになった感じがするわ~」
まあ、抑制剤だからその例えになるか……。
「良かったですね……。その美容剤は早めに寝ると効果があるので今日試してはいかがです?」
「あら、そのなの!? 最近夜遅くまで起きていたし、今日は早めに寝ちゃおうかしら~」
念には念を入れておいた。これでソウタは当分干からびることはないだろう。
それをソウタに伝えると――。
「ああ……あああああああああああ……」
涙を流して喜んでいました。
「とても残念ですこと……」
メアさん、さすがに危ないので我慢してください。
当分メアの楽しみはなくなります。
――翌日。
みんな朝食を食べに集まるのだが、ソウタたちが遅いな。
まあ、良く寝られているのいいことだ――。
「ああ……ああ……ああ……」
えぇ……昨日と同じように干からびています……。
あっ、トリニッチさん以外の嫁は肌艶が良いのですが察しました……。
これはエンドレスですな……。
――――◇―◇―◇――――
――1ヶ月が経つ。
「お主人様、大変でございます」
アイシスの声で目が覚める。
珍しいな、アイシスが起こしにくるとは何かあったのか?
「大変とはなんだ?」
「この目で見たほうがよろしいかと……」
見た方が早いのか、アイシスは窓のほうを指を差し、俺は確認をする――。
次の更新は3日です。




