351話 新たに発見
先王と大妃が食事をしたあとに畑の手伝いをする。
2人は雑草取りをしているのだが、子どものように無邪気にドンドン抜いていく……それも早く……。
「そんなに動くとまた腹が減るぞ」
「少し多めに食べたから大丈夫ですよ」
少しどころではないぞ……2人でホーンシャーク1頭分を平らげていた……。
大食なことで……。
休憩を挟みながら昼過ぎに頃には荒れていた畑はキレイになった。
先王と大妃が手伝ったおかげ早くて終わらせた。
意外に働き者で驚きました。
そのあとに空いているスペースにチヨメからもらった種をまいて自由時間となった。
自由時間になったのはいいが、あの2人はシエルに乗って周辺を飛び回り、夕食の時間まではしゃいでいました。
「明日もよろしくね」
「無理じゃ……ゆっくりさせてくれ……」
味を占めましたね。明日までしか俺たちはいないし、王族の頼みでもある。シエルにはもう少し頑張ってもらう。
しかし……先王と大妃は若すぎないか?
王様より魔力が良いから若さを保っていることはわかるが、少年少女に見間違えるくらいのレベルだ。
今でもバリバリ王様をやっていけそうだが。
まあ、やめた理由は世代交代だろう思うけど。
夕食の時間――アイシスは今回の旅で収穫した食材を使ってご馳走を作った。
みんなで美味しくいただいているところ――。
「で、2人はこの島にいつまで滞在するつもりだ?」
俺が聞こうと思っていたことを魔王が先に言ってくれた。
なんだかんだ長い付き合いだから心配はするよな。
「私たちが飽きるまでかな。多分、数年――十数年は飽きないと思うよ。もちろん用があれば城に戻るけどね」
十数年もいるのか……。ここの島に興味を持ちすぎだろう……。
「はぁ……長いぞ……たまにだが、息子に顔合わせに行けよ……。心配はするぞ……」
「ディカルドは私たちのことはよく知っているから心配しないですよ」
「はぁ……聞いても無駄か……お前さんたちの誰か、たまに様子を見に行ってくれないか? この2人は本当に危ない」
「私と妻でやっていけるのに、魔王さんは心配性だな~」
「オレの身にもなってくれ……。引退してもお偉いさんということは自覚しろ……」
やっぱりこの2人に苦労しているのだな。
「儂に任せてくれ、定期的に来る予定だから問題ない」
ライカは関係なく、島に行くから安心だ。
俺もたまに行くが。
だが、王族が島生活はあまりにもハードルが高い、ある程度日用道具は渡したほうがいいよな。
夕食後、2人に必要なものを聞いて今日は終わった。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
起きてリビングに向かうと、先王と大妃が魔王と一緒に山盛りにした生クリームのパンケーキを食べていた……。
やっぱり両親も甘党なんですね……。
「美味しい朝食をありがとね。さあ、食後の運動でもしようか」
「待つのじゃ、妾はまだ食べている――」
シエルは先王と大妃に両腕をつかまれて外に出た。
せっかちだな……。シエル今日までだから頑張ってくれ。
お空で楽しんでいる間に必要なものを確認をする。
調理器具、農具一式だ。ほかはチトセの家に揃っていてそこまで不便さはない。
「これはアタイ任せな、全部はできないが、今すぐ必要なのは作るぜ」
フランカにお願いすることになった。今日でできないものは後日改めて渡すことにする。
俺たちはやることがなくなり、ゆっくりしようと思ったら――。
「主よ、大変なものを発見した」
泥だらけになったライカが尻尾を振って袋に入れられた種を持ってきた。
【創種】の種だが、まさか俺たちが持っていなものなのか?
日本語で書いてあるな…………えぇ……「サトウキビ」ですか……。
この世界で一番創ってはいけないものではないですか……。
アイシスさん、目を輝かせないでください。
「なんだそれは、珍しいのか?」
「魔王さん……これは砂糖の原料となるイネ科の植物の種です……」
「砂糖だと!? そんな貴重なものを創れるなんてチトセは卑怯だぞ! これはこの世に出てはいけない、オレが管理する」
やっぱりそうなるよな、管理って……魔王のことだから独り占めしたいだけだろう……。
「独り占めは許しません――――シャドウチェーン……」
「離せ小娘! この種は管理者権限としてオレが管理をする、絶対にだ!」
これで管理者権限を使っても困るのだが……。
「地球では一般的なものですこと……勝手に決めないでくださる……。そうでしょうアイシス……?」
アイシスはメアの発言に頷く、甘いもののは理性が回らないですよね。
「エフィナも何か言えよ! こんなものが世に広まったら大変なことになるぞ!」
『ん? 別にいいんじゃない。この島を管理しているライカに任せるよ』
まあ、しっかり管理をしてくれるライカが適任だな。
「儂は構わないが、いまさらサトウキビの種を創った意図がわからん……」
「島の生活で甘いものが食べたくなっただろう。それしか考えられない」
「じゃあ周りには植えていなかったがなぜだ?」
「植えていたと思うぞ、トウモロコシ畑の隣に何も植えていなかっただろう。可能性としてはある。多分、チヨメが全部刈って旅のお供として持っているかもな」
「なるほど、あり得るな」
本当かわからないが、一番あり得そうなことを話した。
ほかにもある――誰かが絶対に来ると前提して全部刈った可能性がある。
誰とも関わりがなくても、砂糖は貴重なものだと両親から教わっているはずだ。
だだ――。
「どこで見つけた?」
「墓の近く――桜の木の下に埋まっていたぞ。においでわかった」
隠していたか、なら誰も渡したくはないとわかった。
「勝手に植えるのはダメか。チヨメに許可をもらうまでしっかり管理してくれ」
「わかった、大事な種だ。誰にも使わないようにする」
ライカは無限収納に入れた。
これで誰にも悪用されない――って……アイシスと魔王は膝をついて落ち込んだ……。
ほかでも砂糖が作れるから我慢しなさい。
もちろん、許可をもらうまで先王と大妃には内緒にする。
次の更新は2月1日です。




