349話 その先に――
浜辺に着き、海を見渡すと、鋭い一本角を持ったサメが十数と顔を出して泳いでいた。
陸に上がらない魔物だと効果がわからないな。
「ホーンシャークが陸の近くにいるとは珍しいな、奴らは海中深くにいるが、獲物がいるときにしか顔を出さないぞ」
獲物なんてどこも見当たらないが?
待ち伏せでもしてるのか?
遠くにからホーンシャークの魔力反応がある、こっちに向かってくるし当たりだな。
その狙って獲物は…………人の魔力だと!? しかもえげつない魔力を持っている……。
「知っている魔力だな……」
そう言って魔王は【飛行】のスキルを使って人の魔力のほうに向かった。
知り合いの魔力なのか……。なぜだろうか、俺も知っている魔力なのは気のせいか?
俺も風魔法を使い、魔王の後を追う――。
見えてきた――舟に乗った探検家の服装をした男女2人のエルフがオールを勢いよく漕いでホーンシャークから逃げていた。
そのまま行くと、群れに突っ込んで危険だ。
「やっぱりな……」
「知り合いですか?」
「ああ、話はあとだ、悪いが群れのほうを頼む。オレは追われている2人を助ける」
魔王はため息をついて、助けに行った。
疑問があるが、サメの駆除をしないと――。
「――――アイスエイジ」
アイシスが時と氷の【混合魔法】を使い――ホーンシャークの群れを海ごと凍らせてしまう。
仕事が早くて助かります……。しかし、派手にやったな、アイシスらしくないやり方だ。
アイシスがいる浜辺に降りて、確認をする。
「派手にやったが、サメ苦手なのか?」
「いえ、出番がなく、ついやってしましました」
そういえば、今回の目的は訛っていた身体の運動――魔物を倒すことでしたね……。
けど、魔法を使ったら運動にはならないが……。
まあ、ほとんどライカが狩っていたし、取られないように急いでやったか。
「苦手ではないのは残念ですこと……」
メアさん、アイシスの弱みを探らないでください……。
なんのメリットもないぞ。
ともあれ、片付けた、あとは――。
「おい、倒したぞ! 止まれ!」
魔王も終わったみたいだ。だが、声を無視をして、速度も落とさずにこちらに向かってくるのだが……。
このまま氷に衝突すればケガをするぞ……。
「お任せください――――アイスコントロール」
再びアイシスは魔法を使い――氷の上り坂の台を創り、舟はそのまま台の乗り上げて飛んでいき、砂浜に勢いよく着陸する。
衝突は免れたが、砂浜への衝撃も強かった。大丈夫か?
「「ハハハハハ!」」
高笑いして満足していました……。
なんも問題はありませんね……。しかし、この2人は若すぎる……成人したばっかりのように見える。
よく危ない海域を行くとはなんて無謀な。
「相変わらずだな……」
魔王は呆れながら戻ってきた。
いつものことのようですね。
「ありがとう、魔王さん。だが、私たちを助ける必要はなかったぞ。もう少し恐怖感を味わいたかったけどね!」
「そうです。ホーンシャークに襲われることなんて滅多にありません。貴重な体験です」
「それで亡くなったら家族どころか民衆――大陸の笑われ者になってしまうぞ。立場ってものがあるだろう……」
「ハハハハハ! なに心配することかね。それはそれで運命だと思うよ! 人生何があるかわからないからね!」
「危なかったら私の魔法でひと蹴りです。心配無用ですよ」
3人で和んでいるが、この2人、かなり偉い人だな。
魔王をさん付けで呼ぶとは只者ではない。
「お取込み中、悪いですが、そちらの方は?」
「ん? 知らんのか? この2人はプレシアス大陸の先代の王と大妃だぞ。現国王の父と母だぞ」
「シグルド・ミスティ・エレントアーネだよー」
「テラス・ミスティ・エレントアーネですよ」
…………先王と大妃かよ!? なんでこんなところにいるのだ!?
わけがわからない……。
俺たちは膝をついて敬意を払う。
「そんなことしなくていいよ。私たちはもう偉くはないのだから。普通に接してね」
「そうです。私たちは一般の人変わらないです。気軽に接してください」
軽く言っているが、あなたたち王族ですよ……。
王様みたいな性格しているな……いや、この2人の遺伝を受け継いだのかもしれない……。
「2人の言うとおりだ。気軽に接しても罰は当たらん」
それは魔王だけだぞ……立場が違う……。
まあ、先王と大妃が言うのなら立ち上がり普通にする。
ん? アイシスは膝をついたままだが。
「先代の国王陛下と大妃様と知らず……愚かな行為を……大変申し訳ございません……」
ああ、手荒な真似をしたから反省しているのか。
2人とも笑っていたし大目に見てくれると思うが。
あの、メアさん……なんでクスクス笑っているのですか……?
何か企んでいるようですが……。
「いいよいいよ、ケガはしていないから大丈夫だよ。強力な氷魔法も見られて楽しかったよ」
「大丈夫だから頭を上げて、気にしていないから。それに広範囲の氷魔法は初めて見たわ、メイドさんなのに強いのね」
「ありがとうございます」
やっぱり、王様の親だな。優しい人で助かった。
「もう少し面白い展開を期待していました……本当に残念ですこと……」
あまり期待をするものではありません……。
「ところで君たちは名前は? 魔王さんといるから魔王軍の人と思ったけど、違うね。シャロロちゃんと同じ親戚か何か?」
シャーロさんのこと知っているのか……。
まあ、魔王城で会議とかで行ったりしていたと思うから当然か。
「お前さんたちも知らないのか? スタンピードを終わらせたレイと賢者の弟子だぞ」
「おお! この子たちが終わらせたのか! 息子の手紙でいろいろと知っているよ! そして君がレイ君か、リンアイナと婚約を結んでいるとは驚いたよ! まさかこんなところで会うとは私たちは運がいいよ! 式は絶対に行くからよろしく!」
「まあ、リンアイナちゃんの婚約者なのね! あの子、気が強いけど根は優しい子よ。大変だけどよろしくね!」
王様と手紙のやり取りはしていたのか。
しかし……リンナさんとの婚約は言わなくてもよかったはずでは……。
まだ先のことなのに……。
「お手柔らかにお願いします……。なぜ先代の国王陛下と大妃が魔大陸に?」
「王を引退したから暇でね、旅に出た。それだけだよ」
「私たちはやることがないと退屈すぎて死んじゃうからね」
やはり王様の親ですね……血は争えない……。
「それで、お前さんたち、ここら辺の海域は危ないから旅をするなと言っただろう……」
「ごめんごめん、どうしても行きたい場所があってね。聞いてくれるかい?」
「まあ、聞くだけ聞いてやろう。どうせ、くだらない妄言を聞かせれてここに来たのだろう?」
魔王は完全に呆れていますね。
意外に2人に振り回されている気がする。
魔王も苦労してるのだな。
妄言か……この2人、騙されてるいる可能性があると思いますけどね。
次の更新は27日です。




