348話 子どもの行方
その内容は――。
『この島に来た人へ。ようこそ私が住んでいた島へ、この紙を読み上げている頃には私は遠くに旅立っているでしょう。残念ながらもういません。両親を亡くして1人になってしまい、旅をすることにしました。当分は帰って来ませんので家はご自由に使ってください。あと、農作物も好きなだけ獲って食べてください。もし、長く滞在するのでしたら両親の墓と畑の手入れをお願いします。勝手な申し出ではありますが、私たちの大切な島です。どうかよろしくお願いします』
まさか旅に出たか……。旅って船での移動だよな……魔物が多い海域を無事に大陸に渡れたか心配はある。
これは捜すのに無理がある。
さて、ライカはどうする。
「このまま捜しても無駄だな、子どもの帰りを待つとしよう」
清々しい表情になっていた。モヤモヤしていたのが晴れたか。
さすがのライカも諦めて待つか。
「魔王、この島の所有者は誰になる?」
「無人島だ、所有者は誰のものにもならんぞ。オレの許可をもらえば話が別だが」
「じゃあ、儂にこの島の所有権がほしい、タダとは言わん、交渉条件はなんだ?」
「タダでいいぞ、無人島の1つや2つくれるぞ。だが所有者になるならしっかり管理しろよ」
簡単に所有していいのか……? 勝手に決めたらサイガさんに怒られるぞ。
まあ、それが魔王の優しさだとは思う。
ライカが管理すれば変に扱うこともしないし、適任だ。
お互いに握手をして交渉をした。
「ありがとう……。主よ、周りの手入れをする。2日くらいこの島にいたいから、帰ってもよいぞ」
「だったら俺も手伝うぞ」
ライカを置いて帰ったら小人たちが大騒ぎするから帰りづらいしな。
「わかった、さっそく周りの手入れでもするか」
「もう日が暮れるぞ、明日にしないか?」
「儂は今日からする。ゆっくり休んでくれ」
早くやってもすぐに帰っては来ないけどな。
でも墓の周りは今日中にできるし俺たちも手伝う。
「立派な墓石だな、アタイと負けないくらいの技術はあるぞ」
フランカは感心していた。
確かに無人島で作れるのかってほどのできだ。
夫もフランカみたいに【鍛冶師】のスキルを持っていたのに違いない。
ってことは亡くなる前に墓は事前に作った感じかな?
さすがに子どもが作れるとは考えにくい。
汚れた墓石をキレイにして、香炉に線香にあげて手を合わせる。
日も暮れて続きは明日だ。
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
いつもどおり魔王に早めに起こされて朝食を摂ろうとリビングに向かうと、ライカ以外は集まっていた。
アイシス曰く、すでに済ませて、チトセの家に行き、掃除しているとのこと。
気合いが違うな……。
俺たちも食べ終えて手伝いに行くと、中からジャージ姿のライカが出てきた。
「家の掃除が終わった。次は畑の雑草取りだ」
そう言って畑のほうに向かった。
中を確認すると、塵一つもなくキレイになっていた。
掃除好きなアイシスさんは床に膝と手をついて落ち込んでしまう。
本人も早く終わるとは思っていなかったか……。
畑に向かい、雑草取りをする。
しかし……畑はかなりの広さで少人数だと時間がかかってしまう。
「ゲートを使っておチビちゃんにも手伝てもらったほうが早いですこと……。ワタクシがお呼びしましょうか……?」
「ダメだ、儂らの問題だ、子どもたちに手伝わせるわけにはいかない。呼ぶのはそのあとだ」
「そうですか……? おチビちゃんは【創種】のおかげ暮していますが、関係ないと……? そのくらいしてくれると思いますが……」
一瞬ライカの手が止まった。メアも鋭いところをついてくるな。まあ、そのほうが効率が良いが。
「それでもだ! 呼ぶのではないぞ!」
「そうですか……残念です……」
無理やり押し通しましたね。しょうがないが、ゆっくりと――。
その瞬間、強力な魔力反応が徐々に島から近づいてくる。
海の魔物か……チトセが創った魔物除けの花があるから問題はないが、念のため効くのか確認はしよう。
いったん、作業を中断して、反応があるほうに向かう――。
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