347話 地図に載っていない島
見えてきた――さっきの島より大きな無人島だ。
「どうせおらんだろう……」
ライカはシエルの背中に顔を当てて、諦めてモードでした。
まだ近くに行っていないし、わからないぞ。
まあ、希望はあまりないと思うが。
「ん? 少し荒れているが畑らしきものがあるぞ」
「本当か!?」
フランカの発言でライカは顔を上げた。
確かに周りは雑草などで荒れているが畑があった。住んでいる人がいるのか?
もう少し近づくと、おい……見覚えのある野菜が育っているぞ……大根や、人参などの根菜類が……。
さらに奥には米とトウモロコシの穀物類の稲が育っている。
完全に当たりだ。
家はどこだ――見つけた、畑から離れた森の中に煙突がある大きな平家を見つけた。
そこらの街では値が張るくらいの立派な家だ。
ライカは尻尾を振って、飛び降りる。そんなに焦らなくても大丈夫なのに……。
俺たちも島上陸して後を追う。
魔物の反応もないし不思議だと思ったら魔物除け花が咲いていた。
「無人島に魔物除けの花が生えてるなんて聞いたことないぞ」
魔王と同意見だ、考えてみれば【創種】で創ったのかもしれない。
だが、海系の魔物も効くのか疑問があるが、そこはチートでなんでもありかもしれない。
人の姿も魔力反応もなく、森の中に入り、家に着いた。
「誰かおんのか!? 返事をしてくれ!」
ライカは大声で言うが反応はなかった。
「邪魔するぞ!」
玄関のドアを開けて、中へと入る。
中は――廊下にフローリングが敷いてあり、各部屋には障子や畳などが張られていて和と洋の作りである。
しかも台所や風呂なども設置してあり、無人島ではあり得ない作りになっている。
その奥には――炉や金床が設置している鍛冶部屋だ。家の4分の1は占めている。
だが、誰もいなかった。
「おいおい、鍛冶スペースがあるのかよ。チトセは武具を作れたのか?」
「いや、できるわけがない……。多分、伴侶の可能性がある……」
「そうか、じゃあ、ここが建てられたのはチトセの夫のおかげか」
フランカの言うとおりかもしれない、こんな立派な建物、普通は建てられない。
もしかすると、大工や鍛冶などが得意な人とここでは暮らせないからな。
しかし……最近使った形跡がない……。
『誰もいないね……もしかして何かあったのかな……?』
エフィナの発言でライカは慌てて家から出る。
チトセは亡くなっているが、夫と子どもの2人暮らしはしているはずだ。
嫌な予感がしなければいいのだが……。
俺もライカのついていく――。
「頼む、返事をしてくれ! お願いだ!」
大声で森の中を走っていく、残念だが、島の中は人も魔物の魔力反応はない……。
もしかしたら2人とも不慮の事故の可能性もある……。
「ここは……」
森を抜けたとたん、ライカは急に足を止まり、固まった。
目の前には虹色とキラキラと輝く花畑が広がる。
虹色の花とかこれも【創種】で創られたか。
おい……その中心に見覚えのある木――桜木が満開に咲いていて、その下には2つの墓石が設置してあった。
俺とライカはゆっくりとその墓に近づいて確認をする――漢字で稲垣千歳、その隣にはカタカナでフウマの文字が刻まれている。
夫もすでに亡くなっていたのか……。
「はは……子どもはいったいどこにおるのだ……」
ライカは膝をついて、落胆する。
最近生活した形跡もなく、畑の手入れもない。
やっぱり、何かあったのか?
「見つけたぞ、お~い、急にいなくなるなよ~」
ほかのみんなも向かってきた。
魔王は大声で呼んだが、墓があることに気づくと、無言になり、近づいて手を合わせる。
「こんな不便な場所で過ごすとは、人が嫌になったのか……? オレに相談すれば解決したぞ……。よく頑張ったな、安心して天国で過ごすがよい……」
多分、チトセは自分の能力があまりにも強大すぎて、誰にも悪用されないように無人島を選んだはずだ。
もし魔王と会っていれば違う道を通ったかもしれない。まあ、魔王を信用したかは別だが。
「ご主人様、お取込み中申し訳ございませんが、こんなものが」
アイシスの手には羊皮で作られた一枚の紙を持っていた。
なにか書いてあるな、日本語ではなく、この世界の文字が――。
「ライカ、これを見てくれ!」
「なんだ……儂にかわまないで……こ、これは――」
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