343話 魔王の考え
魔王は腕を組んだまま目を瞑って考えている。
無理もない、禁忌を使う危ない野郎が魔大陸にいたなら大事だしな。
「5年前か……エフィナ、禁忌を使い続けるとどうなる?」
『命を削られてそのまま朽ち果てるか廃人になるよ。魔大陸で大事な事件が起きていなければ、大丈夫だと思うよ』
禁忌だからデメリットが多いな。そんなに警戒しなくていいか。
「興味本位で使って命を絶つのはいいが、被害者もいる……。それに毒の入手してるのも気がかりだ……。調査はしないとな……」
まあ、調査はするか、被害者が生存しているし手がかりは見つかるはずだ。
「魔王さんはこのまま城へ戻るのですか?」
「ん? 何を言っている。お前たちの手伝いをしてからに決まっているだろう」
戻らないのかよ……5年前だからって、そんな余裕でいいのか……。
「そのままお帰りになされたほうが、身のためですこと……。その禁忌を使う変態さんに暗殺される可能性は十分にありますこと……」
「なんだ小娘、心配してくれるのか。残念だが禁忌を使われても死なない身体をしている。怖くはないぞ」
まあ、シャーロさんに創られた身体だから耐性はあるだろうな。
メアさん、帰らないからって舌打ちしないでください。
「オレよりクリントが心配だ。長年無人島生活して帰りたいだろう。だが、調査が終わるまでオレの城で保護するような感じになるがな」
禁忌野郎が生きていたらクリントのほうが危ないよな。
本人はすぐ帰りたいと思うが、仕方ないか。
クリントの件は落ち着いたときに話す。
密集地に戻ると、エレガントモンキーは魔王に群がり、畑で採れた野菜、無人島に生えているヤシの実らしきものを持ってきて次々と渡してくる。
ふと思ったが寒いのにヤシの木らしきものが生えているのは不思議だ。それほど環境に適しているのか。
しかし、ずいぶん持ってくるな、自分たちが食べる分は大丈夫なのか?
「礼はいらんぞ、だが、モカの実はもらっていくが」
モカって言うのか。
魔王はモカの実を受け取り、素手で割ってその中の汁を飲む。
やっぱり甘いものは受け取るみたいです。
それにしてもクリントはよく5年間、エレガントモンキーと一緒に暮らせていたな。
急に島に放り込まれて大変だったろう。
――日が暮れてエレガントモンキーたちは…………普通に夕食を作っている……。
無人島ではあるはずのない調理器具を持って……。
「この子たちは【料理】スキルを持っているから味の保証はするよ」
「それはすごいが、あの立派な包丁とまな板は……?」
「ああ、あれは元はと言うと商品だったものです。私は商人でアイテムボックス持ちで――ほら、このとおり」
クリントは瓶入った酒とコップを出し、そのまま注ぎ、魔王に渡した。
「ふむ、悪くない酒だ」
「ありがとうございます」
商人だったのか……撤回しよう……無人島の生活は楽だったと……。
おかしいと思った、無人島で野菜を栽培できるのは種を持っていて、エレガントモンキーは懐かれているのは餌づけか何かしたかもしれない。
あと立派な家は木材も持っていたと考えられる。
アイテムボックスさまさまだな……。
「クリントよ、見る限りお前は優秀な商人と思うぞ。魔大陸に戻って再開したいのではないか? 遠回りになるが、送ってやるぞ」
「「「ウキィ……」」」
「送る」と言葉にエレガントモンキーは固まり、涙を流してしまう。
クリントと離れたくないのか。
「魔王様、確かに私は再開したいとは思っています。ですが、この子たちと一緒に暮らしているうちに、この島は第二の故郷となりました。最初は戻りたいと考えていましたが、今はまったくありません。ありがたいのですが、お断りします」
意外な発言だ。よほど気に入っているらしい。
エレガントモンキーは涙を拭いて手を叩いて喜んでいる。
「そうか、ならお前を尊重する。たまに遊びに来てやるから、もし帰りたければそのときに言えよ」
遊びに行くのか? まあ、生存確認のために様子を見に行く感じか、なんだかんだ優しい。
「ありがとうございます。さきほと言いましたが、商人は再開したいです。ここに生えているモカの実は高品質でここだけにとどまるのは惜しいです。いつか商品として広め、そのお金でこの子たちともっと良い暮らしをしたいと思います」
商品の血が騒いでいますな……。しかしここは無人島だ、魔大陸ではかなりの距離で運搬費もバカにならない。
そんな都合いいこと――。
「おお、モカの実を売りたいのか!? あの汁を飲んだがかなり美味しかったぞ。オレが買い占めていいか? それを加工して飲み物として売る、どうだ? 悪くない話だろう?」
「いいのですか!? そこまで考えてくれるなんてさすが魔王様です!」
なんか話が勝手に進んでいる……。もしかして遊びに来る発言はモカの実の中身が飲みたかっただけですな……。
俺も飲んでみて柑橘系で美味しかったが。
「ということでレイたちよ、行き来が面倒だから運搬を頼むぞ」
結局、俺たち任せかよ……。どうも話が進んでいると思ったら……。
あっ、アイシスさん目を輝かさないでください……。
本当に甘いものには目がないよな……。
「私にお任せください。運搬料としてモカの実を分けてもらいますが」
「モカの実だけでいいのですか!? 私としては大助かりです!」
「おお、メイドよ、話がわかるではないか! この旅が終わったら忙しくなるな!」
3人は意気投合し、夕食を食べている間も今後のことについて話していた。
話すのはいいが、旅の目的を忘れてないでください……。
ライカは見つけられなくて落ち込んでいるので……。
次の更新は15日です。




