342話 不可解
「何かおかしいのですか?」
「ああ……、あり得ないが、ズイール大陸しか生息していない魔物――パラライズマンドラゴラの毒かもしれない」
パラライズって……名前の通りじゃん……。
普通のマンドラゴラなら薬としていろいろと使うが、大陸によって違う個体がいるのか……。
「誰かに盛られた感じですか?」
「ああ、おそらく。あれは厄介で、すぐに毒が回らない。徐々に身体を蝕むばみ、最終的には死にいたる。それに魔大陸とプレシアス大陸は使用禁止している」
「えっ? じゃあ、密輸されたことになりますよね?」
「可能性としてはな……。だが、厳重に取り調べしているから普通ならあり得ん、あやつに聞かないとわからん」
まあ、本当のこと聞かないとわからないよな。
そろそろ落ち着いたことだし再び家の中に入る。
俺たちに気づくと、クリントとエレガントモンキーは膝をついて敬意を表す。
「魔王様、本当にありがとうございました!」
「「「ウキィィィ――――!」」」
「気にするな、ちとお前に聞きたいことがある」
「なんでしょうか?」
「ここは無人島のはずだが、なぜ住んでいる?」
「それが……不可解なことがありまして……突然この島にいたのです……」
「いたとはなんだ? 流されてここに来たのではないのか?」
「いえ、違います……。一瞬で移動された気がします……」
一瞬で移動って空間魔法しか考えられないが……それとも違う類の魔法か?
「移動? お前はどこ出身だ?」
「学術都市――ゲルユングです」
名前は聞いたことある、魔大陸で一番学問が盛んな都市だよな。
「島からかなり離れているな……。何者かに移動されたとでも? 詳しく教えてくれ」
「はい、信じてもらえないと思いますが――」
クリントの話によると、夜遅くまで酒場の飲んで帰っている途中で路地裏から黒いフードを被った怪しい男の見て、気になって追いかけた。
その奥には学生がいて、その男に分厚い本を渡し、学生はお金をもらって去っていった。
さすがに怪しいと思って通報しようとこの場を去ろうとするが、男に気づかれて、短剣で襲われたのこと、腕に軽く切りつけられた瞬間に、魔法を発動され――「あなたは知りすぎた」と言われて気づけばここの島にいたとのこと。
ちょっと待て……明らかに空間魔法だよな……。俺たち以外でも使える奴がいるのか……。
『何か引っかかるなあ……。ボクたちが使う空間魔法ではないと思う。魔王、もっと詳しく聞いて』
違うのか? 他に魔法があるのか?
魔王は頷いて――。
「その男は魔法は詠唱したのか? 知っている範囲でいい」
「はい、詠唱はしていましたが、何を言っているかわかりませんでした……。聞いたらときは異常なほど寒気がしました」
「わからない言葉と寒気か……。はぁ……まさか大馬鹿野郎が現れるとはな……」
『また面倒なのが現れたね……』
魔王が大きくため息をつき、エフィナは呆れていた。
2人ともその魔法を知っているみたいだ。
「そんなに危険ですか?」
「危険もなにも禁忌魔法だな、クリントはその禁忌で移動されたな」
『禁忌魔法はその名の通りこの世で使用してはいけない魔法だよ。ボクたち――女神でさえ把握できない予想不可の魔法』
おいおい大事になっていないか……。
そんな奴いたら大問題だろう……。
「禁忌ですか……じゃあ、私は魔法で身体を蝕まれていたのですか……?」
「いや違う、お前はパラライズマンドラゴラの毒を盛られていた。あの大馬鹿野郎の短剣に毒を塗られてやられたに違いない」
魔王言うとおり辻褄が合うな、しかしなんで学生と取り引きしただけで移動させられる?
そんなに重要な本だったのか?
「私は毒にやられたのですか……? じゃあ、なんであの場で殺さなかったんだ……」
まあ、見られた普通はそうなるよな。その禁忌野郎に何かしら理由があったのかもしれない。
「学術都市は厳重だ、不可解な死を起こせば大問題になる。大馬鹿者は移動させ口封じのために毒を盛ったかもしれん。それにお前は年月と言ったな、正確にとは言わんが、どのくらいこの島にいる?」
「5年くらいだと思います」
「そんなにか、運よく少量の毒しか盛られなかったようだな。でないとそんなに長く耐えられないぞ」
じゃあ、もっと盛られたら早く息絶えるってことか。
これは禁忌野郎には大誤算だ。
魔王は腕を組んで考えごとをしている。
「まあ、よい、情報を整理したい、お前は安静してろ」
「ありがとうございます。お礼とは言ってはなんですがご馳走用意しますのでよろしければ食べてください」
「おお、そうか、楽しみにしてるぞ!」
こうして俺たちはクリントの家を出て、誰も聞かれないように密集地から離れて情報の整理をする。
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