340話 別の島へ
――翌日。
途中でアイシスとメアが手伝い、昼にシエル用の防寒服が完成した。
さっそくシエルは白いコートを着て外に出る。
「雪の中でも暖かい……着心地よく助かるのじゃ」
積もっている雪の中を普通に歩いていた。
これならほかの無人島は問題なく行けそうだ。
今、雪が降っているが、荒れた天候ではない。
移動するなら今のうちか。
準備し、みんなシエルの背中に乗り――空高く飛び、次の無人島に行く。
――2時間後。
雪は止み、少しだが寒さが緩和された。
島が見えてきた――さっきの島より緑が多く、人が住める環境となっている。
期待はできそうだ。
シエルは普通に動けるから最初は周りを低空飛行しながら確認をする。
…………人が住めそうな環境だが、その代わりに白い毛をした人と同じ体格をした猿が大量にいる……。
しかも家があり密集して集団で暮らしている。
ここは猿の島か……。
「おいおい、エレガントモンキーがいるのかよ……。絶滅しているかと思ったぞ……」
『えっ? この魔物もそうだったの?』
魔王は言葉を詰まらせながら言う。
「ホワイトムースと同じくらい珍しいのですか?」
「ああ……そんなところだ……。まさか無人島で繫殖していたとはな……」
「この魔物も何かしら理由があって絶滅したと思ったのですか?」
「エレガントモンキーは非常に弱い魔物だ。下手したらゴブリンより弱い。身を守るために集団で行動し、ほかの魔物を避ける知性ある温厚な魔物だ。弱いがために絶滅するのが時間の問題だった。ここなら危険な魔物がいなくエレガントモンキーの楽園と納得がいく」
危険を避けるために島を選んだってことか、なかなか賢い魔物だ。
遠目だが幸せそうな暮らしているな。
「じゃあ、チトセの子どもはいないか……」
「ライカよ、そうでもないぞ。この猿は知性があっても、立派な家が建てられるわけがない。人の介入がなければできないぞ」
「なんと!? じゃあ、十分に可能性はあるのか!?」
ライカは尻尾を振って興奮気味だ。
確かに周りは立派な家と畑があって作物が実っていて、火を起こしたりなど人のような暮らしをしている。
人がいないとできないことをしている。
確定か?
いや、【創種】で創られた作物があれば確定ではない。
捜索するしかないか。
シエルにエレガントモンキーを刺激しないように、いない場所に降りることを指示すると――。
「ウ、ウキィィィ――――!?」
慌てるような叫び声が聞こえた。
バレたのか……?
「おい、あそこを見ろよ!」
フランカが大声で言い、場所を指すと、浜辺には大きなイカ――クラーケンがいた。
近くにいたエレガントモンキーは慌てて逃げている。
そっちか……。
というかクラーケン、陸に上がっても速いな……このままだとエレガントモンキーに追いついてしまう。
そう思っていたら、触手を伸ばして数体捕まった。
「ウキィィ!?」
大きく口を開けて食べようとする。
魔法でも少し距離がある、「ゲート」で間に合うか――。
「タイミングが悪いイカだな――――竜刃!」
魔王は飛び降りて【竜装】で黒い鱗を纏った腕を振り、斬撃で触手を切る。
「ウキィ!?」
切られてもほかの触手を使って再び捕まえようとする。
「趣味が悪いイカですこと――――シャドウチェーン……」
メアは無数の闇の鎖を地面から出してクラーケンの胴体を縛り付ける。魔王のおかげで発動範囲内まで来られた。
「今日はイカ焼きで決まりだな――――フレイムナックル!」
フランカの炎魔法――炎の剛球が直撃し、クラーケンは全身焼かれる。
火が消えると丸焼きになり倒れる。
それを見たエレガントモンキーは、何があったのか、わからないでキョトンとしている。
まあ、そういう反応になるよな……。
「せっかく魔王が直々に助けてやったのだ、感謝するがいい!」
いや魔王……一瞬の出来事を理解してくれるのか……? 胸を張って言えることでは――。
「「「ウキィィィ――!」」」
その発言で手を叩いたり飛び跳ねたりと喜んでいる……あっ、助けてくれたこと理解していますね……。
警戒をしないで俺たちに近づいて囲む。
「ウキィ!?」
ほかのエレガントモンキーが来て、俺たちと丸焼けになったクラーケン見て固まった。
目の当たりしたエレガントモンキーは来た仲間に事情を説明して驚き、俺たちに近づいて大きく手を振って握手をする。
感謝しているみたいだ。
これなら話が進みそうだな。
「急に来てすまぬが、儂らは人を捜している。儂らと同じ人がいるなら案内してほしい」
ライカの発言で急に静まり返り落ち込む。
この様子だと、もういないのか?
「ウキィ、ウキィ」
エレガントモンキーは俺たちを手を引っ張る。
「ついて来い」と言っているようだ。
そうなるといるのか?
もしかしてチトセが亡くなったことで落ち込んでいる可能性はある。
俺たちはエレガントモンキーに案内される。
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