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339話 氷の洞窟


 奥に行くにつれて氷の面積が大きくなり、道幅が狭くなる。

 魔王は邪魔な氷の結晶を拳で砕いて進む。


「久々の洞窟探検は楽しいな、これで魔物が出てくればもっと楽しめるが」


 ここの島には魔物の反応もないし、無理だろうな。

 いたらいたで困るが。

 

 ――十数後。



「行き止まりか、どうやら最終地点らしいな――おい、見てみろ! 珍しいのがあるぞ!」


 魔王は興奮気味で走って行く、珍しい?

 

 魔王が足を止めた先には、数十頭と氷の中に冷凍保存された。全長5mくらいの大きな角の白い鹿――ヘラジカだ。

 プレシアス大陸では見ない魔物だな。


「まさか絶滅したホワイトムースが姿形で残っているのは運がいい。無人島さまさまだな」


『え? 絶滅してたの? 知らなかった』


「いつくらいに絶滅したのですか?」 


「500年前だな。ホワイトムースは毛皮は耐久性に優れて、防具や防寒用のコートに使用できる。角は鉄よりも固く武器にも使える。そして肉は最高美味しいぞ。腐ってもいないし食べられそうだな」


 魔王はよだれを垂らしながら言う。

 500年前か……本当に食べれるのか? 冷凍保存されているが少し不安だ。

 まあ、味は気になるが。


「絶滅するとか。かなり需要があったのですね」


「ああ、魔大陸で飢餓の時期があってな、ホワイトムースの肉は栄養豊富だから積極的に狩っていたのだ。結果、狩りすぎて絶滅してしまったがな」


 そんな過去があったのか。しょうがないと言いようがない。


『ん? 飢餓って言ってもプレシアス大陸で支援とかもらっていたでしょ? ただ魔王が食べたいからって狩っただけでしょ?』


 確かにそうだな、その当時、プレシアス大陸と魔大陸は友好絶頂期と資料に書いてあったな。

 支援されてもおかしくない。

 エフィナの発言で魔王は作り笑いをしている。

 あっ、図星のようだ。


「魔王のせいで絶滅とはかわいそうに……。それでも地上の管理人ですか……?」


「うっさい小娘! と、とにかく、ホワイトムースの肉が食べたい! メイドよ、作ってくれるか?」


「かしこまりました」


「それと貴重な肉だ、誰にも言うなよ。山分けだ。ほかの素材はいらんからかわりにオレの分の肉を無限収納に入れてとっておいてくれ」


ほかも貴重では? いらないのだったらありがたく使わせてもらう、毛皮はシエルの防寒服が作れる。

 氷に埋まっているホワイトムースを取る作業を開始した。

 魔王は拳――俺たちは【武器創造】でハンマーを創り、周りを砕いていく。

 取り出したホワイトムースはフランカが解体をして各素材に分ける。

 肉はかなりの赤身と白身が均一の霜降りだ。ここまできれいに保存されていれば問題なく食べれそうだ。

 相当年月が経っているし、少々不安だったが、しっかり冷凍保存していれば大丈夫そうだ。


 ――数時間後、全てのホワイトムースを取り出して、解体が終わった。肉はアイシスが管理をして、ほかはフランカが管理をすることになった。


 ここには用がないから空間魔法(ゲート)で家に戻った。朝早くから捜索を開始したからまだ昼前だった。

 さっそくフランカはシエル用の防寒服を作りに工房に入る。完成するまでここの無人島にいることとなった。

 

「メイドよ早く作ってくれ! 待ちきれんぞ!」


「少々お待ちください」


 アイシスは魔王の要望で甘口のカレー昼食として作っている。

 そんな急かしてもすぐにはできないのだが……。

 急かされながらもアイシスは自分のペースを乱さないで完成した。


「待ちくたびれぞ! では――――ウォォォォォ!? 天に上るほど味だ! 500年ぶりの肉は別格だ!」


 魔王は涙を流しながら口に運んでいく。

 そんなにか……俺も食べてみると――うん、美味しい。

 短時間しか煮込んでいないのに肉はホロっとほぐれていき、嚙み締めるたびに旨みが出てくる。それに肉の脂がスープに溶け込んで濃くもある。

 食べたなかで上位に入る肉だ。

 冷凍された肉と思えないほど美味しさだ。

 冷凍されていなかったらもっと美味しかったかもしれない。


「ふぅ……満足だ……今日は動きたくないぞ……」


 魔王は5杯もおかわりをして満足げです。俺もあまりの美味しさで3杯おかわりした。

 こんなに美味しいと誰にも渡したくないのはわかる、みんなに食べさせたいが、量が限りあるな。

 申し訳ないが秘密にしておく。


「悔しいですが予想以上に美味しかったです……。もしかしてほかの場所にもいるかもしれませんこと……」


「あり得ないことではないな。まさか小娘、探しに行くのか?」


「時間もあるので、探しに行きます……。魔王は牛になって待機でもしてください……」


 えぇ……探しにいくのか……。

 メアはよほど気に入ったらしいな。


「そうだったらオレもいくぞ! 小娘に独り占めにはさせない」


「山分けしたのに、まだ欲しがると……? 強欲ですこと……」


「多くあって困ることはないからな! 嫌でもいくぞ!」


「はぁ……勝手にしてください……。ただし……ワタクシの邪魔はしないでください……」


「それはこっちのセリフだ! ということだ、夜には帰ってくる」


 2人はホワイトムースを探しに出ていった。

 まあ、今日中に防寒服が完成しないからいいか。

 探しにいってもそんな都合よく見つかるわけではない、たまたま見つかっただけだ。


 さすがに発見できないと思うが。



 ――夕方過ぎになった。



「帰ったぞ! レイよ、見つかったぞ!」


 テンションよく魔王が戻ってきた。マジか……。

 魔王は俺の手を引っ張りながら外に連れ出して、メアの目の前には百は余裕で超えているホワイトムースが積み上げられていた……。

 もしかしてここはホワイトムースの楽園だったのか……? そう考えるしかない……。


 これならみんなにも余裕で食べさせられそうだ。


「夜はたくさん食べるぞ!」


 その夜はステーキにして食べた。

 魔王、ステーキにもツリーシロップを大量にかけるのか……。

次の更新は8日です。

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