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338話 雪の島


 結局夜になっても天候が荒れたままだった。


 今日は諦めて明日捜索することになった。

 吹雪の中、満喫していたアイシスとライカがやっと戻ってきた。


 まさか夜まで外にいるのは予想外でした……。


「よく雪の中、長時間いられるのじゃ……妾は無理……」


 シエルは震えながら言う。

 本当に苦手だな、よくあの吹雪を耐えたものだ。 

 

 夕食は俺とメアがクリームシチューを作り食事をする。

 アイシスは夕食の準備ができなくて謝っていたが、気にしてはない。

 

 最近、アイシスばかり頼ってしまっているから、たまには休ませないとな。


 今日は明日に備えてのんびりくつろいだ。




 ――――◇―◇―◇――――




 ――翌日。




「起きろ! 早く飯食って捜すぞ!」


 いつものように朝早くから魔王が起こしにきて、無理やり肌布団を退かす。

 一緒に寝ていたメアは不満の様子です。 

 

「うるさいですこと……こんな早く起こされても天候は悪いですこと……出直してきなさい……」


「残念だが小娘、吹雪は収まって小雪が散っているだけだぞ」


 窓から外を見ると、魔王の言うとおり少しだけ雪が降っている。

 魔王は自分が勝ったと思い、誇らしげに胸を張った。


 メアは無言のまま肌布団を取り返し、俺と一緒に眠りにつく。


「無視するな! メイドが朝食の準備ができたとさ! 寝ていると日が暮れるぞ!」


「仕方がありませんこと……。アイシスでなければ、ワタクシは主様と永遠の眠りについていましたのに……」


「いいから早く起きろ!」


 渋々俺たちは起き上がった。

 メアさん、永遠の眠りってなんですか……?

 かなり重く感じる言葉ですよ……。


 リビングでは他のみんながイスに座って待っていた。


 テーブルには、煮込みうどんが置いてあり、温かい食事であるのだが、一つだけ違う料理があった……ホイップされた生クリームをこれほどかと、大量に盛っているパンケーキだ……。

 ああ……魔王の分ですな……。

 さすがのアイシスでもここまで盛らないぞ……。


 みんな揃い、食べ始めると、魔王は生クリームを口の周りにつけて喜びながら食べている。


「多く脂肪と糖分を摂らないと身体が持たんからな! 寒いときは生クリームに限る!」


 甘いもので摂らなくても……。

 魔王の常識はズレている……。


「いつも思いますが……毎朝甘味を食べたら虫歯になりますこと……。魔王が虫歯になるところが楽しみです……」


「オレは虫歯になんか一度もなったことはないぞ。幼女神に創られた身体でなるわけがあるか」


『いや、そうとも言い切れないよ。シャーロだって虫歯になるから魔王だってなるよ。まあ、虫歯耐性はあるとは思うけどね』


 女神が虫歯ですか……前にティーナさんに糖尿病になるとか言っていたけど、生活習慣病はなるのか……。 


「はぁ!? 幼女神でも虫歯になるのか!?」


『うん、だからしっかり歯を磨いてね~』


「まあいい、耐性があるなら問題はない。磨かなくても平気だ」


 開き直ってぺろりと平らげた。

 虫歯は自己責任ということで。

 

「フフフ……楽しみですこと……」


 メアさん、また楽しみが増えましたね。

 朝食を終えて、準備をし、寒がりなシエルを家に待機をさせて捜索を始める。



「面倒だな、アタイから少し離れてくれ――――フレイムフィールド!」



 フランカは炎の領域を展開し、周囲の雪を溶かしていく。

 こういうときに炎魔法があると便利だ。先頭はフランカで決まりだな。


「離れていても熱すぎだろう……。火耐性の鎧を創ったがそれでも熱い……」


 魔王は【竜装】で赤い鎧を着て額には汗が出ている。

 それほどフランカの魔法が強いってことか。

 まあ、普通の人なら炭にはなるが。


 フランカの後についていき、辺りを見渡すが何もない。

 この環境からして当然だな。魔物の反応もないし、【創種】で創られた穀物なども見当たらない。

 ここはハズレ確定だ。


「お、ここに洞窟があるぞ。ここを探索して戻るのはどうだ?」


 

 遠くには雪山からできた大きな洞窟だ。

 急ぎではないから俺はいいが――。


「儂は構わんぞ。皆もよいか?」


 ライカの許可をもらって、フランカは炎の領域を解除して、洞窟に入る。

 中は薄暗く、氷の結晶や氷柱など作られていて移動する道が限られる。

 そんな窮屈ではないし、光魔法(ライト)を使って明るくして移動するまではないか。


「オレに任せろ――」


 魔王は赤い鎧を外して、今度は光輝く金の鎧を装備する。

 こういうことにも活用できるのか。


「ちょうどいい暗さを台無しにしてくれるとは……空気を読まないですこと……。それに下品な鎧を着るのではありません……」


 メアさん、余計なことは言わないでください……。

 魔王はご厚意で光らせているのだから……まあ、少し眩しいのはあるが。


「わかっていないな、小娘は、光を身に着けると人気者になるぞ。まあ、陰鬱なお前には光なんて合わないがな」


 人気者になれるというよりは魔王という存在でみんなに好かれているから関係はないぞ……。

 やっぱり魔王ってズレているところがある……。


「そんな下品な鎧を着てまで人気者にはなりませんこと……。面倒にもほどがあります……」


「まあ、よい、あとで後悔しても知らんぞ」


 そう言って魔王が奥へと進む。


「わけのわからない、絶壁ですこと……」


「おい、小娘なんか言ったか?」


 「絶壁」という言葉で反応して戻ってきましたね。

 相変わらず地獄耳です。


「いいえ……何も言ってません……。聞き間違いでは……?」


「そうか、ならいいのだが」


 お互い睨み合って、再び奥に進む。

 なんだかんだ魔王はキリがないときは諦めて大人の対応をしてくれる。

 メアもいつもながらほどほどにしてほしいものだ。

 今日は余計なことは言わないと思うが。


 俺たちは魔王の後を追う――。

次の更新は6日です。

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