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337話 捜索


 チトセの子どもを捜す日となった。


 みんなで俺たちを見送りにするのだが……。


「あ……あああ、ああ……ああああ……」


 干からびているソウタがよろけて来て、訴えています……。

 行きたいのはわかるが、休めよ……体力を温存しろ。


「ソウタちゃん、ごめんなさいね~。もう少し控えめにしてればよかったわ~」


 トリニッチはご満悦な様子で言うが、加減しないと思う……。

 まあ、復活しても行かせないが。

 

「あ……あああ……」


「はいはい……。オネエさん、むっつりなお兄さんは行けないからと積極的に子作りをするとのことです……。朝から大胆な発言を……」


 ちょっとメアさん、何を適当なことを言っているのです……。

 十数日いないからって、からかうのはやめてください。

 ソウタが必死になって言おうとするが――。


「あら~そうなの~! もう、朝から元気なんだから! ライカちゃん、親友の子ども見つかることを祈るわ~! ワタシたちはこれで~」


「あ、ああああああ、ああああ……」 


 トリニッチさんはソウタと肩に持ち上げて、この場を去る。

 遅かった……無事でいることを祈る。


「まったく……朝から熱い奴らだ。さて、オレたちも出発するか」


 俺たちは空間魔法(ゲート)を使い、スタンピードで戦った場所――魔大陸近くの平地に移動した。

 近くといえば、ここくらいしかないからな。


「本当に便利な魔法だな。なんで幼女神はオレにこの魔法を使えるようにしなかった。不公平だ」


『しょうがないよ、シャーロは自分で使えるけど、人に与えるほどの力はないよ』


「そうなのか? じゃあ、仕方ないな」


 女神でも限られているのか。

 もし魔王が使えたなら毎日俺の領地にきそうだが。


 その話はさておき、シエルは【人化】をやめて元の姿になり、みんなを乗せるのだが……魔王も乗るのか……。そこは先導してほしい……。


 上空へ飛び立ち、北側にある無人島に向かう。



 ――3時間後。



 急に天候が変わり、寒気もしてきた。俺たちはまだいいが――。


「さ、寒いのじゃ……」


 寒がりのシエルには少し厳しいようだ。あっ、雪が降ってきた。

 しかも大粒で――地上は雪が積もっていて真っ白だ。

 この世界で初めて見る景色だ。

 カルムでは多少雪が降ることがあったが積もるほどはなかった。

 かなり珍しい。


「まだ着かんのか……? 早く【人化】して服を着たいのじゃ……」


「もう少しだ。言い忘れていたが、この周辺は年中雪が降っている。凍死する可能性はあるから気をつけろよ」


 魔王……早く言ってくれ……。

 俺たちは平気だと言わなかったと思うが、シエルだけは別だぞ……。


 進むごとにシエルの身体は震えている。

 休憩させようとしても、陸から離れて周りは海だ。我慢してほしいとしか言いようがない。

 

「見えたぞ、あそこがそうだ」


 魔王が指を差し、見えてきたのは大きな雪山がある島だ。

 近づくと吹雪になり荒くなる。

 さすがに住める環境ではないな……。ここは期待しないほうがよさそうだ。


 島に上陸し、地面につくと、膝くらいに雪が積もっていた。


「もう限界じゃ……」


 シエルは【人化】になり、アイシスは毛布を出して被せる。

 捜索は無理だな。吹雪が収まるかわからないが、休憩をして様子を見ることにした。


 フランカの家を出して中へ入る。

 こういうときに便利で助かる。フランカを連れてきて正解だ。


 リビングでみんなでホットミルクを飲み、ひと安心する。

 

「生き返るのじゃ……まだまだ冷え切ってダメじゃ……風呂に入ってくる」


 シエルは凍えながら風呂場に向かった。

 今日のところはシエルは家でゆっくりさせる。

 無理に一緒に捜索させるには身体に悪いしな。

 

 というか、この吹雪では捜索は無理だが。


 それにしてもライカは窓際で外を見て尻尾を振っている。

 早く捜したいみたいだ。


「主よ、儂は外に出るぞ」


「気持ちはわかるが、荒れた天候で行動するのは良くないぞ」


「そんなことはせんぞ、家の周りを駆け回りたい。久々の雪で興奮が収まらん」


 そっちですか……性格が犬ということを忘れていました……。


「わかった……思う存分楽しんでこい……」


「言われなくとも!」


 駆け足で外に出ていった。

 窓際で見えたのは4足歩行になって走ったり、寝転んだり、遠吠えしたりしていました……。

 完全に犬ですな……。


「こんな吹雪でよくはしゃいでいるな、守り神だからしっかりした奴と思ったが、子どもみたいな一面があるんだな」


 魔王はシュガーシロップを多めに入れたホットミルクを飲んで言う。

 確かにここまで大はしゃぎしているところは初めて見る。


 小人たちの世話で大変だったから羽目を外すにはいいか。


「あれ? アイシスがいないぞ?」


「アイツも外に出たぜ」


 っとフランカが言う。

 アイシスが何も言わない出ていくなんて珍しい。


 アイシスの魔力は……裏の方だな、何かあるのか?

 

 俺も外に出てアイシスの方に行くと…………大の字のうつ伏せで雪に埋まっていた……。

 

「大丈夫か……?」


「私もライカと同じで雪が大好きです。こうしていると落ち着きます」


 起き上がって、何もなかったのように言う。

 氷の魔剣ってことを忘れていました……。

 よく考えればこの荒れた天候でも余裕ですよね……。


「そうか……気が済むまでやってろよ……」


「はい、ではお言葉に甘えて――」


 再び倒れこんで雪に埋まった。

 アイシスも日頃大変だったからこうやって休ませるにはいいか。

 

 ――2時間後。



 吹雪は収まることなく、天候が悪化する。

 この様子だと今日の捜索は無理そうだな。

 周囲は魔物の反応もないしここに泊まって明日捜索するしかないか。

次の更新は3日です。

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