334話 セイレーンの歌声
――夕食後。
「それじゃあ~またね~」
トリニッチさんはソウタを担いでこの場を去る。
2人で熱い夜を過ごすのはいいが、ベヒジャミを放置しないでください……。
まあ、小人たちがお世話しておとなしくいるからいいけど。
メメット、角のほうを見てよだれを垂らさないでくれ……。
まだ折れたり生え変わったしないから長い目で見ろ……。
「お前たち妙なのを引き連れてきたな、幼女神の件のことを話そうとしたが、今日は無理だ。明日にするぞ」
やっぱりチトセの件もあるか。
魔王も空気を読んでくれて助かる。
ダンジョンに入った小人組は魔石など見せて自慢げに話をしていたら、仕事で参加できなかったミツキさん、ヒナ、ユナが顔を膨らまして拗ねてしまう。
タイミングが悪かったしか言いようがない……。
ライカは「また機会があればな」っと言って頭を撫でて慰めていた。
そのまたは、あるのかわからないが……。
それにしてもオーロラとリヴァは普通に食事していた。
「あたくしとリヴァちゃんは食べれるものならいただくよ」
魚介だけ食べるかと思ったが、雑食のようです。
毎日提供すると思い込んでいたが、みんなと同じものでも大丈夫ならこちらとしては助かる。
そのほかに聞いてみたら――水があればどこでも住めるらしいが、たまに海水が恋しくなるからと月一くらいは浴びせてほしいとのこと。
人魚族とは違い、海水がなくても平気なようだ。
それと、オーロラのほうでお願いがあった――どこか歌える場所がほしいとのこと。
深夜以外とみんなに迷惑にならなければ、好きに歌っていいようにした。
さっそく、オーロラはマナの木の前に座り――歌い始める。
キレイな歌声で次々とみんなが集まってコンサート状態に。
『いや~きれいだね~。音痴なティーナとは大違いだよ~』
エフィナさん、結構ティーナさんをディスっていませんか? 悪気はなく言っているとは思うけど、
しかし、女神が音痴か……ティーナさんならあり得そうだ。
すると、子どもたちが大きなあくびをして眠気を誘い、そのまま寝てしまう子が多数いた。
親はその場を離れて子どもを抱っこして家へ戻って行った。
確か歌声には眠りに誘う効果があったな。加護があっても子どもには効くのか。
危ない場合は子ども前では控えておこう。
歌唱後、本人に聞いてみたが、何も害をするような声は発していないと言う。
ってことは、気持ち良くて眠りについただけなのか?
――――◇―◇―◇――――
――翌日。
朝食の時間に子どもたちは元気いっぱいでテーブルに座る。
親御さんはオーロラに――。
「「「ステキな子守唄をありがとう!」」」
っと、お礼を言う。
興奮して寝付けないときがあるからと、お願いされるようになった。
まさかセイレーンの歌声が子守唄になるとは……役に立って喜んでいるしいいか。
なんだかんだみんなと仲良くできている。
リヴァも怯えることなく、子どもたちと仲良くなり、打ち解けていた。
「リヴァちゃんがこんなにも笑顔で……嬉しい……」
っと、オーロラは夕食前まで泣いていたな。このお二方はここに合っていて、すぐ環境に慣れそうだ。
驚いたのは自由奔放のスライムのマイヤはリヴァの胸に飛びついて懐かれて、昨日から離れていないことだ。
珍しいこともあるな、何かしら懐かれる要素があるみたいだ。
『まさか捕食対象だったりして~』
その冗談はよしてくれ……。突然いなくなってらオーロラは大騒ぎだぞ……。
おとなしいから捕食対象ではないぞ、絶対に……。
捕食といえば――。
「オホホホホ! 皆さんごきげんよ~。 今日も一日頑張りましょうね~!」
肌艶がよく、上機嫌なトリニッチさんと干からびているソウタが朝食を食べにきた。
うん、期待を裏切らないほどの干からび具合だ。
「今度は干し柿ではなく、干しぶどうになったな……」
ライカは味噌汁を吸いながら言う。
さらに干からびたって解釈していいのかな?
このあと、魔王とチトセの子どもの情報を聞く予定だが、ソウタは無理そうだな。
安静して体力を戻してくれ。
朝食を食べ終わり、俺の屋敷の応接間で情報を聞く――。
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