33話 護衛の依頼 当日
ブレンダの護衛の日になった。
まだ日が昇ってない時間に起き、朝食を食べて準備をする。
「ご主人様、夏用の装備を作りました」
『またいいの作ったね!』
アイシスが用意してくれたのは半袖でフード付きのコートであった。
今、真夏真っ最中だから、気を遣って作ってくれたのかな?
今のコートでも全然暑さ感じないけど、長期依頼だからそれも考慮してくれたのかな?
それにフードが付いているからこれは日焼け対策用か。
「これを作っていたのか、じゃあ魔石はこれに?」
「はい、全部使いました」
全部使ったって……じゃあこれも相当な高性能だろうな……。
「ありがとう、じゃあ、早速着てみるよ」
「ありがとうございます。その前に確認をお願いします」
「確認?」
精霊がこっちに来て、フードの中に入っていく……あれ?
精霊の魔力が感じないぞ……。
「フードの中ってまさか……」
「はい、魔力を遮断する仕組みになっております。これなら精霊が見える人でもフードに入っていればわかりません」
またとんでもない物を作ってしまいましたね……。
フードを付けたのは精霊を隠すために作ったのか。
精霊はギルドに預けようと思ったが、これなら何処に行っても精霊はバレないから連れて行っても大丈夫か。
精霊はフードの中を出て、目をウルウルしながら俺の顔を伺っている……まあ、今回は問題はないか。
「わかった、今回は精霊も一緒に来てもいいよ」
『良かったね!』
精霊は喜んで俺の周りを飛び回った。護衛の依頼ならまだいいか……それに魔物が現れたらブレンダを守ってくれるから今回は良しとする。
コートを着ると前とあまり変わらず良い感じだ。
「そういえばアイシスは夏なのに服は変えないのか?」
成人の日のときに夏用に作った服は俺を誘っていたみたいだし本当はどうだろうか?
「私は暑さに耐性があるので大丈夫です」
氷の魔剣だから暑さに弱いと思っていたがそこは違うのか。意外な発見だ。
準備が整い、屋敷を出てミランドさんの屋敷に行く――。
ミランドさんの屋敷に着くと、全員外に出ていた。
「「「「――――おかえりなさいませ! ぼっちゃま、お姉様――――!」」」
朝早くから元気ですね……。みんなに挨拶をしてブレンダが驚いていた。
「お兄ちゃん! わたしを見送りに来たの?」
ミランドさんは俺たちが護衛につくことはサプライズで言っていないみたいだ。
「違うよ、これから俺達はブレンダと一緒に王都まで行くのだよ。つまり、ブレンダの護衛ってことだからよろしくね」
「えっ!? じゃあ、お兄ちゃんと一緒に旅ができるの!?」
「そうだよ」
ブレンダは大はしゃぎで抱きついてくる……相変わらず力が強い。
「お兄ちゃん、ありがとう! よろしくね!」
「ああ、よろしく」
「レイ、アイシス君、ブレンダをよろしく頼むよ」
「はい」
「お任せください」
「それと嬉しい報告がある」
ミランドさんとエレセさんがニコニコと笑っている。それに……カミラさんがモジモジしている。
珍しく鎧姿ではなくブラウスとロングスカートを着ていて、髪も少し伸びていた。
「これよりみんなに報告がある! 私とカミラの間に子が身ごもった!」
…………えっ!?
ってことはカミラさんはミランドさん第2妻になるってことか! いや、この場合は側室ってことになるか……。
まあ、あり得なくはない話だが、まさか関係を持っていたとは……。
「「「――――おめでとうございます! 旦那様、カミラ様――――!」」」
「「おめでとうございます」」
「ありがとう、みんな! これから忙しくなるけど私について来てくれるか?」
「「「――――もちろんでございます――――!」」」
このタイミングで報告するとは……それにブレンダはキョトンとしている。
「どういうこと?」
そうなるよな……。
「カミラさんのお腹の中にミランドさんの赤ちゃんができたんだよ。ブレンダはお姉ちゃんになるのだよ」
それ言うとブレンダはミランドさんの方を振り向き笑顔で――。
「おめでとう! お父さん、カミラ! それでいつ生まれて来るの? 男の子? 女の子? それから――」
嬉しすぎて質問攻めだな。初めて姉になるのだからそうなるか。
「嬉しいのはいいが、まだ先のことだから待っていなさい」
「わかった! カミラ頑張ってね!」
「もちろんでございます! 旦那様の赤ちゃんは命に変えても絶対に生みます!」
いや、そこは騎士道精神はいらないから!?
俺も言葉をかけた方がいいのかな?
「カミラさん、くれぐれもご自愛ください」
多分これでいいはずだが……えっ……泣いてる!? 余計なことを言ってしまったか……。
「ぼっちゃま……慈愛の溢れた言葉ありがとうございます………まるで女神様のようです……」
それは大袈裟すぎだ!? だから泣かないでください……。
『レイ、君はいつから神様になったの? まあ、ティーナの加護があれば泣かれるのも当然か』
『何その効果!?』
『あとね、このカミラって子はレイが近くにいたことで安産は間違いないね!』
ティーナさんの加護ってそこまで影響するのか!?
まあ、安産になるのなら安心だ……恐るべしティーナさんの加護……。
ってことは、ミランドさんの用事ってカミラさんの両親に挨拶しに行くってことか……。
そして、長期用の荷物とブレンダの荷物を無限収納に入れて、馬車に乗り――。
「いってきます!」
「「「――――いってらっしゃいませ! お嬢様、ぼっちゃま、お姉様――――!」」」
ミランドさんたちに見送られ王都に向かう――。
ブレンダと俺たちの他に行くことになったのは、馬車を動かしてくれる執事長のセバスチャン、発育がそこそこよろしい金髪メイドのニーナ。
ブレンダを寮で世話する少し無口の黒長髪執事の獣人ジョナサン、小柄で茶髪メイドのルミンだ。
しかし……この組み合わせは……2組とも恋人同士の組み合わせみたいだ……。
屋敷の社内恋愛は充実してますね……これも職場が安定している証拠かな?




