331話 こんなことあるのか……
セイクリッドの説教は十数分と続く、セイレーンと海竜は涙目になりながら頷いている。
いや、お前みたいに戦闘狂ではないから説教しても無駄だが……。
小人たちは何もやることがなく、セイクリッドの説教を隣で座って聞いたり、ボス部屋を探索している。
もうすぐ夕食の時間になる、言い足りないと思うが、切り上げるように――。
「「「わ~い、キレイな石発見!」」」
探索していた小人たちが喜んで持ってきたのはダンジョンコアだ。
ああ、奥のほうまで行っていたか……。
セイレーンは大事なコアが取られて青ざめています。
「そ、それは命より大切なもの!? 返して!」
「「「わかった、返す!」」」
セイレーンはコアを返してもらい、ホッとしている。
危なかったですな、ここは滑りやすい床で転びやすい、壊れたら大変なことになった。
まあ、転んで壊れるほど脆くはないと思うが。
「まだ話は終わってないぞ、指定の場所に置け」
「わ、わかりました……」
やっぱり話が長くなるな、切りもいいし帰ろ――。
「きゃ!?」
その瞬間、セイレーンは足を滑らせ豪快に転んでしまい、コアを勢いよく手放して――あっ、間に合わない……。
床に落ちて、粉々に砕け散った。
えぇ……噓だろう……。コア脆すぎ……。
「あ、ああああああああ、あたくしのダンジョンコアがぁ――――!」
そのまま泣き崩れてしまった。こんなことあるのか……。
セイクリッド曰く、コアを破壊すればダンジョンは数日で崩壊して土に還るという。もう一緒に外に出ないといけない。
海竜も大号泣し、お二方は情緒不安定になる。
せっかく築き上げた安住の地がなくなるは考えたくないだろう。
「なんか……すまんな……うちの子が持っていかなければ、こんなことに……」
「「「ごめんなさい……」」」
ライカと探していた小人たちが頭を下げても無視をする。
無理もない……。
メアさん、クスクス笑いながらこの状況を楽しみのではありません……。
しょうがない、俺が責任を取るか……。
「なあ、詫びとしてなんだが、俺の領地に来ないか? 魔物もいないし安全だ。お二方も怯えることなく暮らせると思う」
俺の発言にセイレーンは顔を上げる。
安全という言葉に反応したか。
「本当に……? リヴァちゃんと幸せにくらせるの……?」
「保証はする。大勢いるが、それが嫌でなければの話だが」
「いくわ! あなたの領地に住ませて! リヴァちゃんと幸せになるならどこにでもいく!」
即答だな、まあ、少なくともダンジョンでの暮らしよりはいい気がする。
「わかった、良待遇はする。何か困ったときは言ってくれ」
「ありがとう。リヴァちゃん、暗いひきこもり生活は終わりよ! これからはみんな仲良く暮らして幸せになるわよ!」
「はい、主!」
ダンジョンを暗いひきこもり生活と言っていいのか……?
安住の地とはいったい……。
「ところで名前はあるのか?」
「ないよ、人とは違って名を持つことはないよ」
「じゃあ、海竜にリヴァちゃんって言っているのは?」
「リヴァイアサンだからリヴァちゃんよ」
ですよね……。聞かなくてもわかっていた……。
「不便だったら名を付けていいよ」
俺が付けるのか……。
不便なのは確かだ、セイレーンだからセイレでもいいが――ん? 耳ヒレがキレイに緑と青に発光しているな。
まるで極光のように――。
「オーロラでいいか?」
「いい響きね。これからあたくしはオーロラと名乗るわ。あなたはなんて言うの?」
「レイだ。よろしくな」
「お世話になるわ。よろしくレイちゃん」
ちゃん付けか……。まあ、気にしてないが。
ん? 海竜がソワソワしているがどうした?
「レイちゃん、僕にも名前がほしい……」
お前もか……。
「いや、リヴァちゃんという。オーロラ言っているからリヴァちゃんでいいだろう?」
「今までのは名前だったのか……ごめんなさい。主、全然知らなくて……」
「いいよ、リヴァちゃん。嫌なら違う名をもらっていいよ」
「僕はリヴァちゃんは気に入っているからこのままでいい」
「ありがとね……リヴァちゃん……」
オーロラはリヴァを泣きながら強く抱きしめた。
『いい話だね~。母性とはまた違うけど、これはこれでいいね~』
いや、これを母性というのでは……?
いつもながらもういいです……。
「セイクリッド、オーロラはダンジョンマスターでなくなったから説教はやめろよ」
「しょうがない、では帰ったらダンジョンの反省点について話をしようではないか」
いや、勘弁させてくれ……。
オーロラはそこまでダンジョンに情熱はないぞ。
「すまんな、主よ……責任を取らせてもらって……」
「いいって、じゃあ、オーロラとリヴァと仲良くするように言ってくれよ」
「わかった、恩に着る」
まあ、お二方が来ても何も変わらないと思うが、問題なのはベヒーモスだ。
飼うにしても前例がない。トリニッチさんが面倒を見るとは言っても、いろいろと相談しないとダメだ。
これはまた忙しくなるな……。
今日はいろいろあったから明日にしよう。
空間魔法を使い、領地に帰宅する――。
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