328話 それぞれの道⑥
レイ視点に戻ります。
みんなと分かれて、一本道を進むが、急に湿っぽく、潮の香りがしてきた。
また海系の魔物か。まあ、どんな相手でも倒すのには変わりないが。
「ハハハハハ! 我の期待をさせてくれよな! 早く切りたくてしょうがない!」
セイクリッドはまだ敵の反応がないのに魔力を出して、やる気満々です……。
戦闘狂の血が騒いでいますね……。
もうセイクリッドに全部任せて、俺は見学でもいいような気がしてきた。
数分後、大きな水色の扉が見えてきた。
まさか、ここにダンジョンマスターがいるのか?
「ハハハ! では試してもらうぞ――――覇王斬!」
再び扉を一振りして破壊した。
「フン、また軟弱か、ここにはダンジョンマスターはいないな」
だからその基準はおかしいぞ……。
なぜそこまでして扉の硬さにこだわる……。
扉の向こうには、通りが一本道と両脇には深い水――海水が張っていて、奥には出入口用の扉があった。
明らかに深水の中に大型の魔物がいますよって感じだ。
しかも親切に一本道を作ってくれるのは罠なのか?
下の底から反応があったが、魔物とは少し違う。シエルと同じ反応だ。
ってことは知性がある魔物でダンジョンマスターという可能性はあるよな。
だが、肝心な核が見つからない。やっぱりここは中ボスくらいなのかな?
知性があるのなら無益な戦いはやめて説得して通してほしい。
まあ、そんな通じる相手ではなかったら戦うが。
戦うにしても俺たちは不利な場所だ。
「セイクリッド、戦うのはあとにしてくれないか? まずはみんなを奥の扉に移動させてからだ」
「フム、我も主殿と同じ考えをしていた。皆よ、急いで扉に移動してくれ、我が魔物が襲ってきたら盾となろう」
「「「は~い!」」」
セイクリッドが先頭に、俺は後ろで警戒をして小人たちと一本道を通る。
今のところ姿を会わせることなく水中にいる。
出てくる気配もないからこのまま通らせて――。
『レイ、上を見て!』
エフィナが慌てて言う、上から大きな網――魚網のようなものが振ってきて――。
「「「わあっ!?」」」
小人たちがピンポイントに捕まり、そのまま引き上げてられた……。
しまった……地魔法で確認してから移動すればよかった……。
油断してしまった。
「「「わ~い! おもしろい~」」」
いや、喜んでいる場合ではないのだが……。
『ふふふふふ……吞気に捕まりよって……愚か者どもが……』
その声で水上からゆっくり姿を現したのは――黒蒼い長い胴体には鱗があり、竜のような顔つきでヒレがついている。
もしかして――。
『海竜――リヴァイアサンだね。それにまだ小さいから子どもだね』
やっぱり、SSランクの魔物か。確かに海竜という割にはキングシースネークより一回りくらい小さい、子どもなのにしゃべれるのか……。
さて、コイツに話が通ればいいのだが。
「俺たちはただ道を通りたいだけだ。危害は加えない、見逃してくれないか?」
『やはりな……ここは通さんぞ! 我は主の命のより、ここを守られた門番だ!』
主? ああ、ダンジョンマスターってことか。よくSSランクの知性の魔物を使役しているな。
それほど強いってことか。じゃあ、セイクリッドくらいの強さは覚悟しないといけないな。
「そうか、お前を倒して進む」
海竜は沈黙し、間をおいて急に高笑いをする。
『ふふふふふふ……はははははは! この私を倒すだと? 愚か者よ、私を倒す前に仲間のことを心配したほうがいいぞ』
海竜は小人たち捕まえた魚網を自分のほうに移動させる。
おいおい……動かせるのかよ……。
『動くな! もし動いたとしたならこの弱き者を嚙みちぎってやる。どうだ? 参ったか?』
不利な状況だな……。だけど、奴には隙がある。
セイクリッドを警戒していない。
『ああ~、セイクリッドには無警戒だね~。やっぱり子どもだね~。セイクリッドはボクの合図で小人を助けてね~』
セイクリッドがゆっくりと頷く。
こっちには念話を送れるエフィナがいる。
それに無魔法の身体を守る防御壁が使えて平気だ。
『仲間を助けられなくて、言葉がでないか――』
コイツ、よくしゃべるな……だけど、セイクリッドはゆっくりと気づかれないように歩き、海竜から視界が見えなくなった。
剣を構えて準備はできている。
『――ここから立ち去るのであれば、命だけは――』
『いまだ!』
セイクリッドは高く飛び、魚網を切り刻み、小人たちは水に落ちる。
『何!? いつの間に!?』
「「「楽しい~!」」」
危機感があまりないことで……。
さてと、おしゃべりはそこまでにして、お別れの時間だ。
最後のほう何か言っていたが、もう遅い、子どもといえど、容赦はしない。
俺は右手に雷の魔剣を出して雷を纏い、近づく。
一瞬で終わらせるから魔剣を使うことにした。
「――――雷迅――」
『いやだ! 死にたくない! 許してください! ごめんなさい!』
…………はい?
海竜は涙目になって訴えています。
『レイ、ちょっとスト~ップ!』
エフィナさん無茶を言わないでください――。
俺は体制を変えて海竜を避ける。ここまではいいのだが、水に落ちて――。
『アババババババ――――!?』
海竜は感電をし、倒れた……。
急いで魔剣を解除し、容体を確認する。
『いたい……いたいよ……。助けて……』
泣いていて致命傷は免れたようだ。
【手加減】が発動したから問題ないか。
『やっぱり無理か~。でも生きているならよしとしよう』
軽いな……それと――。
「みんな、大丈夫か?」
「「「ん?」」」
小人は首を傾げた……ですよね……。
さすが、守り神の加護、雷耐性はばっちりです。
さてコイツは……回復魔法で治すか……。
いろいろと聞きたいことがあるしな。
次の更新は16日です。




